皇帝の14男ですが、皇位争いの暗殺や謀殺から生き延びて、何とか貧乏辺境伯家に婿入りできました。前世知識と魔力でスローライフしたい。

克全

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第1章

第56話:義務教育令

神歴1817年皇歴213年7月5日バカン辺境伯家領都領城:ロジャー皇子視点

「皇子で次期辺境伯の俺が命じる。
 子供の親と村長は、俺が作る学校に子供を通わせろ!
 この命令に従わない者には厳しい罰を与える。
 その代わり、子供が読み書き計算ができるようになり、俺の試験に合格した場合は、親に賞金を与え子供を家臣に取立てる!」

 俺は義務教育令を作って領内各地に掲示させた。
 直接の伝言も、毎日領内各地に肉を運ぶ輸送部隊に伝えさせた。

 急な事なので、学校をどうするかも完全には決まっていない。
 読み書き計算を教えられる者が、全ての村にいるかも分からない。
 それでも、大切だと思った事は、無理をしてでも始めないといけない。

「アントニオ、領内全ての村に読み書き計算を教えられる者がいるか調べろ。
 いなければ、辺境伯家の家臣で読み書き計算ができる者を教師にする。
 領都や領城で役目を持っている者は、俺の私兵に代わらせる。
 ああ、元平民だから数は少ないだろうが、俺の私兵で読み書き計算を教えられる者がいれば、領都内平民子弟の教師にする」

「殿下は、心から信用できない辺境伯家家臣を遠くの村に追いやる気ですか?」

「そんな気持ちはないが、そう思われても構わないぞ」

「では、できるだけ辺境伯家の譜代家臣は領都に残しましょう。
 追放だと思われるような事はしない方が良いです。
 領内の子供に読み書き計算を教えるのは、何も当主でなくても良いでしょう。
 隠居した者、部屋住の者で読み書き計算ができる者を教師にしましょう」

「よく言ってくれた、アントニオの考えを採用する。
 働いてもらうのだから、1人立ちできるだけの金を渡さないといけない。
 正直に言えば、領地は渡したくはないので、金だけで雇いたいのだが、いくらが良いと思う?」

「村に送る者は、村長の家に泊まるか空き家を借りる事になります。
 その者がちゃんと借家の費用を払わないと、殿下が恨まれるか辺境伯家の評判が落ちます。
 殿下から直接貸主に費用を渡される方が良いでしょう」

「そうだな、それに、家賃は村によって金額が変わるからな」

「騎士として雇われても徒士として雇われても、下女や下男は必要です。
 その者たちも殿下が直接雇って、下働きとしてつけてやりますか?」

「いや、譜代の下男下女を連れて行きたい者もいるだろう。
 当人に渡して下男下女に渡させよう、相場はいくらくらいなのだ?」

「皇都では、衣食住込みで下男が年9000ペクーニア、下女が3000ペクーニアほどですが、領都での相場も村々の相場も分かりません」

「そうか、だったらさっきの考えは改める。
 場所によって雇うのに必要な金が違うのなら、俺から下男下女に渡した方が良い」

「はい、私もその方が良いと思い直しました」

「食事はどうするべきだ、輸送係に肉や穀物を運ばせるか?」

「あってはならない事ですが、輸送係が盗む事も考えられます。
 他の物は多少の間違いが許されますが、兵糧の失敗は命取りになります」

「そうだな、万が一の事を考えて、食糧分を含んだ給料にしよう。
 1年360日、1万2600ペクーニアでどうだ?」

「1日35ペクーニアですか、少ない気もしますが、下男下女2人の給料を支払ってやり、家も借りてやり、年2回の服を支給するなら十分かもしれません。
 問題は下男下女の食費を家臣が払わなければいけない事ですが……
 皇都で並の食事が1食5ペクーニアで食べられます。
 主従3人で1日3食食べるとして45ペクーニア、これではやっていけません。
 まして妻子がいると生きて行けなくなります」

「なるほど、隠居や部屋住みを雇うにしても1日60ペクーニアが必要で、妻1人、子供2人、両親がいる当主なら120ペクーニアでもギリギリなのだな。
 分かった、新たに家を興す事になる隠居や部屋住みには1日60ペクーニア、年2万1600ペクーニア渡す。
 当主を教師にする場合は、妻子や両親にも年2回衣服を支給して、全員が楽に暮らせる家を貸し与える。
 食費は基本を1日60ペクーニアと定めて、家族の数だけ1日20ペクーニア増やすというのではどうだ?」

「それですと、家族がいて料理してもらえると、お金がかなり残りますが、それでも宜しいのですか?」
 
「少々の得があった方が良いだろう。
 それに、残っている辺境伯家譜代家臣は、先祖代々の家もあれば領地もある。
 当主を領都に残すのなら、家族を引き連れて行く者はほとんどいないだろう」
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