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第1章
第3話:魔術
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ガニラス王国歴二七三年五月五日
ルイジャイアン・パッタージ騎士領
田中実視点
俺は女騎士ヴィオレッタについて西門に向かった。
砦の中は密集した状態で家が建てられているので、防壁内はそれほど広くない。
東門から礼拝堂に案内されたが、それと同じくらいの距離に西門がある。
外から見ただけでは分からなかったが、木製の防壁は家でもあった。
日本の長屋門と一緒で、防壁や城壁が家の壁を兼ねている。
側面も隣家の丸太壁だから、出入り口や窓は防壁の反対側にしかない。
しかも屋根の傾斜がほとんどなく、登って上から防壁外の敵を叩ける。
文字通り、防壁を登って越えようとする敵を槍や剣で叩き落とせる。
まだ遠くにいるうちに矢を放って斃せればもっと良い。
俺は女騎士ヴィオレッタに続いて長屋門の屋根に上って外を見た。
いや、長屋門では間違った姿形を思い浮かべてしまう。
防壁長屋と呼んだ方が良いだろう。
防壁長屋は防壁に沿って続いているから、兵士の家になっているのかな?
専業の兵士はいなくても、自警団はあるだろうし、兵役があるかもしれない。
そんな者達が優先的に防壁長屋に住んでいるのだろう、多くの者が上がっている。
屋根は瓦や石ではなく、板葺きになっているから、雨漏りが心配だ。
村の周囲が深い森だから、短い間隔で葺き直しているのかもしれない。
「早く近寄って来い、矢で支援する!」
先に登った女騎士ヴィオレッタが防壁の外に向かって叫んでいる。
後に続いた俺も防壁の外を見たが、想像通りの光景だった。
五十頭近い狼の群れに襲われる馬車と護衛が見えた。
馬車は西部劇で観た幌付きの大型ではなく、ファンタジーアニメで貴族が乗る箱馬車でもなく、時代劇で観る二輪の大八車を二頭の牛が引いているような馬車だ。
大きな角を頭の左右に持っているから、馬ではなく牛だよな?
馬車ではなく牛車と言った方が良いのだろうか?
だが、とても牛車には見えないから、牛馬車と呼んだ方が良いのか?
三台の牛馬車に輓牛が6頭、御者が三人に護衛が十六人もいる。
村と村を行き来するのがとても危険なのが、その物々しさで分かる。
狼達が執拗に牛と人を襲っている。
だが、激しく咬みついているが、あまり効果がないように見える。
首に下げていた小型の二十倍双眼鏡で見ると、皮鎧がとても丈夫なようだ。
喉や腹のような急所だけでなく、狼に咬まれやすい手足も皮鎧で守っている。
人間だけでなく、輓牛の腹と首と脚にも厚い皮鎧を着せている。
これくらいしないと、この世界では移動できないのだ。
時間はかかっているが、護衛が確実に狼を仕留めている。
牛馬車も門に近づいて来ている。
これなら問題なく村にたどり着けると思ったのだが……
ウォオオオオン!
牛馬車から見て右側、俺の左手側から新たな狼が襲って来た。
これまで襲っていた狼よりもはるかに大きい!
そいつらが護衛の脚に体当たりして転倒させた!
「攻撃魔術、用意!」
女騎士ヴィオレッタが大きな声で命じた。
この世界の魔術はどういう仕組み、理論で成り立っているのだろう?
「風の神達の主アネモイよ、どうか私の願いを御聞き入れ下さい。
御身を慕う民を御救い下さい。
御身を慕う民を殺そうとするウルフたちの目と鼻を潰してください。
御身を敬い信じる者の願いを御聞き届けください、ウィンド・カッター」
ギャヒィン!
女騎士ヴィオレッタの呪文と同時に遠くにいる狼が十数頭がのたうち回る。
あんな遠くにまで範囲魔術が放てるとは!
狼たちに脚を咬まれて引きずり回されていた護衛が九死に一生を得たか?
