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イスパニア本格開戦

初陣

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1575年10月:ゴア要塞都市中城・武田信廉と嫡男:第三者視点

「父上。行って参ります」
「絶対に城門の中に攻め込んではいかん。それは匹夫の勇と言うモノで、大将が行う事ではない」
「分かっております。父上。私のするべき事は、城門を打ち破る事でございます」
「分かっているのならよいが、戦場では勢いというモノがある。我を忘れて、攻め込んでしまう事もあるのだ」
「大丈夫でございます。太宰師家の跡取りとして、恥ずかしくない指揮を執って御覧に入れます」
「うむ。太郎兵衛、頼んだぞ」
「御任せ下さい」
 嫡男と傅役に愛情のこもった指示を出した武田信廉は、二万の軍勢を一万五千にまで減らしていたが、援軍の四万が到着して、その数を五万五千にまで増やしていた。
 だが信廉から見れば、本当に信頼出来るのは直属の一万三千兵だけで、残りの四万二千兵は何時裏切るか分からなかった。
 内城に籠城するポルトガル軍と手を組みたかったが、それをすれば、直属軍の中からも寝返りが出てしまうかもしれなかった。
 天竺で自立して王国を打ち立てると言う事なら、直属軍も付いていてくれるだろうが、異国と手を結ぶとなれば、武田本家に寝返りを願い出る家臣が現れるかもしれなかった。
 頻繁に監軍と連絡を取る事で、自分達が疑われ、裏切っても討伐が可能な兵力を配置していることが分かっていた。
 だが驚きも失望もなかった。
 何時もの事だった。
 義信が自分の事を信じていないのは、長年の経験で分かっていた。
 だから事あるごとに、兵糧と武器弾薬の補給を願い出ていた。
 使用数を誤魔化して、出来るだけ多くの兵糧と武器弾薬を備蓄するようにしていた。
 信廉の決意は固かった。
 直属軍を温存してゴア要塞都市を落とす。
 ゴア要塞都市を手に入れたら、そこに籠って籠城する。
 その為に、城攻めの時に破壊した場所は直ぐに修復してあった。
 武田本家が攻撃してきてから、捕虜にしたポルトガル貴族を使って、ポルトガル軍を同盟を結ぶ。
 バサイム要塞都市のポルトガル軍と連携出来れば、本国から遠く離れた本家と互角に戦える可能性があると考えていた。
 問題は与力衆だが、各家の子息の初陣を理由に、兵力を損耗させるようにしていた。
 大切な子息の初陣は、絶対に勝たなければならない。
 内城の城門破りを初陣に指定すれば、無理をしてでも城門を討ち破らなければならなくなる。
 その方法で内城の城門を確保し、与力衆の戦力をすり減らす。
 それぞれが天竺で建国すると言う条件で、同盟出来ればそれもよし。
 出来なければ、敵として排除する。
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