立見家武芸帖

克全

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仇討ち

第34話仇討ち6

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「旦那、藤七郎の旦那、これを見て下さいよ、上手くいきましたよ」

 伊之助が読売を六種十八枚も持ち帰ってきた。
 題名には「二百人斬りが仇討ちの助太刀」と書かれている読売や「極悪養子、土井因幡」と書かれている読売があり、細かい内容は我が藤野姉弟に聞いた通りだった。

「読んだ者の反応はどうだった」

「いやあ、流石藤七郎の旦那は人気者ですよ。
 二百人斬りの題名が飛ぶように売れましたよ。
 読んだ連中も口々に土井家と松平家を罵っていました。
 もう御江戸で日暮源左衛門の名前と悪行を知らない者はいませんよ。
 大手門でも配りましたから、大名家でも評判になっていますよ」

 我が読売の内容を提供する条件として、半紙一枚四文の読売を、版元ごとに百枚もらって、登城の為に追手門にやってくる大名家の家臣に配ったのだ。
 内容が武士の本分にかかわるのものだから、瞬く間に評判になると伊之助が言いだしたのだが、その考えは正鵠を得ていたようだ。
 田沼様がその日の下城後に、事の真意が聞きたいと迎えの使者を寄越された。

「ほう、その姉弟が読売に書かれていた藤野家の者か」

「はい、御老中」

 我は田沼家の屋敷に藤野姉弟を連れて行った。
 土井家と松平家を敵に回して仇討ちをするなら、後ろ盾が必要だ。
 我が藤野姉弟の為に紹介できる後ろ盾は、御老中田沼様と白河公に山名の殿様だけだが、一番強力なのは御老中だろう。

「ふっふっふっふっ。
 藤七郎は休む間がないのう。
 今度は仇討ちの助太刀とはな。
 だが武士ならば藤七郎くらい波乱万丈で、常在戦場を覚悟すべきかもしれんな」

「とんでもございません。
 我は武芸しか出来ませんので、戦いの手助けはできても、正々堂々とした戦いの場を設けてやることも、後々の仕官までは手助けしてやる事ができません」

「ふっふっふっふっ。
 藤七郎も策士よのう。
 土井家と松平家に悪事を企ませないように、日暮源左衛門が逃げだせないように、儂に敵討ちの場を整えさせるために、読売を配らせたか」

「武芸者の浅知恵でございます、と言いたい所なのですが、長屋の怠け者が考えた事でございます」

「ほう、長屋の住む町人にも策士はいるものだ。
 さて、儂にとっても土井家に貸しを作るのは悪くない話だ。
 分かった、儂に任せておけ」

「田沼意次の子女」
長男:意知(一七四九/)
次男:勇次郎
三男:勝助 
四男:意正(一七五九/)
五男:松三郎
六男:直吉(一七六三/)
七男:竹五郎(一七六五/)
長女:千賀
次女:宝池院
養女:新見正則の娘(大岡忠喜室/土方雄年室)
「田沼意知子女」
長男:意明(一七七三)
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