皇帝の14男ですが、皇位争いの暗殺や謀殺から生き延びて、何とか貧乏辺境伯家に婿入りできました。前世知識と魔力でスローライフしたい。

克全

文字の大きさ
104 / 111
第2章

第104話:老飛竜との交渉

神歴1818年皇歴214年10月10日帝国北部大山脈裾野:ロジャー皇子視点

「ない、卑小な人間との交渉などありえな!
 さっさと言う通りにしないと、大山脈にいる人間を全て焼き殺すぞ!」

「おかしいな、古代飛翔竜様はとても慈悲深い竜だと聞いていたのですが?」

「な、何を言っている?!」

「弱き者に対する慈悲深さを持った古代飛翔竜様が、卑小な人間のする事に目くじらを立てるとは思えなかっただけです」

「人間、古代飛翔竜様ならお前の頼みを聞いてくださるとでも言いたいのか?!」

「それは分かりません、人間のような卑小な存在に、神々に匹敵すると言われている古代飛翔竜様の事情など分かるはずがありません。
 何か高次の問題で、大山脈の地下に穴を空けてはいけないのかもしれません。
 ですが、単に縄張りの下に穴を開けられたくらいで、人間ごときに配下の飛竜族を使わされるとは思えないのです」

「……矮小な人間にしたら言葉が上手いな」

「お褒めに預かり光栄でございます」

「褒めてなどおらんわ!」

「はい、分かっております。
 ですが、1度戻られて古代飛翔竜様に確かめられた方が良いではありませんか?」

「卑小な人間の分際で、老竜である俺様を脅かしおって!」

「脅かしているのではありません、心配しているのです。
 老竜様が古代飛翔竜様の事を思ってやられた事で、古代飛翔竜様に叱られるような事がなければ良いと思っただけです」

「ふん、余計なお世話だ、次に会う時までに人間は引き上げさせておけ」

 老飛竜はそう言うと、大山脈の山頂に戻っていった。
 思わず安堵の息を長々と吐いた。
 老飛竜と壮飛竜が相手なら勝てるが、飛竜族全体を相手にしたら勝てない。

 単なる殺し合いなら逃げ隠れする事もできるから、引き分けに持ち込める。
 だが、俺には守らなければいけない民がいる。
 数の暴力で来られたら、全ての民を守る事はできない。

 さて、古代飛翔竜はトンネルを掘る事を認めてくれるだろうか?
 老飛竜が完全な独断で止めろと言ってきたわけではないだろう。
 何か前例があって、俺の魔術を感じて直ぐにやってきたはずだ。

 ただ、前例はあったが、古代飛翔竜に確認を取っていなかったのだ。
 もし例外があったら古代飛翔竜に逆らった事になるから引いてくれただけだ。
 今度飛竜族が来た時が、帝国が滅ぼされるか生き延びられるかの境界線になる!

 今発動させている3つのトンネル造りの魔術は解除する。
 言い返しはしたが、聞く気はあったのだとアピールしておく。
 殺しても良い奴らしか大山脈内に住ませていないが、無駄死にさせる気はない。

 必要以上に民を虐げて富を搾取していた者は、楽には殺さない。
 使えるだけ使って、自分がやってきた事を思い知らせてから死んでもらう。

神歴1818年皇歴214年11月11日帝国北部大山脈裾野:ロジャー皇子視点

「急げ、急いで大山脈から逃げろ!
 飛竜族が出て行けと言ってきた、急いで出て行かないと焼き殺されるぞ!」

 俺は大山脈開拓地の村々を周って追い立てた。
 眠り込んでいる深夜であろうと関係ない。
 昼に倒れるほど働かされていても全く関係ない。

 こいつらがこれまで領民にやっていた事と同じだ。
 むしろ殺されないように警告しているのだから感謝されて当然だ。
 こいつらなら、自分が逃げるために領民を囮にしていたに違いない。

