竜神の花嫁? 言葉を飾っても生贄じゃないですか!

克全

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3話

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「まさか?
 お前達がやらせたのか?
 お前たちがルイス王を弑逆させて、クルドケンブリッジ王国を内乱させたのか!
 なんたる卑怯下劣!
 許し難い!
 斬り殺してくれる!」

 武姫アリア王女殿下が、王族用の壇上から駆け下り、宰相ライリーと大神官ジャクソンを斬ろうとされました。

「お待ちください!
 王女殿下といえども、宰相閣下と大神官猊下を害するなど許されませんぞ」

 事もあろうに、国王陛下や王族を護るはずの近衛騎士が、王女殿下を羽交い絞めにして止めたのです!
 彼らは王家王国よりも、宰相や大神官を優先するのです!
 知りませんでした。
 私は全くの不明でした。
 ここまで王家王国の屋台骨が喰い荒らされているとは思っていませんでした。

「な?
 何故だ?
 何故近衛騎士団が王家に刃を向ける?
 何時から王国の貴族士族はライリーやジャクソンの私兵になった?!」

「王女殿下であろうと、そのような無礼な言葉は許せませんぞ!
 我らは王家王国に逆らっている訳ではありません。
 宰相閣下や大神官猊下の私兵になった訳でもありません。
 私達近衛騎士は、英邁なジョセフ王太子殿下に心服しているだけでございます」

 武姫アリア王女殿下といえども、二十数人の近衛騎士に囲まれては、勝ち目はありません。
 
「アリアよ。
 これが現実なのだ。
 我らは敗れたのだよ。
 全ては余の不明と優柔不断が原因よ。
 其方には悪いが、全てを諦めて穏やかな余生を過ごすしかないのだよ」

 国王陛下が王女殿下を止められました。
 優柔不断という言葉に、ジョセフ王太子を殺して、アリア王女殿下を王太女にしておけばよかったという想いを押し込めています。
 今それを口にすれば、王女殿下が殺されてしまいます。

「父王陛下。
 アリア!
 私の慈悲に感謝するのだな。
 クルドケンブリッジ王国では、国王も王族も根絶やしにされているのだ」

「……」
「……」

 ダニエル国王陛下も、アリア王女殿下も黙っています。
 でもその意味は全く違います。
 国王陛下の沈黙は諦めです。
 諦めと命が惜しい憶病さ、卑怯な性格による沈黙です。
 アリア王女殿下は再起のための沈黙です。
 他日を期して王太子と宰相と大神官を討つための沈黙です。
 ですが、私ですら分かっているのです。
 三人が王女殿下を見逃すとは思えません。

「さて、国王陛下は承認されているのも分かっていただけましたね。
 せっかく竜神様の花嫁のために新調した花嫁台です。
 使わないのはもったいないですからね。
 さあ、自ら登っていただきましょうか。
 それとも、近衛の方々に無理矢理引きずりあげられるのがお望みですかな?」
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