ドラゴン&ローグの異世界バディ物語

克全

文字の大きさ
29 / 30
第二章

第29話:救出

しおりを挟む
 村長は俺との約束を守った。
 美女エルフの兄達が行った悪事を、村人全員を集めて話した。

 集まった人々が皆善良なのは、聞かされた時の表情で分かる。
 悪事に係わっていたのは、俺を襲った十三人だけなのだろう。

 それが分かって俺も安心できた。
 本来は被害者である混血エルフを傷つけるのは嫌だったのだ。

 下劣な十三人は村の中央、広場のような場所で縛られ放置された。
 石を投げられるような事はないが、蔑みの視線を向けられている。
 半数は心から後悔しているようだが、半数は逆恨みしている。

「貴男が言っておられた密貿易商人らしき連中は、二日か三日後に山の頂に現れると思います。
 これまでは常に同じ間隔で表れていました。
 また現れるまでここで待たれてはいかがですか?」

「その話が嘘ではない保証はあるのか?」

「ないですね、信じてもらうしかありません」

「あのような連中をのさばらせていた貴男を信じろと?」

「信用がないのはよく分かっています。
 それでも信じてくださいと言うしかありません」

「信じる事はできないが、滞在はさせてもらう。
 何かあればこの村が紅蓮の炎に包まれる魔術をかけておく。
 村を滅ぼしたくないのなら、もう二度と下種に襲わせるなよ」

「わかっています、村人はよく言い聞かせておきます」

 嫌味な言い方をしたくはなかったが、自分の命がかかっている。
 ローグがいなくなったので、熟睡する事ができなくなったのだ。
 あんな奴でも、目の前に大金がない限り裏切る心配だけはなかった。

 大して大きくもない村長の家、その客間で夜浅い眠りを取っていると、魔術で鍵をかけた扉を無理矢理開けようとする者が来た。

「開けてください、お願いします、開けてください。
 兄を許してください、私を差し上げます、だから兄を許してください」

 目が覚めた途端に声が聞こえてきた。
 村長達を憚って小声で話しかけてくるが、しっかりと伝わってくる。

 拡声魔術なのかもしれないのが、その声が苛立ちを高める。
 扉の外から攻撃魔術を使われていたら、俺は殺されていたかもしれない。

「村長、村長、村長!
 その女をどこかに閉じ込めておいてくれ。
 この部屋に入り込まれたら、俺の名誉が地に落ちる」

「申し訳ない、もう二度とこのような事がないようにする」

 村長も立て続けの失態を恥じたのだろう。
 急いで女を何所に連れて行った。
 朝になって村の中を見て回ると、中央の広場に兄達と縛られていた。

 女がいい見せしめになったのか、それ以降は誰も部屋にやってこなかった。
 俺は村長が用意する食事を断り、自分で作った。
 眠る部屋だけを借りて、他は全て自分で行った。

 村長が言っていた通り、三日後、頂きに密貿易商人らしき連中が現れた。
 俺は毎日頂近くまで登って待ち構えていたので、誰一人逃げすことなく捕らえる事ができた。

「俺に悪意を持つモノを全てに睡魔と麻痺を与えてくれ。
 スリーピネス、パララサス 」

「お前達は絶対に逆らえない。
 俺の意のままに奴隷にした人達がいる場所まで案内しろ。
 ガイド・ミー・トゥー・ホウェア・ザ・ピープル・エンスレイヴド・アー」

 俺は密貿易商人に魔術をかけて案内させた。
 強制的に案内させるだけの魔術だけでなく、嘘をついたり俺に害を与えようとしたりしたら、激烈な痛みに襲われる魔術もかけた。

 密貿易商人達は、何度も激烈な痛みに襲われ、奴隷達が一時的に収容されている場所に着くころには、俺が少しでも視線を向けると失禁する状態になった。

「ミランダに頼まれて助けに来ました。
 ミランダのお父さんとお兄さんはおられますか?」

 残念ながら奴隷の一時収容場所には、ミランダの父親も兄もいなかった。
 その頃には、密貿易商人達は少し聞くだけで全て話すようになっていた。

 だが、人間をモノとしか扱わない密貿易商人達は、奴隷にした人達の特徴など覚えていないし、売り先すら記録していなかった。
 仕方がないので、激痛を伴う記憶探査魔術をかけて調べた。