 全ての村を巡ってから帝都に戻った。
 帝都の家臣達にやってもらわなければいけない事が山ほどある。
 特にアントニオ護衛騎士隊長には、総司令官として帝国軍を動かしてもらう。

「飛竜族から大山脈を出て行けと言う警告があった。
 更に皇国と通じるトンネル造りも止めろと言ってきた。
 大山脈の民は急いで北部地域に移動させている。
 問題が起きないように、総司令官の権限で騎士団と徒士団を動員しろ」

「私の命令よりも殿下の命令の方が良いのではありませんか?」

「俺も命令をするが、総司令官も同じ命令をだせ。
 俺の命令書に添え書きするだけでも良い、全ての機会をとらえて基盤を築け」

「分かりました、使い魔の負担にならないように、添え書きさせていただきます」

「トンネル造りは残念だが中止した。
 順当に発動していたが、飛竜族に人間殲滅の理由を与える訳にはいかない。
 飛竜族とは引き続き交渉するが、受け入れられる可能性は低い。
 皇国と帝国を行き来できるトンネル造りは諦めるしかないだろう」

「いや、いや、そもそも誰もできるなんて思っていませんでしたから。
 大山脈ですよ、大山脈!
 古代飛翔竜様が飛竜族を率いて支配している大山脈の下に、500kmものトンネルを造るなんて、最初から誰もできるなんて思っていませんよ」

 スレッガー叔父上が俺の心を慰めようと朗らかに言ってくれる。
 確かに、俺も最初は無理だと思いながら実験的をやった。
 それがとんでもなく簡単にできてしまったので、感覚が狂っていたようだ。

 確かに、普通に考えたら絶対に不可能な事だ。
 やれたとしても、とんでもない魔力と時間をかけて少しずつ造るのが普通だ。
 それが、周囲の魔力や魔素を活用して造れそうだった……

 正直とても惜しい、惜し過ぎてみんなの前で地団駄踏みそうになる。
 まあ、造っている途中で魔術が止まる可能性が高かったが……

「そうだな、たまたま上手くいったが、普通なら不可能な話だ。
 だが、全く可能性が無くなったわけではない。
 使いに来た老飛竜を言い包めて、古代飛翔竜様に確認を取ってもらっている。
 人間に対して優しいという伝説が残っている古代飛翔竜様だ。
 もしかしたらトンネルを造りも開拓地も許してくださるかもしれない」

「殿下、頭を下げてお願いするのなら止めませんが、人間を相手にする時のように交渉する気なら、力尽くで止めますよ!」

 スレッガー叔父上が本気だ、ほどほどにしておこう。
感想 19

あなたにおすすめの小説

異世界転生目立ちたく無いから冒険者を目指します

桂崇
ファンタジー
小さな町で酒場の手伝いをする母親と2人で住む少年イールスに転生覚醒する、チートする方法も無く、母親の死により、実の父親の家に引き取られる。イールスは、冒険者になろうと目指すが、周囲はその才能を惜しんでいる

侯爵家三男からはじまる異世界チート冒険録 〜元プログラマー、スキルと現代知識で理想の異世界ライフ満喫中!〜【奨励賞】

のびすけ。
ファンタジー
気づけば侯爵家の三男として異世界に転生していた元プログラマー。 そこはどこか懐かしく、けれど想像以上に自由で――ちょっとだけ危険な世界。 幼い頃、命の危機をきっかけに前世の記憶が蘇り、 “とっておき”のチートで人生を再起動。 剣も魔法も、知識も商才も、全てを武器に少年は静かに準備を進めていく。 そして12歳。ついに彼は“新たなステージ”へと歩み出す。 これは、理想を形にするために動き出した少年の、 少し不思議で、ちょっとだけチートな異世界物語――その始まり。 【なろう掲載】

