皇帝の14男ですが、皇位争いの暗殺や謀殺から生き延びて、何とか貧乏辺境伯家に婿入りできました。前世知識と魔力でスローライフしたい。

克全

文字の大きさ
47 / 111
第1章

第47話:羊皮紙と狼皮紙

神歴1817年皇歴213年6月1日アバコーン辺境伯領フォレスト・ウルフダンジョン:ロジャー皇子視点

 アバコーン辺境伯領にあるフォレスト・ウルフダンジョンは、その名の通りフォレスト・ウルフだけが出現するダンジョンだ。

 ドロップも微妙で、1/10の確率で狼の皮か硬貨を落とす。
 つまり20回に2回狼の皮か硬貨を落とすのだ。

 この世界のダンジョンは、俺が調べた範囲ではこのケースが多い。
 土の成分を利用した硬貨と、もう1つ人間の役にたつ物を落とすのだ。
 だがその影響で、この世界では鉱山が全く開発されていない。

 それはそうだろう、あるかないか分からない鉱山を探し回り、落石で生き埋めになる鉱山など開発しなくても、ダンジョンでモンスターを狩れば硬貨が手に入る。
 その硬貨を熱して叩けば、いくらでも道具に造り直せるのだから。

 フォレスト・ウルフダンジョンも硬貨が手に入るという点は良いのだが、問題はその硬貨を手に入れるのがとても難しい事だ。

 元になるフォレスト・ウルフの習性に従っているのか、相手の方が強いと感じると、一目散に逃げてしまうのだ。
 
 更にゴブリンよりも賢く、群での狩りがとても上手い。
 バカな指揮官に率いられた人間よりも上手く連携攻撃をしかけてくる。

 人間が上手くやって、逃がさずに狩りをしたとしても、手に入るのはゴブリンダンジョンの半分しか落とさない硬貨と、使い道が微妙な狼の皮だ。

 狼の皮は防寒具としては優秀なのだが、それなりに文化が発展した皇国で、200年に渡って落とされ続けた狼の皮は、そのままだと安く買い叩かれてしまうのだ。
 それならまだ硬貨の方が、価値が下がっていないのだ。

 ただ、アバコーン辺境伯家も何の努力もしていなかった訳じゃない。
 常に品不足で高価な羊皮紙に目をつけて、狼の皮で狼皮紙を作り出した。
 
 羊皮紙は材料が絶対に羊でなければいけない訳じゃない。
 羊は、人間が家畜にしているから安定して手に入るので、材料にしているだけだ。

 だが、全ての羊皮が羊皮紙に使える訳じゃない。
 寄生虫や皮膚病、もちろんケガによる傷跡がある皮は羊皮紙には使えない。
 だが全く傷跡のないダンジョン産の狼皮は、全て紙に加工できるのだ。

 それだけでも凄い着眼点と努力なのだが、アバコーン辺境伯家はそこで歩みを止めず、更に考えて狼皮を有効に利用したのだ。

 狼皮紙使って写本をして、本にする商売を始めたのだ。
 この世界の騎士や徒士は、日本の武士と違って大手を振って副業ができる。
 本業である武力がないとバカにされるが、文武両道は称えられる。

 知識を活用して本を作る副業は、騎士として誇れる事なのだ。
 ただ、獣皮紙で作った本は、平民の家なら買えるくらい高価なのだ。
 そんな依頼者を獲得するのは難しいので、大半は狼皮紙のまま売っているそうだ。

「それはしかたありませんよ、もっと安くないと騎士や徒士でも本は買えません。
 普通は木簡を使いますし、口伝で伝えている家も多いです」

 スレッガー叔父上はそう言うが、前世の記憶がある俺には違和感がある。
 植物紙が大量に作れるようになれば、本は劇的に安くなる。
 活版印刷を再現するのは無理だが、版画で刷る方法なら俺でも再現できる。

 ただ問題は、この世界の識字率が極端に低い事だ。
 皇国全体を平均すると7%程度だと思う。

 都市部には貴族士族、聖職者や商人が集まっているので比較的に識字率が高い。
 だが圧倒的に人の多い農村では5%以下だと思う。

 中世ヨーロッパのような世界だから、これが普通といえば普通なのだ。
 だが江戸時代の識字率は全国平均でも60%以上あった。
 安価な紙さえあれば農民にも字を教える事ができるはずだ!