 ミランダの兄の居場所を見つけるのに十日もかかってしまった。
 それと……父親は激しい体罰と劣悪な環境に耐えられずに死んでしまっていた。

 俺は、自分を売春宿に売ってまで親兄弟を助けようとしたミランダへの義理を果たすために、密貿易商人達を殺そうとしたのだが……
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

最強の異世界やりすぎ旅行記

萩場ぬし
ファンタジー
主人公こと小鳥遊 綾人(たかなし あやと)はある理由から毎日のように体を鍛えていた。 そんなある日、突然知らない真っ白な場所で目を覚ます。そこで綾人が目撃したものは幼い少年の容姿をした何か。そこで彼は告げられる。 「なんと! 君に異世界へ行く権利を与えようと思います!」 バトルあり!笑いあり!ハーレムもあり!? 最強が無双する異世界ファンタジー開幕!

『辺境伯一家の領地繁栄記』序章:【動物スキル?】を持った辺境伯長男の場合

鈴白理人
ファンタジー
北の辺境で雨漏りと格闘中のアーサーは、貧乏領主の長男にして未来の次期辺境伯。 国民には【スキルツリー】という加護があるけれど、鑑定料は銀貨五枚。そんな贅沢、うちには無理。 でも最近──猫が雨漏りポイントを教えてくれたり、鳥やミミズとも会話が成立してる気がする。 これってもしかして【動物スキル?】 笑って働く貧乏大家族と一緒に、雨漏り屋敷から始まる、のんびりほのぼの領地改革物語!

スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

オレの異世界に対する常識は、異世界の非常識らしい

広原琉璃
ファンタジー
「あの……ここって、異世界ですか?」 「え?」 「は?」 「いせかい……?」 異世界に行ったら、帰るまでが異世界転移です。 ある日、突然異世界へ転移させられてしまった、嵯峨崎 博人(さがさき ひろと)。 そこで出会ったのは、神でも王様でも魔王でもなく、一般通過な冒険者ご一行!? 異世界ファンタジーの "あるある" が通じない冒険譚。 時に笑って、時に喧嘩して、時に強敵(魔族)と戦いながら、仲間たちとの友情と成長の物語。 目的地は、すべての情報が集う場所『聖王都 エルフェル・ブルグ』 半年後までに主人公・ヒロトは、元の世界に戻る事が出来るのか。 そして、『顔の無い魔族』に狙われた彼らの運命は。 伝えたいのは、まだ出会わぬ誰かで、未来の自分。 信頼とは何か、言葉を交わすとは何か、これはそんなお話。 少しづつ積み重ねながら成長していく彼らの物語を、どうぞ最後までお楽しみください。 ==== ※お気に入り、感想がありましたら励みになります ※近況ボードに「ヒロトとミニドラゴン」編を連載中です。 ※ラスボスは最終的にざまぁ状態になります ※恋愛(馴れ初めレベル)は、外伝5となります

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

【しっかり書き換え版】『異世界でたった1人の日本人』~ 異世界で日本の神の加護を持つたった1人の男~

石のやっさん
ファンタジー
12/17 13時20分 HOT男性部門1位 ファンタジー日間 1位 でした。 ありがとうございます 主人公の神代理人(かみしろ りひと)はクラスの異世界転移に巻き込まれた。 転移前に白い空間にて女神イシュタスがジョブやスキルを与えていたのだが、理人の番が来た時にイシュタスの顔色が変わる。「貴方神臭いわね」そう言うと理人にだけジョブやスキルも与えずに異世界に転移をさせた。 ジョブやスキルの無い事から早々と城から追い出される事が決まった、理人の前に天照の分体、眷属のアマ=テラス事『テラスちゃん』が現れた。 『異世界の女神は誘拐犯なんだ』とリヒトに話し、神社の宮司の孫の理人に異世界でも生きられるように日本人ならではの力を授けてくれた。 ここから『異世界でたった1人の日本人、理人の物語』がスタートする 「『異世界でたった1人の日本人』 私達を蔑ろにしチート貰ったのだから返して貰いますね」が好評だったのですが...昔に書いて小説らしくないのでしっかり書き始めました。

