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第一章冒険者偏

家族会議

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「ジョージ先生から話は聞いた。
 俺に甲斐性がないせいだから仕方がないが、腹が立つ。
 娘ひとり嫁がせることができない自分自身に腹が立ち、忸怩たる思いがある」

 ヴィクトル義父上が、哀しそうな腹立たしそうな、何ともいえない表情をされていますが、これは仕方がない事です。
 義父上が悪いのではなく、時代が悪いとしか言いようがありません。

「これは義父上の問題ではありません。
 厄竜のせいです。
 厄竜が現れなければ、このような事にはなっていません。
 私たちはそれに合わせて生きていくしかありません」

「旦那様。
 ラナの言う通りです。
 私たちは今にあわせて生きていくしかありません。
 ラナの決断を認めてあげてください」

 母上が義父上を説得してくれています。
 マリア、ニコル、ダリアの三人の妹も、義弟のクリスティアンも、不安そうに私たちを見ています。
 下の子たちに心配させたいわけではありませんが、家族会議ですから、全員で話しあわないといけません。

「……もう婚約解消の話をしてしまった後だし。
 ラナの腕も冒険者には十分だ。
 信用信頼できるクランにあてがないというのならともかく、ゲイツクランからの入団許可まで取り付けている。
 しかもラナに相応しいパーティーまで紹介してくれるという。
 ふう。
 ビクトリアまで賛成だというのなら、これ以上反対もできんな」

「ありがとうございます、義父上」

「礼には及ばん。
 むしろ詫びねばならんのはこちらだ。
 親らしい事を何一つしてやれん。
 申し訳ない」

「ラナ姉上。
 本当にここを出て行ってしまわれるのですか?」

「ええ、私ももう十六歳です。
 一人前の大人として働かなければいけません。
 長女としての責任があるのですよ」

 妹も義弟も反対したいようですが、私の決意と、義父上と母上が賛成したことで、直接反対できなくなったようです。

「ラナ姉上。
 私、もっと内職を頑張ります。
 だから、だから姉上……」

「マリア。
 もう十分内職を頑張ってくれていますよ。
 ですがマリアもレイ徒士家の娘です。
 もう少し武芸の稽古も頑張ってください。
 いつまた厄竜が現れるか分かりません。
 その時には義父上は最前線で戦われるのです。
 クリスティアンはまだ幼いのです。
 マリアが家族を護らなければいけないのですよ」

「はい、ラナ姉上。
 明日から私も道場に通います」
「私も道場に通います」
「私もです」
「私ももっと鍛錬に励みます」

 マリアだけでなく、ニコルもダリアもクリスティアン真剣な顔をしています。
 ヴィクトル父上も、クリスティアンの実母であるルシヤさんも、厄竜が放つ病でしんでしまいました。
 父たちが冒険者時代に蓄えていた魔法薬もお金も、他の家族の治療で使い切ってしまっていました。
 厄竜が二度も現れなければ、全然違う世の中だったでしょうに。
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