「紙を安く作ってみるか?」
感想 19

あなたにおすすめの小説

異世界転生目立ちたく無いから冒険者を目指します

桂崇
ファンタジー
小さな町で酒場の手伝いをする母親と2人で住む少年イールスに転生覚醒する、チートする方法も無く、母親の死により、実の父親の家に引き取られる。イールスは、冒険者になろうと目指すが、周囲はその才能を惜しんでいる

侯爵家三男からはじまる異世界チート冒険録 〜元プログラマー、スキルと現代知識で理想の異世界ライフ満喫中!〜【奨励賞】

のびすけ。
ファンタジー
気づけば侯爵家の三男として異世界に転生していた元プログラマー。 そこはどこか懐かしく、けれど想像以上に自由で――ちょっとだけ危険な世界。 幼い頃、命の危機をきっかけに前世の記憶が蘇り、 “とっておき”のチートで人生を再起動。 剣も魔法も、知識も商才も、全てを武器に少年は静かに準備を進めていく。 そして12歳。ついに彼は“新たなステージ”へと歩み出す。 これは、理想を形にするために動き出した少年の、 少し不思議で、ちょっとだけチートな異世界物語――その始まり。 【なろう掲載】

ファンタジーは知らないけれど、何やら規格外みたいです 神から貰ったお詫びギフトは、無限に進化するチートスキルでした

渡琉兎
ファンタジー
『第3回次世代ファンタジーカップ』にて【優秀賞】を受賞! 2024/02/21(水)1巻発売! 2024/07/22(月)2巻発売!(コミカライズ企画進行中発表!) 2024/12/16(月)3巻発売! 2025/04/14(月)4巻発売! 2025/09/12(金)5巻発売!同日コミカライズ開始! 2026/03/16(月)コミカライズ1巻発売! 応援してくださった皆様、誠にありがとうございます!! 刊行情報が出たことに合わせて02/01にて改題しました! 旧題『ファンタジーを知らないおじさんの異世界スローライフ ~見た目は子供で中身は三十路のギルド専属鑑定士は、何やら規格外みたいです~』 ===== 車に轢かれて死んでしまった佐鳥冬夜は、自分の死が女神の手違いだと知り涙する。 そんな女神からの提案で異世界へ転生することになったのだが、冬夜はファンタジー世界について全く知識を持たないおじさんだった。 女神から与えられるスキルも遠慮して鑑定スキルの上位ではなく、下位の鑑定眼を選択してしまう始末。 それでも冬夜は与えられた二度目の人生を、自分なりに生きていこうと転生先の世界――スフィアイズで自由を謳歌する。 ※05/12(金)21:00更新時にHOTランキング1位達成!ありがとうございます!

没落した貴族家に拾われたので恩返しで復興させます

六山葵
ファンタジー
生まれて間も無く、山の中に捨てられていた赤子レオン・ハートフィリア。 彼を拾ったのは没落して平民になった貴族達だった。 優しい両親に育てられ、可愛い弟と共にすくすくと成長したレオンは不思議な夢を見るようになる。 それは過去の記憶なのか、あるいは前世の記憶か。 その夢のおかげで魔法を学んだレオンは愛する両親を再び貴族にするために魔法学院で魔法を学ぶことを決意した。 しかし、学院でレオンを待っていたのは酷い平民差別。そしてそこにレオンの夢の謎も交わって、彼の運命は大きく変わっていくことになるのだった。 ※2025/12/31に書籍五巻以降の話を非公開に変更する予定です。 詳細は近況ボードをご覧ください。

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

転生したら領主の息子だったので快適な暮らしのために知識チートを実践しました

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
不摂生が祟ったのか浴槽で溺死したブラック企業務めの社畜は、ステップド騎士家の長男エルに転生する。 不便な異世界で生活環境を改善するためにエルは知恵を絞る。 14万文字執筆済み。2025年8月25日~9月30日まで毎日7:10、12:10の一日二回更新。

ギルドの片隅で飲んだくれてるおっさん冒険者

哀上
ファンタジー
チートを貰い転生した。 何も成し遂げることなく35年…… ついに前世の年齢を超えた。 ※ 第5回次世代ファンタジーカップにて“超個性的キャラクター賞”を受賞。 ※この小説は他サイトにも投稿しています。

【土壌改良】で死の荒野がSランク農園に!食べただけでレベルアップする野菜で、世界最強ギルド設立

黒崎隼人
ファンタジー
「え? これ、ただのトマトですよ?」 「いいえ、それは食べただけで魔力が全回復する『神の果実』です!」 ブラック企業で働き詰めだった青年は、異世界の名門貴族の三男・ノアとして転生する。 しかし、授かったスキルは【土壌改良】という地味なもの。 「攻撃魔法も使えない役立たず」と罵られ、魔物すら寄り付かない死の荒野へ追放されてしまう。 だが、彼らは知らなかった。 ノアのスキルは、現代の農業知識と合わせることで、荒れ果てた土地を「Sランク食材」が溢れる楽園に変えるチート能力だったことを! 伝説の魔獣(もふもふ)をキュウリ一本で手懐け、行き倒れた天才エルフを極上スープで救い出し、気づけば荒野には巨大な「農業ギルド」が誕生していた。 これは、本人がただ美味しい野菜を作ってのんびり暮らしたいだけなのに、周囲からは「世界を救う大賢者」と崇められてしまう、無自覚・最強の農業ファンタジー!