持参金が用意できない貧乏士族令嬢は、幼馴染に婚約解消を申し込み、家族のために冒険者になる。

克全

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第一章冒険者偏

実力差

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「次を狙うよ。
 大丈夫だ。
 まだ体力も精神力も十分だ。
 危険を感じたら直ぐに撤退を命じるから、それまでは自分の状態を確認さながら、鉤竜の釣りだしと周囲の状況確認に専念しな」

「「「はい!」」」

「次はイヴァンとラナが釣りだしてきな」

「「はい!」」

 正直あっけない結果でした。
 私達前衛三人とエマとニカでは実力が違い過ぎています。
 あの強固な鱗で護られた鉤竜を、口から狙って脳を破壊して一撃で斃したのです。
 とても効率的な狩り方です。
 素材として高値で取引される鱗と皮を一切傷つけていません。
 私達がやったのは、鉤竜を釣りだすためも囮役だけです。

「今日はよくやってくれた。
 今の体力と精神状態を覚えておくんだ。
 それが緊張を持続できる限界だ。
 この状態を超えて狩りを続けるのは馬鹿のやることだ。
 一時の成果に溺れることなく、引き時を誤まるんじゃないよ。
 大事な弟子を無駄死にさせたくはないからね」

 私達は都合七頭の鉤竜を狩ることができました。
 エマとニカに補助魔法をかけてもらったうえですが、鉤竜から逃げきれるだけの速さと体力をを使って、それでも精神を擦り減らすように釣りだしました。
 
 厳しい実戦訓練でしたが、得たモノはとても大きかったです。
「破竜隊」というパーティー名が嘘偽りのないモノとなりました。
 まあ、本当のドラゴンスレイヤーであるドウラさんが長なので、嘘偽りなど最初からないのですが、ドウラさん以外の五人は竜種を狩ったことがないので、私にはパーティー名が少々重かったのは確かです。

 冒険者として一番大切な収入は、久しぶりに狩られたほとんど傷のない鉤竜なので、標準価格の五割増しで入札されました。
 成体の鉤竜は、一頭二十万小銅貨前後が標準価格ですが、今回は三十万小銅貨前後となりました。
 それが七頭ですから、二百十万銅貨です。
 いつも通り長のドウラさんが半分の百五万小銅貨を取り、残りの百五万小銅貨を五人で分けますから、私の取り分は二十一万小銅貨です。

 金額だけなら、もっと効率のよい魔獣がいます。
 ですが今の私達にはお金はそれほど重要ではないのです。
 名声こそが必要になっています。
 ドラゴンスレイヤーという名声に勝るモノはないのです。
 王都にいた頃の、借金に押し潰されそうだった生活が嘘のようです。

 ですが、完全に心が軽くなっているわけではありません。
 どうしても晴らす事のできない重く黒い雲が心の中にあります。
 実際に鉤竜を狩ったのはエマとニカはなのです。
 私達前衛三人は、囮役でしかないのです。
 それが心に刺さった棘のように、私を苦しめます。
 でもその心に刺さった棘を、ドウラさんが抜いてくださり、また私を苦しみから解放してくださいました。
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