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偵察3
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「殿様、ここです。ここに何か埋めた跡があります」
「イーニアスは、ここに兵士が埋められていると言うのだな」
「恐らくは」
「理由は何だと思う」
「兵士があまりに理不尽な要求をしたのだと思います」
「王国が詰問してきたら、村はどう対応すると思う」
「殿様も考えておられることでしょうが、ネッツェ王国に略奪に入った時に負傷したと言い訳する心算でしょう」
「そうだろうな」
「確認されますか?」
既に魔法で確認はしているけれど、それを口にするわけにはいかないから、嫌でも腐乱死体を見なければならないな。
「そうだな。しっかりとこの目で確認しておく必要があるな」
「では私達は村の監視に戻ります」
「掘り返すのは私達がやります」
俺が何も指示しなくても、斥候職と射手職は村の監視と周囲の警戒に戻ってくれた。
勿論遺体を掘り返すのも、盾職の二人がやってくれる。
一流の冒険者は、自分のやるべきことをわきまえてくれている。
盾職二人はあっという間に兵士の遺体を見つけてくれた。
兵士はよほど恨まれていたのだろう。
腐乱しているにもかかわらず、身体中の至る所に斬り傷や打撲痕が見て取れた。
「どうなされますか?」
「村の事か?」
「はい」
「もう少し様子を見て、村人の心根が悪いようなら捕虜にして売り払う。村人の心根がいいようなら、捕虜にして食糧を与える」
「そうですか。でしたら気合を入れ直さなければいけません」
この男も気持ちのいい漢だ。
いや、今回爺が選抜してくれた冒険者兵士は、皆心根のいい漢達だ。
こんな漢達なら、安心して背中を預けることが出来る。
だが、僅かな時間とは言え、この村を見た印象は貧しい。
一度でも略奪を行っているのなら、もう少しましな生活をしていると思うのだ。
補助の魔法の一つを使い、使い魔を送って詳しく探ってみよう。
俺は木々の上で休んでいる小鳥に魅了の魔法を使い、村の中に行かせた。
周囲から見た様子では、余りに貧しく見えるので、小鳥を捕ろうとするかもしれない。
銀級の魅了魔法を使い、百羽の小鳥を村の粗末な小屋の屋根に移動させた。
小鳥を鳴かさないようにしたので、村人はまだ気付いていない。
十三軒の家に分けて、全ての家に小鳥を配した。
しかも家にいる人間一人一人に専属の小鳥を配した。
圧倒的な量の情報が視覚と聴覚に押し寄せてくる。
その全てを正確にとらえて理解するのは難しいが、幼い頃から積み上げた経験で、必要な情報だけ取捨選択した。
「もうあのことは忘れるのだ」
「でも私は穢れてしまった。あなたの奥さんにはなれないは」
「そんな事はない。あの兵士は村で成敗した。だから穢れは払われた」
「でも私は、あの兵士の子供を宿してしまっているかもしれない。そんな身であなたの奥さんにはなれないは」
「大丈夫だよ。僕の子供だと言えばいい。もしあの兵士の子供だったとしても、君の子供であることには違いない。だから僕は愛することが出来るよ」
「ありがとう。でも駄目よ。村の皆が許さないは」
なるほどそう言う事か。
これなら村人を殺す必要も奴隷にする必要もない。
「イーニアスは、ここに兵士が埋められていると言うのだな」
「恐らくは」
「理由は何だと思う」
「兵士があまりに理不尽な要求をしたのだと思います」
「王国が詰問してきたら、村はどう対応すると思う」
「殿様も考えておられることでしょうが、ネッツェ王国に略奪に入った時に負傷したと言い訳する心算でしょう」
「そうだろうな」
「確認されますか?」
既に魔法で確認はしているけれど、それを口にするわけにはいかないから、嫌でも腐乱死体を見なければならないな。
「そうだな。しっかりとこの目で確認しておく必要があるな」
「では私達は村の監視に戻ります」
「掘り返すのは私達がやります」
俺が何も指示しなくても、斥候職と射手職は村の監視と周囲の警戒に戻ってくれた。
勿論遺体を掘り返すのも、盾職の二人がやってくれる。
一流の冒険者は、自分のやるべきことをわきまえてくれている。
盾職二人はあっという間に兵士の遺体を見つけてくれた。
兵士はよほど恨まれていたのだろう。
腐乱しているにもかかわらず、身体中の至る所に斬り傷や打撲痕が見て取れた。
「どうなされますか?」
「村の事か?」
「はい」
「もう少し様子を見て、村人の心根が悪いようなら捕虜にして売り払う。村人の心根がいいようなら、捕虜にして食糧を与える」
「そうですか。でしたら気合を入れ直さなければいけません」
この男も気持ちのいい漢だ。
いや、今回爺が選抜してくれた冒険者兵士は、皆心根のいい漢達だ。
こんな漢達なら、安心して背中を預けることが出来る。
だが、僅かな時間とは言え、この村を見た印象は貧しい。
一度でも略奪を行っているのなら、もう少しましな生活をしていると思うのだ。
補助の魔法の一つを使い、使い魔を送って詳しく探ってみよう。
俺は木々の上で休んでいる小鳥に魅了の魔法を使い、村の中に行かせた。
周囲から見た様子では、余りに貧しく見えるので、小鳥を捕ろうとするかもしれない。
銀級の魅了魔法を使い、百羽の小鳥を村の粗末な小屋の屋根に移動させた。
小鳥を鳴かさないようにしたので、村人はまだ気付いていない。
十三軒の家に分けて、全ての家に小鳥を配した。
しかも家にいる人間一人一人に専属の小鳥を配した。
圧倒的な量の情報が視覚と聴覚に押し寄せてくる。
その全てを正確にとらえて理解するのは難しいが、幼い頃から積み上げた経験で、必要な情報だけ取捨選択した。
「もうあのことは忘れるのだ」
「でも私は穢れてしまった。あなたの奥さんにはなれないは」
「そんな事はない。あの兵士は村で成敗した。だから穢れは払われた」
「でも私は、あの兵士の子供を宿してしまっているかもしれない。そんな身であなたの奥さんにはなれないは」
「大丈夫だよ。僕の子供だと言えばいい。もしあの兵士の子供だったとしても、君の子供であることには違いない。だから僕は愛することが出来るよ」
「ありがとう。でも駄目よ。村の皆が許さないは」
なるほどそう言う事か。
これなら村人を殺す必要も奴隷にする必要もない。
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