全く動かないので、本当に助かったのか分からない。
「風の神カイキアスよ、どうか私の願いを御聞き入れ下さい。
御身を慕う民を御救い下さい。
御身を慕う民を殺そうとするウルフたちの目と鼻を潰してください。
御身を敬い信じる者の願いを御聞き届けください、ウィンド・カッター」
ギャヒィン!
防壁の上にいた男が女騎士ヴィオレッタに続いて魔術を放った。
唱えた呪文はほとんど同じなのに、威力が全く違う。
ヴィオレッタのは十数頭に効果があったのに、男の魔術は一頭だけだ。
願った神の名前が違ったから、上位神と下位神とで威力が違うのか?
それとも、呪文を唱える者の才能やレベルで違ってくるのか?
何より気になるのは、俺に魔術が使えるかどうかだ!
「風の神達の主アネモイよ、どうか私の願いを御聞き入れ下さい。
御身を慕う民を御救い下さい。
御身を慕う民を殺そうとするウルフたちの目と鼻を潰してください。
御身を敬い信じる者の願いを御聞き届けください、ウィンド・カッター」
全く何も起こらない。
「風の神カイキアスよ、どうか私の願いを御聞き入れ下さい。
御身を慕う民を御救い下さい。
御身を慕う民を殺そうとするウルフたちの目と鼻を潰してください。
御身を敬い信じる者の願いを御聞き届けください、ウィンド・カッター」
これも全く駄目だ、何も起こらない。
俺がこの世界の人間ではなく、日本人だからだろうか?
この世界の神など全く信じていないからだろうか?
日本の神に願ったら、この世界で魔術が使えるのだろうか?
異世界の神に対して、自分なりに呪文を変えて願ったら魔術が使えるだろうか?
目の間で魔術がある事を証明されたのだ、異世界に行って人生やり直すと決めてきたのだ、死ぬほど努力してでも魔術が使えるようになる!
「遠く大八島国にて風を司る志那都比古神よ
御身を慕う民を御救い下さい。
御身を慕う民を殺そうとする狼たちの首を刎ねてください。
御身を敬い信じる者の願いを御聞き届けください、風斬」
ルイジャイアン・パッタージ騎士領
田中実視点
俺は女騎士ヴィオレッタについて西門に向かった。
砦の中は密集した状態で家が建てられているので、防壁内はそれほど広くない。
東門から礼拝堂に案内されたが、それと同じくらいの距離に西門がある。
外から見ただけでは分からなかったが、木製の防壁は家でもあった。
日本の長屋門と一緒で、防壁や城壁が家の壁を兼ねている。
側面も隣家の丸太壁だから、出入り口や窓は防壁の反対側にしかない。
しかも屋根の傾斜がほとんどなく、登って上から防壁外の敵を叩ける。
文字通り、防壁を登って越えようとする敵を槍や剣で叩き落とせる。
まだ遠くにいるうちに矢を放って斃せればもっと良い。
俺は女騎士ヴィオレッタに続いて長屋門の屋根に上って外を見た。
いや、長屋門では間違った姿形を思い浮かべてしまう。
防壁長屋と呼んだ方が良いだろう。
防壁長屋は防壁に沿って続いているから、兵士の家になっているのかな?
専業の兵士はいなくても、自警団はあるだろうし、兵役があるかもしれない。
そんな者達が優先的に防壁長屋に住んでいるのだろう、多くの者が上がっている。
屋根は瓦や石ではなく、板葺きになっているから、雨漏りが心配だ。
村の周囲が深い森だから、短い間隔で葺き直しているのかもしれない。
「早く近寄って来い、矢で支援する!」
先に登った女騎士ヴィオレッタが防壁の外に向かって叫んでいる。
後に続いた俺も防壁の外を見たが、想像通りの光景だった。
五十頭近い狼の群れに襲われる馬車と護衛が見えた。
馬車は西部劇で観た幌付きの大型ではなく、ファンタジーアニメで貴族が乗る箱馬車でもなく、時代劇で観る二輪の大八車を二頭の牛が引いているような馬車だ。
大きな角を頭の左右に持っているから、馬ではなく牛だよな?
