嫌われ伯爵令嬢の生涯

克全

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6話

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「アイラは塔に幽閉する。
 世話は家族でする。
 どうしても手が離せない時は、エミリーかソフィアにやらせる。
 その他の者が塔に近づいたら、裏切者として斬首する。
 分かったな!」

「「「「「はい」」」」」

 人間の肉親への情は、難しいモノだと思い知りました。
 自分の血を残したいという想いは、人を縛り付け愚かにする。
 そう思い知りました。
 これは業としか表現できないですね。

 あれほど国王にオリバーの処罰を願っていたお爺様が、アイラを処刑されなかったのです。
 オリバー同様に、塔に閉じ込められたのです。
 お爺様の気持ちは想像できます。
 私が不慮の死をとげた時の事を考えておられるのです。

 お爺様は伯父様とセオドアしか子宝に恵まれませんでした。
 セオドアを問答無用で処刑されたお爺様も、アイラの処刑は躊躇ったのです。
 伯父様と伯母様は、子宝に恵まれませんでした。
 それに伯母様は病弱です。
 伯父様はお爺様になにを言われても側室も妾も置かれません。

 私が死んでしまったら、モンタギュー公爵家はお爺様の弟である大叔父様達か、従叔父の誰かが継ぐことになります。
 弟達と後継者争いをしたお爺様には、それは耐えられない事なのでしょう。
 でも、だからといって、アイラを生かすのは悪手だと思います。

 でも同時に、そのような肉親の情、業があったからこそ、私は救われたのです。
 そうでなかったら、また殺されていました。
 それは間違いのない事実です。
 だから、お爺様を諫める言葉を口にする事はできませんでした。
 自分で手を打つしかありません。

 問題はアイラが幽閉される塔です。
 その塔はモンタギュー公爵家が預かる王都の支城にあります。
 王都の支城とはいっても、王都の外ではなく、王都の中にあります。
 王都を護る大防壁の四隅が、四つの支城になっているのです。
 その四つの支城は、第一から第四までの騎士団が預かっています。

 モンタギュー公爵家は、代々第一騎士団長を務めています。
 当主や隠居が死傷してしまった上に、跡継ぎが幼少のような、非常事態でない限り、常に第一騎士団長の役目を務めているのです。
 今はお爺様が大将軍の役目を務め、伯父様が第一騎士団長の役目を務めておられますから、支城の警備は基本騎士団員がやるのです。

 騎士団員の中に、オリバーやダーシィにおもねる者がいるかもしれないのです。
 貴族士族の中には、愚者のオリバーを操り、立身出世、栄達を手に入れようとする者がいるかもしれません。
 アイラを逃がす者が現れる前に、私の手で、アイラを密かに殺してしまいましょうか?
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