皇帝の14男ですが、皇位争いの暗殺や謀殺から生き延びて、何とか貧乏辺境伯家に婿入りできました。前世知識と魔力でスローライフしたい。

克全

文字の大きさ
62 / 111
第1章

第62話:モレル(アミガサタケ)と穀物輸入

神歴1817年皇歴213年7月10日バカン辺境伯家領都領城:ロジャー皇子視点

「叔父上、今日はモレルの人工栽培を覚えてもらう」

「ウゲェ~、今日もですか、昨日の分だけで頭がいっぱいです!」

 今日の叔父さんは家臣モードだな。
 後で何かお願いでもするつもりなのだろうか?
 いや、今日は他の護衛騎士がいるからだな。

「今日のモレルと昨日のマッシュルームだけだ、2つくらい覚えろ」

「2つですね、明日また覚えろとは言いませんね!?」

「言わん、2つだけだからしっかり覚えろ」

「分かりました、2つだけなら死ぬ気で覚えます。
 しかし本当に超高級キノコのモレルを、人の手で作れるのですか?」

「ああ、作れる、おがくずに小麦粉を混ぜた菌床に、大森林や普通の森から集めてきた、モレルの菌糸を振りかけて作るのだ」

「小麦が必要なんですか、穀物が不足している辺境伯領では苦しいですね」

「俺が神の啓示を受けたのはこの方法だが、馬糞でも作れるかもしれないし、他の方法でも作れるかもしれない」

「他の高級キノコ、ポルチーニやピエ・ド・ムートン、ジロールは作れませんか?」

「俺が神の啓示を受けたのはマッシュルームとモレルだけだ」

「そうですか、少し残念ですが、普通の人間では教えてもらえない高級キノコの人工栽培を、2つも教えて頂けるだけでも特別待遇、最高ですな」

「そうだ、文句を言っては神罰が下る、後は自分で工夫するのだ」

「今日のやり方も羊皮紙に書かないといけませんか?」

「当然だろう、しっかり書け」

「ウギャ~!」

 人工栽培できるモレルは、ブラックモレルだけだったはずだ。
 経済的に成功していたのは中国だが、日本でも実験段階では成功していた。
 しかも小麦を使わない、放置竹林の竹チップを使うエコな方法だった。

 この世界で竹を見た事ないが、切っても直ぐに再生する大森林の魔樹がある。
 幹の部分は建築資材として使うが、加工する時のおがくずはもちろん、枝葉の部分をチップにしたり発酵させたりして、菌床に使う事もできる。

「小麦、いや、穀物を輸入したい、できるか?」

 護衛任務についている守役のアントニオに聞いてみた。

「私に聞かれるという事は、他領から買うのではなく、皇国を通じて他国から買うという事で良いのですね?」

「ああ、そうだ、他領から買っても皇国全体の穀物量は変わらない。
 バカン辺境伯領の民が穀物を食べられるようになった分、他領の民が穀物を食べられなくなってしまう。
 それだけでなく、俺が金に糸目をつけずに穀物を買い漁った分、穀物の価格が上がって餓死する民が増えてしまう」

「皇都には肉ダンジョンがありますから、餓死する者は出ないと思いますが、ダンジョンモンスターに殺される平民は激増するでしょう。
 それに、皇都以外では民が餓死するかもしれません」

 俺の言った事を、言葉を変えて繰り返さなくても良いから。

「だからだ、だから皇国を通して正式な方法で他国から穀物を輸入する」

「いまだにキャバン選帝侯を処分しない皇国上層部に、借りを作る事になるかもしれませんが、それでも良いのですか?」

「かまわない、仲間の悪事が表に出ても大した処分をしない腐った連中だ、何も手に入れられずに無罪の報告を聞くよりは、少しでも利を手に入れる」

「分かりました、守役として皇国に正式な依頼をします」

 アントニオはそう言うと自分の家臣に羊皮紙を持ってこさせた。
 文武両道のアントニオは、立ったままでもきれいな字で公文書が書ける。

「殿下、殿下からも、正式な願いと私的な願いを届けてください」

 俺はアントニオの言葉に従って、母上やオスカー兄上、アバコーン辺境伯とゴート子爵に手紙を書いた。

 まだ幼いオスカー兄上には、俺の書いている事は理解できなくても、守役や後見役には理解できるから、ロクスバラ公爵として正式な願いを皇帝や皇国に出せる。

 3公爵家の1つ、ロクスバラ公爵の正式な願いは無視できない。
 それでなくても、3大大公家からキャバン選帝侯を処刑するように突き上げられているのだ、俺から交渉の機会を与えてやれば必ず喰いついてくる!
感想 19

あなたにおすすめの小説

異世界転生目立ちたく無いから冒険者を目指します

桂崇
ファンタジー
小さな町で酒場の手伝いをする母親と2人で住む少年イールスに転生覚醒する、チートする方法も無く、母親の死により、実の父親の家に引き取られる。イールスは、冒険者になろうと目指すが、周囲はその才能を惜しんでいる

