87 / 111
第2章
第87話:帝国北中部の攻防
しおりを挟む
神歴1818年皇歴214年6月3日バーランド帝国帝都帝宮:ロジャー皇子視点
最初は帝国北中部の奴隷解放はとても順調だった。
ほとんどの貴族士族が暴君である帝王の勅命に唯々諾々と従った。
ところが、帝室に連なる公爵家に奴隷解放を命じた時に問題が起こった。
「余の奴隷を解放するだと、余を何者だと思っている!
先々代帝王の孫で現帝王陛下の従弟だぞ!
その財産を奪うなど絶対にありえん、何かの間違いだ!
いや、帝王陛下の何時ものなされようとは違い過ぎる。
誰かが帝王陛下を操っているに違いない、正直に申せ!」
暴君であると同時に多少の知恵もある公爵は、帝王の急な勅命に、何時もの帝王とは全く違うと疑いを持ったようだ。
だから奴隷解放を命じに行った騎士団の指揮官に自白を命じた。
だが、どれほど自白を強制されようと、俺の魅了と支配の魔術を受けた者は従わないし、末端の騎士は帝王と帝国が俺に支配されている事を知らない。
帝王が何時もの身勝手を命じているだけとしか思っていない。
公爵よりも帝都にいる下級騎士の方が、帝王の朝令暮改を知っている。
帝王が寵臣や寵姫の願い通りにするのが当たり前だと思っている。
だがそんな事を口にする訳にはいかない。
口にしたら厳罰に処せられる。
解雇されるくらいなら良いが、下手をしたら一族皆殺しだ。
「帝王陛下を操る者などいません!
帝王陛下が誰かに操られていると考えるのは不遜でございますぞ!
公爵閣下こそ帝王陛下を馬鹿にされているのではありませんか?!」
奴隷解放を命じられた騎士団の指揮官は、建前上の理由で公爵を非難した。
帝王が過去に行った愛妾におねだりされた朝令暮改を知っているので、公爵の言い分が正しいと分かっていて、建前を押し通そうとしていた。
指揮官のこの思考は、俺が魅了と支配の魔術を使って命じた事が原因だ。
何があっても、どのような手段を使ってでも、奴隷を無事に解放しろと命じているので、帝王の勅命で押し通そうとしていた。
「余が帝王陛下を馬鹿にする事などありえん!
余は帝王陛下を心から心配しているのだ、正直に申せ、何があった?!」
「何もございません、帝王陛下は御元気になされておられます。
智勇を兼ね備えられた帝王陛下が、英慮の上に出された勅命でございます。
御自身の身が大切なら素直に従われよ」
俺に魅了支配されているとはいえ、知能には何の影響もない指揮官だ。
奴隷を無傷で開放するという制約以外は本人の性格に合わせた言動をする。
だから帝王と公爵の間に争いが起きないように警告した。
だがその警告が、公爵のプライドをいたく傷つけた。
かなり高い帝位継承権を持ち、内心では帝王よりも賢いと思っていた公爵だ。
少人数の騎士を率いる士族程度に脅かされるのが我慢できなかった。
「おのれ、余を誰だと思っている、騎士風情が思い上がるな!」
瞬間的に激怒した公爵が、騎士たちの指揮官を斬り殺した。
将来的には帝室を滅ぼす気だった俺は、魔力塊を使わず見殺しにした。
奴隷の死傷だけを防げと命じてある使い魔も静観した。
「なっ、勅命に逆らわれるのか?!」
少数で編成された騎士団の副指揮官が、恐怖と驚きで固まりながらも何とか詰問したが、即座に反撃する事ができなかった。
「帝王陛下を君側の奸からお救いする、死ね!」
公爵はなかなかの武勇で、騎士を次々と斬り殺していった。
度胸もあり決断力もあるようで、今回の行動を奸臣討伐だと上手く言い訳した。
「帝王陛下を誑かす君側の奸が帝都にいる!
帝王陛下、帝室、帝国に忠誠を誓う者は余に従え!
