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第二章

第26話:村長

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「村に不足しているようなものはない。
 我々は皆で協力して必要な物は自給自足できている。
 だから盗賊かもしれないお前を村の中に入れるわけにはいかん。
 そもそも20匹もの狼を引き連れた者を村に入れるバカがどこにいる」

 村長を名乗る若者にそう言われてようやく自分の事を客観視できた。
 ベンガルトラに匹敵する超大型狼を引き連れた見知らぬ男。
 20頭中10頭は子狼だと突っ込んでも何の意味もない。
 俺がもしこの村の長だったとしても、絶対に中に入れない。
 自分が非常識だという事に、ようやく気がつくことができた。
 でけど、どうしても言っておかなければいけない事がある。

「家の子たちはとても賢くて大人しいのです。
 人間の襲うようなことは決してありません。
 それだけは分かっていただきたい」

「そう思っているのはお前だけだ。
 子供たちがとても怖がっている。
 親たちは子供が食い殺されるのではないかと恐れている。
 もしお前が本当に盗賊ではなく、旅の商人だと言うのなら、まずは村の信用を得るところから始めるのだな。
 その最初がここから直ぐに立ち去る事だ」

 腹は立つが、村長の言っている事が正しい。
 俺だって見も知らぬ狼が現れたら、自分の子供でなくてもかばおうとするだろう。
 ここは潔く立ち去るべきなのだが、どうしても未練がある。
 もうこれ以上子供たちをムダに歩かせたくないのだ。
 はっきりと目的地を定めて歩かせたいのだ。

「では1つだけ教えてください。
 さっきからお願いしているのですが、商売のできる大きな街を教えてください。
 私にも国で待つ家族がいるのです。
 彼らの為にも、今回の商売は絶対に成功させたいのです。
 一日でも早く商売を始めたいのです」

「……大きな商売ができる街は、ここからかなり遠い。
 一番近い村でも、険しい山道を四日は歩かなければいけない。
 だがその村でも城壁の中には入れてもらえないだろう。
 次の目的地はその村で教えてもらう事だ。
 そんな事を続けているうちに、商売ができる街にたどり着けるだろう。
 それでもよければ教えてやる」

 やれ、やれ、素直には教えてくれませんか。
 まあ、国や領主に隠れて住んでいるのだから、警戒するのは当然ですね。
 それに、この村長も意外と親切です。
 俺が国や領主にこの村の事を告げ口する可能性があるのに、襲いかかって来ようともせず、一番安全な移動方法を教えてくれました。
 確かに遠くの大きな街を目指すよりも、近くの村を順番に移動する方が確実です。

「分かりました、それで結構です」

 それにしても、この子たちがいると村に入れないですか。
 認めたくはないですが、そうなってしまうでしょうね。
 さて、どうするべきでしょう。
 この子たちを隠しておいて、門が開いてから一斉に入ってしまい、入ってから無害で安全な事をアピールすべきでしょうか。
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