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会談
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「おかあさん、おいしいね」
「そうね、本当に美味しいわね」
「これぜんぶたべていいの?」
「大丈夫だぞ」
「ありがと」
「ありがとうございます」
給食現場では、先輩奴隷が作った料理を、新たに奴隷になった村人が食べている。
アゼス魔境で狩った銅級魔獣の肉だから、裕福な者から見ればとても美味しいとは言えない素材だが、餓死寸前の村人からすれば御馳走なのだろう。
「さて、我々も食べながら話をしようか」
「はい・・・・・」
元イマーン王国村人を収容した外城の放牧地に、急遽俺と村人代表の会談場を設けた。
「お前達が戦争犯罪者だという事は理解しているな?」
「殿様、我々のような者に自ら会ってくださったこと感謝いたします」
「うむ」
「ただ、言い訳させていただけるなら、我々は国に無理矢理やらされたのでございます」
「それは理解しているが、それを殺されたネッツェ王国の民や、家財を奪われた民に言っても許されるはずがないだろ」
「はい・・・・・ただ、直接略奪に加わった男達は犯罪者で当然ですが、家族だけ見逃して頂けないでしょうか?」
「通常は犯罪者の家族も連座制をとっている。これはイマーン王国もネッツェ王国も同じだったはずだ。それはお前達も知っているな」
「はい・・・・・」
「だが、ここは俺の領地だし、お前達を捕らえたのも俺だ。俺の権限で家族を普通の戦争奴隷として、働き次第で開放してやってもいい」
「本当でございますか!」
「ああ、ただし略奪に加わった者は駄目だ。略奪に加わった者は、どれほど働いても、その成果は家族にしか及ばない」
「え?!」
「なんだ、何か疑問があるのか?」
「私たちが頑張れば、家族を解放してくださるのですか」
「ああ、お前達は国に翻弄された犠牲者でもあるから、特別に働いた分だけ家族の身代金に当ててやる。だが元々戦争犯罪者だから、その基準は厳しいぞ」
「当然でございます。いえ、普通ならどれほど働いても、見返りなど得られないのが犯罪奴隷です。厳しい基準でも、褒美を頂けるだけで幸せでございます」
「そうか。おおすじ納得したのなら、一緒に食事をしよう。せっかくの料理が覚めてしまう」
「ありがとうございます」
衆人環視の中というか、多くの新人奴隷が食事をしたり、これからの仕事を説明されたりしている前で、俺達は食事をした。
「あの、殿様もこれを御食べになるのですか?」
「余も元は冒険者だから、魔境やダンジョンではそこで狩った魔獣や魔蟲を食べていた」
「そうでございますか」
「まあそんなに心配するな。余や家臣達の多くは、アリステラ王国から一旗揚げようとネッツェ王国にやってきたのだ。イマーン王国の民に恨みや遺恨があるわけではない」
「はい。ありがとうございます。それと、あの」
「なんだ? 聞きたいことがあるのなら今のうち聞いておけ。余が奴隷と直接会う機会などもう二度とないかもしれんぞ」
「そうね、本当に美味しいわね」
「これぜんぶたべていいの?」
「大丈夫だぞ」
「ありがと」
「ありがとうございます」
給食現場では、先輩奴隷が作った料理を、新たに奴隷になった村人が食べている。
アゼス魔境で狩った銅級魔獣の肉だから、裕福な者から見ればとても美味しいとは言えない素材だが、餓死寸前の村人からすれば御馳走なのだろう。
「さて、我々も食べながら話をしようか」
「はい・・・・・」
元イマーン王国村人を収容した外城の放牧地に、急遽俺と村人代表の会談場を設けた。
「お前達が戦争犯罪者だという事は理解しているな?」
「殿様、我々のような者に自ら会ってくださったこと感謝いたします」
「うむ」
「ただ、言い訳させていただけるなら、我々は国に無理矢理やらされたのでございます」
「それは理解しているが、それを殺されたネッツェ王国の民や、家財を奪われた民に言っても許されるはずがないだろ」
「はい・・・・・ただ、直接略奪に加わった男達は犯罪者で当然ですが、家族だけ見逃して頂けないでしょうか?」
「通常は犯罪者の家族も連座制をとっている。これはイマーン王国もネッツェ王国も同じだったはずだ。それはお前達も知っているな」
「はい・・・・・」
「だが、ここは俺の領地だし、お前達を捕らえたのも俺だ。俺の権限で家族を普通の戦争奴隷として、働き次第で開放してやってもいい」
「本当でございますか!」
「ああ、ただし略奪に加わった者は駄目だ。略奪に加わった者は、どれほど働いても、その成果は家族にしか及ばない」
「え?!」
「なんだ、何か疑問があるのか?」
「私たちが頑張れば、家族を解放してくださるのですか」
「ああ、お前達は国に翻弄された犠牲者でもあるから、特別に働いた分だけ家族の身代金に当ててやる。だが元々戦争犯罪者だから、その基準は厳しいぞ」
「当然でございます。いえ、普通ならどれほど働いても、見返りなど得られないのが犯罪奴隷です。厳しい基準でも、褒美を頂けるだけで幸せでございます」
「そうか。おおすじ納得したのなら、一緒に食事をしよう。せっかくの料理が覚めてしまう」
「ありがとうございます」
衆人環視の中というか、多くの新人奴隷が食事をしたり、これからの仕事を説明されたりしている前で、俺達は食事をした。
「あの、殿様もこれを御食べになるのですか?」
「余も元は冒険者だから、魔境やダンジョンではそこで狩った魔獣や魔蟲を食べていた」
「そうでございますか」
「まあそんなに心配するな。余や家臣達の多くは、アリステラ王国から一旗揚げようとネッツェ王国にやってきたのだ。イマーン王国の民に恨みや遺恨があるわけではない」
「はい。ありがとうございます。それと、あの」
「なんだ? 聞きたいことがあるのなら今のうち聞いておけ。余が奴隷と直接会う機会などもう二度とないかもしれんぞ」
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