帝都に登って君側の奸を討ち、帝王陛下を御守りするぞ!」
公爵は表向き帝王と帝室に対する忠誠を理由にしている。
だが、賢く野心がある者には、隠された意味が分かるようにも伝えている。
今帝王を操っている者に成り代わると!
君側の奸がいなくなれば、今度は公爵が帝王を操る事ができる。
地方の陪臣騎士が、今帝王の側を守っている近衛騎士に成り代われる。
だから力を貸せと言外に臭わせている。
公爵のような、多少頭が回る帝室関係者がいるのは予想外だった。
表だって反抗するのではなく、陰に隠れて奴隷を保持しようとする者ばかりだと思っていたのだが、大きく予想と違っていた。
だが、俺にとって有利な予想外だった。
表だって帝王の勅命に反抗する帝族がいれば、徹底的に討伐する事ができる。
上手く行けば、帝王と帝国政府に逆らうのは滅亡につながると、帝国の王侯貴族に思い込ませる事ができる。
「ホロボセ、ヒトリモノコサズ、コウシャクケヲホロボセ」
俺の意思を受けたハトの使い魔が、帝国北中部の奴隷解放を命じた騎士団団長に公爵討伐を指示した事で、内乱が勃発した。
俺がやらせた、帝王の勅命に従って公爵家を滅ぼそうとする帝国騎士団と徒士団。
帝王と帝国政府に従って身の安泰を図ろうとする地方貴族と地方士族。
公爵に従って中央での権力と利権を手に入れようとする地方貴族と地方士族。
2つの陣営に分かれて内乱が勃発した。
その争いに巻き込まれて奴隷達が死傷しないように、使い魔を動かした。
これまでは陰に隠れて奴隷解放部隊を動かしていた使い魔が、堂々と表に出て奴隷を助けるようになった。
内乱が長引けば、どうしても戦いに巻き込まれる者が現れる。
奴隷だけでなく、善良な帝国民も巻き込まれてしまう。
奴隷を虐待していたような奴は死んでも良いが、善良な人が死ぬのは胸が痛む。
だから、叛乱を起こした帝族を一瞬で滅ぼした。
使い魔たちに全力を出させて、帝王に逆らったら瞬時に滅ぶ前例を作った。
公爵を始めとした帝族、公爵家に仕えている騎士や徒士、公爵家に味方して謀叛を起こした地方貴族と地方士族を瞬殺した事で、今後はもっとやり易くなると思う。
最初は帝国北中部の奴隷解放はとても順調だった。
ほとんどの貴族士族が暴君である帝王の勅命に唯々諾々と従った。
ところが、帝室に連なる公爵家に奴隷解放を命じた時に問題が起こった。
「余の奴隷を解放するだと、余を何者だと思っている!
先々代帝王の孫で現帝王陛下の従弟だぞ!
その財産を奪うなど絶対にありえん、何かの間違いだ!
いや、帝王陛下の何時ものなされようとは違い過ぎる。
誰かが帝王陛下を操っているに違いない、正直に申せ!」
暴君であると同時に多少の知恵もある公爵は、帝王の急な勅命に、何時もの帝王とは全く違うと疑いを持ったようだ。
だから奴隷解放を命じに行った騎士団の指揮官に自白を命じた。
だが、どれほど自白を強制されようと、俺の魅了と支配の魔術を受けた者は従わないし、末端の騎士は帝王と帝国が俺に支配されている事を知らない。
帝王が何時もの身勝手を命じているだけとしか思っていない。
公爵よりも帝都にいる下級騎士の方が、帝王の朝令暮改を知っている。
帝王が寵臣や寵姫の願い通りにするのが当たり前だと思っている。
だがそんな事を口にする訳にはいかない。
口にしたら厳罰に処せられる。
解雇されるくらいなら良いが、下手をしたら一族皆殺しだ。
「帝王陛下を操る者などいません!
帝王陛下が誰かに操られていると考えるのは不遜でございますぞ!