異世界に転生したけどトラブル体質なので心配です

小鳥遊 ソラ(著者名:小鳥遊渉)
ファンタジー
 元々、トラブルに遭いやすい体質だった男の異世界転生記。  トラブルに巻き込まれたり、自分から飛び込んだり、たまに自分で作ったり、魔物と魔法や剣のある異世界での転生物語。余り期待せずに読んで頂ければありがたいです。    戦闘は少な目です。アルフレッドが強すぎて一方的な戦いが多くなっています。  身内には優しく頼れる存在ですが、家族の幸せの為なら、魔物と悪人限定で無慈悲で引くくらい冷酷になれます。  転生した村は辺境過ぎて、お店もありません。(隣町にはあります)魔法の練習をしたり、魔狼に襲われ討伐したり、日照り解消のために用水路を整備したり、井戸の改良をしたり、猪被害から村に柵を作ったり、盗賊・熊・ゴブリンに襲われたり、水車に風車に手押しポンプ、色々と前世の記憶で作ったりして、段々と発展させて行きます。一部の人達からは神の使いと思われ始めています。………etc そんな日々、アルフレッドの忙しい日常をお楽しみいただければ!  知識チート、魔法チート、剣術チート、アルは無自覚ですが、強制的に出世?させられ、婚約申込者も増えていきます。6歳である事や身分の違いなどもある為、なかなか正式に婚約者が決まりません。女難あり。(メダリオン王国は一夫一妻制)  戦闘は短めを心掛けていますが、時にシリアスパートがあります。ご都合主義です。  基本は、登場人物達のズレた思考により、このお話は成り立っております。コメディーの域にはまったく届いていませんが、偶に、クスッと笑ってもらえる作品になればと考えております。コメディー要素多めを目指しております。女神と神獣も出てきます。 ※舞台のイメージは中世ヨーロッパを少し過去に遡った感じにしています。魔法がある為に、産業、医療などは発展が遅れている感じだと思っていただければ。  中世ヨーロッパの史実に出来るだけ近い状態にしたいと考えていますが、婚姻、出産、平均寿命などは現代と余りにも違い過ぎて適用は困難と判断しました。ご理解くださいますようお願いします。    俺はアラサーのシステムエンジニアだったはずだが、取引先のシステムがウイルスに感染、復旧作業した後に睡魔に襲われ、自前のシュラフで仮眠したところまで覚えているが、どうも過労死して、辺境騎士の3男のアルフレッド6歳児に転生? 前世では早くに両親を亡くし、最愛の妹を残して過労死した社畜ブラックどっぷりの幸薄な人生だった男が、今度こそ家族と幸せに暮らしたいと願い、日々、努力する日常。 ※最後になりますが、作者のスキル不足により、不快な思いをなされる方がおられましたら、申し訳なく思っております。何卒、お許しくださいますようお願い申し上げます。   この作品は、空想の産物であり、現実世界とは一切無関係です。

セーブポイント転生 ~寿命が無い石なので千年修行したらレベル上限突破してしまった~

空色蜻蛉
ファンタジー
枢は目覚めるとクリスタルの中で魂だけの状態になっていた。どうやらダンジョンのセーブポイントに転生してしまったらしい。身動きできない状態に悲嘆に暮れた枢だが、やがて開き直ってレベルアップ作業に明け暮れることにした。百年経ち、二百年経ち……やがて国の礎である「聖なるクリスタル」として崇められるまでになる。 もう元の世界に戻れないと腹をくくって自分の国を見守る枢だが、千年経った時、衝撃のどんでん返しが待ち受けていて……。 【お知らせ】6/22 完結しました!

処理中です...