馬車ではなく牛車と言った方が良いのだろうか?
だが、とても牛車には見えないから、牛馬車と呼んだ方が良いのか?
三台の牛馬車に輓牛が6頭、御者が三人に護衛が十六人もいる。
村と村を行き来するのがとても危険なのが、その物々しさで分かる。
狼達が執拗に牛と人を襲っている。
だが、激しく咬みついているが、あまり効果がないように見える。
首に下げていた小型の二十倍双眼鏡で見ると、皮鎧がとても丈夫なようだ。
喉や腹のような急所だけでなく、狼に咬まれやすい手足も皮鎧で守っている。
人間だけでなく、輓牛の腹と首と脚にも厚い皮鎧を着せている。
これくらいしないと、この世界では移動できないのだ。
時間はかかっているが、護衛が確実に狼を仕留めている。
牛馬車も門に近づいて来ている。
これなら問題なく村にたどり着けると思ったのだが……
ウォオオオオン!
牛馬車から見て右側、俺の左手側から新たな狼が襲って来た。
これまで襲っていた狼よりもはるかに大きい!
そいつらが護衛の脚に体当たりして転倒させた!
「攻撃魔術、用意!」
女騎士ヴィオレッタが大きな声で命じた。
この世界の魔術はどういう仕組み、理論で成り立っているのだろう?
「風の神達の主アネモイよ、どうか私の願いを御聞き入れ下さい。
御身を慕う民を御救い下さい。
御身を慕う民を殺そうとするウルフたちの目と鼻を潰してください。
御身を敬い信じる者の願いを御聞き届けください、ウィンド・カッター」
ギャヒィン!
女騎士ヴィオレッタの呪文と同時に遠くにいる狼が十数頭がのたうち回る。
あんな遠くにまで範囲魔術が放てるとは!
狼たちに脚を咬まれて引きずり回されていた護衛が九死に一生を得たか?
全く動かないので、本当に助かったのか分からない。
「風の神カイキアスよ、どうか私の願いを御聞き入れ下さい。
御身を慕う民を御救い下さい。
御身を慕う民を殺そうとするウルフたちの目と鼻を潰してください。
御身を敬い信じる者の願いを御聞き届けください、ウィンド・カッター」
ギャヒィン!
防壁の上にいた男が女騎士ヴィオレッタに続いて魔術を放った。
唱えた呪文はほとんど同じなのに、威力が全く違う。
ヴィオレッタのは十数頭に効果があったのに、男の魔術は一頭だけだ。
願った神の名前が違ったから、上位神と下位神とで威力が違うのか?
それとも、呪文を唱える者の才能やレベルで違ってくるのか?
何より気になるのは、俺に魔術が使えるかどうかだ!
「風の神達の主アネモイよ、どうか私の願いを御聞き入れ下さい。
御身を慕う民を御救い下さい。
御身を慕う民を殺そうとするウルフたちの目と鼻を潰してください。
御身を敬い信じる者の願いを御聞き届けください、ウィンド・カッター」
全く何も起こらない。
「風の神カイキアスよ、どうか私の願いを御聞き入れ下さい。
御身を慕う民を御救い下さい。
御身を慕う民を殺そうとするウルフたちの目と鼻を潰してください。
御身を敬い信じる者の願いを御聞き届けください、ウィンド・カッター」
これも全く駄目だ、何も起こらない。
俺がこの世界の人間ではなく、日本人だからだろうか?
この世界の神など全く信じていないからだろうか?
日本の神に願ったら、この世界で魔術が使えるのだろうか?
異世界の神に対して、自分なりに呪文を変えて願ったら魔術が使えるだろうか?
目の間で魔術がある事を証明されたのだ、異世界に行って人生やり直すと決めてきたのだ、死ぬほど努力してでも魔術が使えるようになる!
「遠く大八島国にて風を司る志那都比古神よ
御身を慕う民を御救い下さい。
御身を慕う民を殺そうとする狼たちの首を刎ねてください。
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