侯爵家三男からはじまる異世界チート冒険録 〜元プログラマー、スキルと現代知識で理想の異世界ライフ満喫中!〜【奨励賞】

のびすけ。
ファンタジー
気づけば侯爵家の三男として異世界に転生していた元プログラマー。 そこはどこか懐かしく、けれど想像以上に自由で――ちょっとだけ危険な世界。 幼い頃、命の危機をきっかけに前世の記憶が蘇り、 “とっておき”のチートで人生を再起動。 剣も魔法も、知識も商才も、全てを武器に少年は静かに準備を進めていく。 そして12歳。ついに彼は“新たなステージ”へと歩み出す。 これは、理想を形にするために動き出した少年の、 少し不思議で、ちょっとだけチートな異世界物語――その始まり。 【なろう掲載】

ファンタジーは知らないけれど、何やら規格外みたいです 神から貰ったお詫びギフトは、無限に進化するチートスキルでした

渡琉兎
ファンタジー
『第3回次世代ファンタジーカップ』にて【優秀賞】を受賞! 2024/02/21(水)1巻発売! 2024/07/22(月)2巻発売!(コミカライズ企画進行中発表!) 2024/12/16(月)3巻発売! 2025/04/14(月)4巻発売! 2025/09/12(金)5巻発売!同日コミカライズ開始! 2026/03/16(月)コミカライズ1巻発売! 応援してくださった皆様、誠にありがとうございます!! 刊行情報が出たことに合わせて02/01にて改題しました! 旧題『ファンタジーを知らないおじさんの異世界スローライフ ~見た目は子供で中身は三十路のギルド専属鑑定士は、何やら規格外みたいです~』 ===== 車に轢かれて死んでしまった佐鳥冬夜は、自分の死が女神の手違いだと知り涙する。 そんな女神からの提案で異世界へ転生することになったのだが、冬夜はファンタジー世界について全く知識を持たないおじさんだった。 女神から与えられるスキルも遠慮して鑑定スキルの上位ではなく、下位の鑑定眼を選択してしまう始末。 それでも冬夜は与えられた二度目の人生を、自分なりに生きていこうと転生先の世界――スフィアイズで自由を謳歌する。 ※05/12(金)21:00更新時にHOTランキング1位達成!ありがとうございます!

没落した貴族家に拾われたので恩返しで復興させます

六山葵
ファンタジー
生まれて間も無く、山の中に捨てられていた赤子レオン・ハートフィリア。 彼を拾ったのは没落して平民になった貴族達だった。 優しい両親に育てられ、可愛い弟と共にすくすくと成長したレオンは不思議な夢を見るようになる。 それは過去の記憶なのか、あるいは前世の記憶か。 その夢のおかげで魔法を学んだレオンは愛する両親を再び貴族にするために魔法学院で魔法を学ぶことを決意した。 しかし、学院でレオンを待っていたのは酷い平民差別。そしてそこにレオンの夢の謎も交わって、彼の運命は大きく変わっていくことになるのだった。 ※2025/12/31に書籍五巻以降の話を非公開に変更する予定です。 詳細は近況ボードをご覧ください。

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

転生したら領主の息子だったので快適な暮らしのために知識チートを実践しました

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
不摂生が祟ったのか浴槽で溺死したブラック企業務めの社畜は、ステップド騎士家の長男エルに転生する。 不便な異世界で生活環境を改善するためにエルは知恵を絞る。 14万文字執筆済み。2025年8月25日~9月30日まで毎日7:10、12:10の一日二回更新。

ギルドの片隅で飲んだくれてるおっさん冒険者

哀上
ファンタジー
チートを貰い転生した。 何も成し遂げることなく35年…… ついに前世の年齢を超えた。 ※ 第5回次世代ファンタジーカップにて“超個性的キャラクター賞”を受賞。 ※この小説は他サイトにも投稿しています。

【土壌改良】で死の荒野がSランク農園に!食べただけでレベルアップする野菜で、世界最強ギルド設立

黒崎隼人
ファンタジー
「え? これ、ただのトマトですよ?」 「いいえ、それは食べただけで魔力が全回復する『神の果実』です!」 ブラック企業で働き詰めだった青年は、異世界の名門貴族の三男・ノアとして転生する。 しかし、授かったスキルは【土壌改良】という地味なもの。 「攻撃魔法も使えない役立たず」と罵られ、魔物すら寄り付かない死の荒野へ追放されてしまう。 だが、彼らは知らなかった。 ノアのスキルは、現代の農業知識と合わせることで、荒れ果てた土地を「Sランク食材」が溢れる楽園に変えるチート能力だったことを! 伝説の魔獣(もふもふ)をキュウリ一本で手懐け、行き倒れた天才エルフを極上スープで救い出し、気づけば荒野には巨大な「農業ギルド」が誕生していた。 これは、本人がただ美味しい野菜を作ってのんびり暮らしたいだけなのに、周囲からは「世界を救う大賢者」と崇められてしまう、無自覚・最強の農業ファンタジー!