王家を追放されたわけじゃないけど、世直しすることにしました。

克全

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調略3

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「アレクサンダー殿、アリステラ王国から使者が来たと言うのは本当か!」
「はい。本当でございます。グレアム卿」
「それはアレクサンダー殿がアリステラ王国に寝返ると言う事か」
「そうではありません。私や配下の者がアリステラ王国出身なのは御存知でしょう」
「それは存じておる」
「我々は、平和なアリステラ王国では士族位や卒族位を得るのが難しかったので、公共紛争から戦争が始まりそうだったこの国来たのです」
「それも知っておる」
「ですから親兄弟は今もアリステラ王国にいるのです」
「うむ」
「当然私がアッバース首長家で士爵位を得て、家臣達が卒族位を得たことを心から喜んでくれていました」
「それで」
「それがイブラヒム王家とアッバース首長家の反目から、大きな手柄を立てたのにもかかわらず、最初の臣従条件を反故にするような苦境に追い込まれました」
「いや、それは」
「違うとは言わないで頂きたい!」
「・・・・・」
「兵糧も戦支度も自弁の代わりに、イマーン王国が占拠している領地は切り取り勝手だったはずです」
「・・・・・その通りだ」
「それは今更、爵位をくれてやるから領地をよこせ、私財を投げ打って作った城を寄こせとは、主従の盟約に反しております」
「・・・・・」
「故郷の父母兄弟が、心配してくれるのは当然でしょう」
「それは理解した。ならばアリステラ王国に寝返ることはないのだな」
「寝返る事はありません。しかし家族単位で支援は約束してもらっています」
「なんだと!」
「何も不思議な事ではありますまい」
「そう言う事だ!」
「自分の子供や弟が、命懸けて手に入れた領地や地位を理不尽に奪われようとしているのです。支援するのが肉親の情です」
「それは・・・・・」
「グレアム将軍は歴戦の騎士だと御聞きしています。騎士の誇りを踏み躙られたら、例えそれが主君であろうとも、死を賭して誇りを取り戻すのが当然ではありませんか?」
「・・・・・その通りだ」
「家族や盟友なら、何を捨てても支援するのが騎士の矜持なのではありませんか?」
「その通りだ」
「ですから多くの騎士家や貴族家から、アリステラ王国とは関係なしに、独立を目指すのなら支援すると言う使者を送っていただきました」
「では、アリステラ王国に寝返るのではなく、独立騎士に成ると申されるのか」
「イブラヒム王家とアッバース首長家が、その権力や軍事力を盾にして、無理な要求をしてきた場合だけですよ」
「イブラヒム王家とアッバース首長家が正当な忠義を求める限り、それに従い忠誠を尽くすと言うのだな」
「はい」
「二言はないな!」
「騎士に二言はございません」
「分かった」
 イブラヒム王家から詰問の使者として、グレアム将軍がやってきた。
 元は士族家の庶子であったが、数々の武闘大会で優勝され、国内の盗賊討伐や国境紛争で武勲を立て、二十八歳の若さで将軍になられた英俊だ。
 ネッツェ王国内では無双の双剣使いとして知られている。
 噂では魔眼の持ち主と言う事だが、金色の瞳は確かに魔瞳だった。
 まあ俺には一切通じないが。
 軽くウェーブした山吹色の髪に菜の花色の肌
 百九十センチメートルくらいの長身は、王都の女官達からもてはやされていただろう。
 だが俺には男色の趣味などないから、何の効力も発揮しない。
 早々に御帰り頂いて、具体的な条件提示をしてもらうことにした。
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