皇帝の14男ですが、皇位争いの暗殺や謀殺から生き延びて、何とか貧乏辺境伯家に婿入りできました。前世知識と魔力でスローライフしたい。

克全

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第1章

第52話:大軍団

神歴1817年皇歴213年7月2日バカン辺境伯領大森林:ロジャー皇子視点

「今から殿下直卒の大軍事演習を行う!
 殿下が指揮される以上、誰1人ケガを負う事もなく成功させなければならない。
 決して無理する事なく、細心の注意を払い、戦友との連携を忘れるな!」

「「「「「はい!」」」」」

 俺の拡声魔術を使ってスレッガー叔父上が1万の大軍団を指揮する。
 海外に売られそうだった人たちは1万人を越えていたが、ほぼ全員が若い女性か男性で、家臣使用人として雇う事ができた。

 多くの家臣を処罰した事で、俺の個人の直轄領になった農地はとても多い。
 だが長年の悪政による荒廃で収穫量が激減しており、1万人の騎士や徒士を雇えるほどの税収入ではない。
 
 だが俺には、ゴブリンダンジョンとフォリスト・ウルフダンジョンで手に入れた莫大な硬貨があり、皇都の肉ダンジョンで蓄えた膨大な高級肉がある。

 それを使えば100年どころか200年300年と、給料を払い食料を支給できるので、全員を召し抱えたのだ。

 先に召し抱えた300人はゴブリンダンジョンで実戦経験があり、大魔境でも狩りの経験があるので、後の1万人よりは少しだけ対人戦が強い。

 だが、後から召し抱えた1万人の方が、フォリスト・ウルフを狩った経験が多く、1万人で連携する実戦経験も豊富だった。

 そこで2つの部隊を合流させて練度と経験の差を無くすことにしたのだ。
 どうせ演習をするのなら、少しでも利益がある方が良い。
 だから大森林で狩りをする事になった。

「牛系のモンスターはできるだけ生け捕りにしろ、農耕だけでなく牛車にも使える」

「カリブーは雪ぞりに使えるから生け捕りにしろ」

「小型の鹿系は殺せ、肉にして食べてしまえ!」

「豚系は問答無用で狩れ、今日の昼めしだ!」

「犬系も美味いぞ、少し臭みはあるが香草を使えば美味しく喰える!」

 俺は今日も複数の索敵魔術を同時展開して危険に備えている。
 配下の者たちでは勝てないようにモンスターは事前に追い払う。
 楽に狩れるようモンスターだけを配下の方に追い込む。

 1万兵を実際に指揮すると、索敵魔術の便利さが身に染みて分かる。
 敵の状態を知った上で配下を布陣できるのだ。

 索敵魔術が使えない状態は、目と耳を塞いで戦っているのと同じだ。
 敵に索敵魔術がなく、俺だけが使えるなら、よほどの事がない限り負けない。

 機動力と打撃力を兼ね備えた中装騎兵団を持っていたら、1/10の兵力でも圧勝できるだろう。

「伝令、左翼1番隊に50メートル先に進むように伝えろ」

「「はっ!」」

 正副2騎の伝令に命令を伝えさせる。
 俺が索敵魔術で敵の状態を知り、配下をどのように動かせばいいのか分かっていても、それを正確に伝える方法がないと何の役にも立たない。

 無線や携帯電話があれば良いのだが、この世界にはない。
 伝書系の魔術があればよかったのだが、それもない。
 使えるのは戦乱期と同じ騎馬による伝令だけだ。

 戦場は一瞬で状況が激変してしまう。
 先に送った伝令が味方部隊にたどり着いた頃には、全く反対の戦況に激変している可能性のあるのだ。

 そんな戦場では、戦況を自分で判断して臨機応変に対処できる人間必要になる。
 そう言う人間を各部隊の指揮官に抜擢しなければ戦いには勝てない。
 毎日のように大魔境で狩りをして、指揮ができる者を探し出す。

 10人100人までなら指揮できる者もいれば、1000人1万人を自由自在に指揮できる者もいる。

 領地の事が落ち着いて、キャバン選帝侯の処分が終わったら、スレッガー叔父上に全軍を預けて、ゴブリンダンジョンがフォリスト・ウルフダンジョンに行かそう。

 バカン辺境伯領は、冬の間は雪に埋もれてしまうと聞いた。
 領地に残っていても家に籠って内職をするしかない。
 それなら冬の間はダンジョンの中で過ごす方が有意義だ。

「アントニオ、皇帝陛下に冬の間は皇都に戻りたいと手紙を書く。
 どうせ戻るのなら、俺が個人的に召し抱えた家臣の武芸を披露したい。
 1万兵を皇都に連れ帰りたいと親書を書くから、お前からも書いてくれ」

「……殿下は皇帝陛下を脅迫されるのですか?」
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