ファンタジーは知らないけれど、何やら規格外みたいです 神から貰ったお詫びギフトは、無限に進化するチートスキルでした

渡琉兎
ファンタジー
『第3回次世代ファンタジーカップ』にて【優秀賞】を受賞! 2024/02/21(水)1巻発売! 2024/07/22(月)2巻発売!(コミカライズ企画進行中発表!) 2024/12/16(月)3巻発売! 2025/04/14(月)4巻発売! 2025/09/12(金)5巻発売!同日コミカライズ開始! 2026/03/16(月)コミカライズ1巻発売! 応援してくださった皆様、誠にありがとうございます!! 刊行情報が出たことに合わせて02/01にて改題しました! 旧題『ファンタジーを知らないおじさんの異世界スローライフ ~見た目は子供で中身は三十路のギルド専属鑑定士は、何やら規格外みたいです~』 ===== 車に轢かれて死んでしまった佐鳥冬夜は、自分の死が女神の手違いだと知り涙する。 そんな女神からの提案で異世界へ転生することになったのだが、冬夜はファンタジー世界について全く知識を持たないおじさんだった。 女神から与えられるスキルも遠慮して鑑定スキルの上位ではなく、下位の鑑定眼を選択してしまう始末。 それでも冬夜は与えられた二度目の人生を、自分なりに生きていこうと転生先の世界――スフィアイズで自由を謳歌する。 ※05/12(金)21:00更新時にHOTランキング1位達成!ありがとうございます!

没落した貴族家に拾われたので恩返しで復興させます

六山葵
ファンタジー
生まれて間も無く、山の中に捨てられていた赤子レオン・ハートフィリア。 彼を拾ったのは没落して平民になった貴族達だった。 優しい両親に育てられ、可愛い弟と共にすくすくと成長したレオンは不思議な夢を見るようになる。 それは過去の記憶なのか、あるいは前世の記憶か。 その夢のおかげで魔法を学んだレオンは愛する両親を再び貴族にするために魔法学院で魔法を学ぶことを決意した。 しかし、学院でレオンを待っていたのは酷い平民差別。そしてそこにレオンの夢の謎も交わって、彼の運命は大きく変わっていくことになるのだった。 ※2025/12/31に書籍五巻以降の話を非公開に変更する予定です。 詳細は近況ボードをご覧ください。

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

転生したら領主の息子だったので快適な暮らしのために知識チートを実践しました

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
不摂生が祟ったのか浴槽で溺死したブラック企業務めの社畜は、ステップド騎士家の長男エルに転生する。 不便な異世界で生活環境を改善するためにエルは知恵を絞る。 14万文字執筆済み。2025年8月25日~9月30日まで毎日7:10、12:10の一日二回更新。

ギルドの片隅で飲んだくれてるおっさん冒険者

哀上
ファンタジー
チートを貰い転生した。 何も成し遂げることなく35年…… ついに前世の年齢を超えた。 ※ 第5回次世代ファンタジーカップにて“超個性的キャラクター賞”を受賞。 ※この小説は他サイトにも投稿しています。

【土壌改良】で死の荒野がSランク農園に!食べただけでレベルアップする野菜で、世界最強ギルド設立

黒崎隼人
ファンタジー
「え? これ、ただのトマトですよ?」 「いいえ、それは食べただけで魔力が全回復する『神の果実』です!」 ブラック企業で働き詰めだった青年は、異世界の名門貴族の三男・ノアとして転生する。 しかし、授かったスキルは【土壌改良】という地味なもの。 「攻撃魔法も使えない役立たず」と罵られ、魔物すら寄り付かない死の荒野へ追放されてしまう。 だが、彼らは知らなかった。 ノアのスキルは、現代の農業知識と合わせることで、荒れ果てた土地を「Sランク食材」が溢れる楽園に変えるチート能力だったことを! 伝説の魔獣(もふもふ)をキュウリ一本で手懐け、行き倒れた天才エルフを極上スープで救い出し、気づけば荒野には巨大な「農業ギルド」が誕生していた。 これは、本人がただ美味しい野菜を作ってのんびり暮らしたいだけなのに、周囲からは「世界を救う大賢者」と崇められてしまう、無自覚・最強の農業ファンタジー!