公爵閣下こそ帝王陛下を馬鹿にされているのではありませんか?!」
奴隷解放を命じられた騎士団の指揮官は、建前上の理由で公爵を非難した。
帝王が過去に行った愛妾におねだりされた朝令暮改を知っているので、公爵の言い分が正しいと分かっていて、建前を押し通そうとしていた。
指揮官のこの思考は、俺が魅了と支配の魔術を使って命じた事が原因だ。
何があっても、どのような手段を使ってでも、奴隷を無事に解放しろと命じているので、帝王の勅命で押し通そうとしていた。
「余が帝王陛下を馬鹿にする事などありえん!
余は帝王陛下を心から心配しているのだ、正直に申せ、何があった?!」
「何もございません、帝王陛下は御元気になされておられます。
智勇を兼ね備えられた帝王陛下が、英慮の上に出された勅命でございます。
御自身の身が大切なら素直に従われよ」
俺に魅了支配されているとはいえ、知能には何の影響もない指揮官だ。
奴隷を無傷で開放するという制約以外は本人の性格に合わせた言動をする。
だから帝王と公爵の間に争いが起きないように警告した。
だがその警告が、公爵のプライドをいたく傷つけた。
かなり高い帝位継承権を持ち、内心では帝王よりも賢いと思っていた公爵だ。
少人数の騎士を率いる士族程度に脅かされるのが我慢できなかった。
「おのれ、余を誰だと思っている、騎士風情が思い上がるな!」
瞬間的に激怒した公爵が、騎士たちの指揮官を斬り殺した。
将来的には帝室を滅ぼす気だった俺は、魔力塊を使わず見殺しにした。
奴隷の死傷だけを防げと命じてある使い魔も静観した。
「なっ、勅命に逆らわれるのか?!」
少数で編成された騎士団の副指揮官が、恐怖と驚きで固まりながらも何とか詰問したが、即座に反撃する事ができなかった。
「帝王陛下を君側の奸からお救いする、死ね!」
公爵はなかなかの武勇で、騎士を次々と斬り殺していった。
度胸もあり決断力もあるようで、今回の行動を奸臣討伐だと上手く言い訳した。
「帝王陛下を誑かす君側の奸が帝都にいる!
帝王陛下、帝室、帝国に忠誠を誓う者は余に従え!
帝都に登って君側の奸を討ち、帝王陛下を御守りするぞ!」
公爵は表向き帝王と帝室に対する忠誠を理由にしている。
だが、賢く野心がある者には、隠された意味が分かるようにも伝えている。
今帝王を操っている者に成り代わると!
君側の奸がいなくなれば、今度は公爵が帝王を操る事ができる。
地方の陪臣騎士が、今帝王の側を守っている近衛騎士に成り代われる。
だから力を貸せと言外に臭わせている。
公爵のような、多少頭が回る帝室関係者がいるのは予想外だった。
表だって反抗するのではなく、陰に隠れて奴隷を保持しようとする者ばかりだと思っていたのだが、大きく予想と違っていた。
だが、俺にとって有利な予想外だった。
表だって帝王の勅命に反抗する帝族がいれば、徹底的に討伐する事ができる。
上手く行けば、帝王と帝国政府に逆らうのは滅亡につながると、帝国の王侯貴族に思い込ませる事ができる。
「ホロボセ、ヒトリモノコサズ、コウシャクケヲホロボセ」
俺の意思を受けたハトの使い魔が、帝国北中部の奴隷解放を命じた騎士団団長に公爵討伐を指示した事で、内乱が勃発した。
俺がやらせた、帝王の勅命に従って公爵家を滅ぼそうとする帝国騎士団と徒士団。
帝王と帝国政府に従って身の安泰を図ろうとする地方貴族と地方士族。
公爵に従って中央での権力と利権を手に入れようとする地方貴族と地方士族。
2つの陣営に分かれて内乱が勃発した。
その争いに巻き込まれて奴隷達が死傷しないように、使い魔を動かした。
これまでは陰に隠れて奴隷解放部隊を動かしていた使い魔が、堂々と表に出て奴隷を助けるようになった。
内乱が長引けば、どうしても戦いに巻き込まれる者が現れる。
奴隷だけでなく、善良な帝国民も巻き込まれてしまう。
奴隷を虐待していたような奴は死んでも良いが、善良な人が死ぬのは胸が痛む。
だから、叛乱を起こした帝族を一瞬で滅ぼした。
使い魔たちに全力を出させて、帝王に逆らったら瞬時に滅ぶ前例を作った。
公爵を始めとした帝族、公爵家に仕えている騎士や徒士、公爵家に味方して謀叛を起こした地方貴族と地方士族を瞬殺した事で、今後はもっとやり易くなると思う。
150
あなたにおすすめの小説
没落した貴族家に拾われたので恩返しで復興させます
六山葵
ファンタジー
生まれて間も無く、山の中に捨てられていた赤子レオン・ハートフィリア。
彼を拾ったのは没落して平民になった貴族達だった。
