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第三章

第81話:脅迫と警告

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「見回りに行ってくるぞ、モンドラゴン王」

「ああ、人間が欲を出さないように脅かしてきてくれ」

「任せろ」

 古代火竜ダルべルドが魔力を使って堂々と空に飛び立つ。
 その雄大な姿は目を見張るモノがあるが、俺以外の人間には恐怖でしかない。
 現に一緒に見送るエリザベス王女を始めとしスタンフォード王家の人たちは、腰を抜かさないようにするだけで精一杯にようだった。

 俺は古代火竜ダルべルドと腹を割って話してみた。
 サザーランド王国軍を無力化した後なので、しばらくは時間に余裕があった。
 スタンフォード王家に伝わる伝承から考えて、ダルべルドが人間の敵ではない事が想像できていた。
 少なくともスタンフォード王家の敵ではないと思ったからだ。

 実際その通りだった。
 スタンフォード王家は、ダルべルドが呪いを受ける前、古代火竜の頃からダンベルドを神と崇めていた人々の末裔だった。
 だからダルべルドがこの世界に神々と争い呪いを受けた後でも、密かに伝承を残してくれていた事に感激したのだ。
 そのお礼もかねて、スタンフォード王家がサザーランド王国を併合する事を手伝ってくれることになった。

 サザーランド王国の首脳部を皆殺しにした翌日には、ダルべルドがサザーランド王国の王城に乗り込み、残っていた王族と貴族を恐怖に陥れた。
 即日国外退去を命じたが、逆らう者など誰1人いなかったそうだ。
 王侯貴族はダルべルドに追い立てられて国境を超えようと逃げ出した。

 貴族の領地にもダンベルドが乗り込んでいって、王侯貴族は誰1人国内に残さないようにしたのだが、もちろん盗賊が好き勝手にふるまわないようにもしていた。
 竜なのに人語で人々を脅迫したのだ。
 盗賊行為を働いたモノは地の果てまで追いかけて食い殺すと言った。
 これで盗賊行為ができるモノなどまずいない。

 そして今日は、旧サザーランド王国と国境を接する国々の王城に乗り込み、王侯貴族を脅迫するために飛び立ってくれた。
 もし彼らが攻め込んできても、ダンベルドのブレス1発で皆殺しにできる。
 ダンベルドがやった事なら、俺もエリザベス王女も罪の意識は小さい。
 全ての責任も増悪も古代火竜ダンベルドに向けられる。
 だが、それでは不完全な良心がどうしても傷むのだ。

 だから1度だけは警告してもらうことにした。
 現物の古代火竜ダンベルドが警告しても、領土欲で攻め込ん来るようなら、俺たちも罪の意識を感じる事なく皆殺しにすることができる。
 まあ、ダンベルドを自分の目で見て侵攻を命じる王がいるとしたら、それは狂人以外の何物でもない。
 俺たちが何もしなくても、貴族や家臣が殺してくれるだろう。

「周辺国との事はダンベルド殿に任せれば大丈夫でしょう。
 私たちは今後の事について話をしませんか」

「はい、モンドラゴン国王陛下の異世界帰還に関してでございますね」
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