優しい両親に育てられ、可愛い弟と共にすくすくと成長したレオンは不思議な夢を見るようになる。
それは過去の記憶なのか、あるいは前世の記憶か。
その夢のおかげで魔法を学んだレオンは愛する両親を再び貴族にするために魔法学院で魔法を学ぶことを決意した。
しかし、学院でレオンを待っていたのは酷い平民差別。そしてそこにレオンの夢の謎も交わって、彼の運命は大きく変わっていくことになるのだった。
※2025/12/31に書籍五巻以降の話を非公開に変更する予定です。
詳細は近況ボードをご覧ください。
異世界転生目立ちたく無いから冒険者を目指します
桂崇
ファンタジー
小さな町で酒場の手伝いをする母親と2人で住む少年イールスに転生覚醒する、チートする方法も無く、母親の死により、実の父親の家に引き取られる。イールスは、冒険者になろうと目指すが、周囲はその才能を惜しんでいる
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
お前には才能が無いと言われて公爵家から追放された俺は、前世が最強職【奪盗術師】だったことを思い出す ~今さら謝られても、もう遅い~
志鷹 志紀
ファンタジー
「お前には才能がない」
この俺アルカは、父にそう言われて、公爵家から追放された。
父からは無能と蔑まれ、兄からは酷いいじめを受ける日々。
ようやくそんな日々と別れられ、少しばかり嬉しいが……これからどうしようか。
今後の不安に悩んでいると、突如として俺の脳内に記憶が流れた。
その時、前世が最強の【奪盗術師】だったことを思い出したのだ。
転生したら領主の息子だったので快適な暮らしのために知識チートを実践しました
SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
不摂生が祟ったのか浴槽で溺死したブラック企業務めの社畜は、ステップド騎士家の長男エルに転生する。
不便な異世界で生活環境を改善するためにエルは知恵を絞る。
14万文字執筆済み。2025年8月25日~9月30日まで毎日7:10、12:10の一日二回更新。
最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした
新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。
「もうオマエはいらん」
勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。
ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。
転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。
勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)
異世界転生~チート魔法でスローライフ
玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。
43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。
その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」
大型連休を利用して、
穴場スポットへやってきた!
テントを建て、BBQコンロに
テーブル等用意して……。
近くの川まで散歩しに来たら、
何やら動物か?の気配が……
木の影からこっそり覗くとそこには……
キラキラと光注ぐように発光した
「え!オオカミ!」
3メートルはありそうな巨大なオオカミが!!
急いでテントまで戻ってくると
「え!ここどこだ??」
都会の生活に疲れた主人公が、
異世界へ転生して 冒険者になって
魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。
恋愛は多分ありません。
基本スローライフを目指してます(笑)
※挿絵有りますが、自作です。
無断転載はしてません。
イラストは、あくまで私のイメージです
※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが
少し趣向を変えて、
若干ですが恋愛有りになります。
※カクヨム、なろうでも公開しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる