地味で器量の悪い公爵令嬢は政略結婚を拒んでいたのだが

克全

文字の大きさ
7 / 16
第一章

第7話:プロポーズ・アマーリエ視点

しおりを挟む
 本当に怖かったです。
 今でも手足の震えが治まりません。
 あれほど恐ろしく緊張した状態で、よく言葉が出たと思います。
 その事だけは自分を褒めたいと思います。

 ロバート王太子が廃嫡されることになったのは可哀想ですが、あの性格では王位に就いた時に多くの家臣領民が苦しむことになりますので、仕方ありませんね。
 アレグザンドラは悪気はないのですが、少々欲が深すぎます。
 姉としては無罪放免を願いたいですが、帝王教育を受けた身としては、修道院で性根を叩き直してもらわなければいけないと思います。

 そういう大切な事は、アラステア王弟殿下がしてくださるでしょう。
 今まではできるだけ王国の政務には係わらないようにされておられました。
 ですが今回はロバート王太子を廃嫡にした責任があります。
 もう逃げる事など許されません。

 あれ、私は独り言を言ってしまったのでしょうか。
 アラステア王弟殿下が怖い顔をしてこちらに近づいて来られます。
 政務から逃げたいアラステア王弟殿下を怒らせてしまったのでしょうか。
 壁に張り付くように立っていたので後ろに逃げることができません。
 ああ、もう間近に来られてしまいました。
 これでは逃げようがありません。

「アマーリエ嬢、貴女の気高い心と優しさに私は心を奪われてしまいました。
 貴女ほど心の美しい令嬢に出会ったのは生まれて初めてです。
 今ここで告白しなければもう二度と貴女のような心の美し方とは出会えない。
 だから勇気を振り絞ってこの場で告白させていただきます。
 どうか私と結婚してください。
 お願いします、この通りです」

 いったい何が起こっているのでしょうか。
 アラステア王弟殿下の申されている事が全く理解できません。
 いえ、言っている意味は分かります。
 意味は分かりますが、その相手が私だという事が理解できません。

 私は不器量過ぎてロバートに婚約解消を迫られた女です。
 もう誰とも結婚しないと心に誓って壁の花に徹してきた女です。
 そんな女相手に、地位も名誉もあるアラステア王弟殿下が、今耳に入って来たよな事を口にするなど絶対にあり得ないです。

 ですが、アラステア王弟殿下は真剣です。
 嘘や冗談で正式な騎士の礼はとれません。
 騎士は主君に対して敬意、服従、忠誠心を表すために片膝をつきます。
 同じように求婚する相手に対しても永遠の愛を誓うために片膝をつきます。
 ここまでされては嘘や冗談と笑ってすますわけにはいきません。

 ですが、私はもう男性に傷つけられるのは嫌なのです。
 もう二度とあのような想いはしたくないんです。
 私なこんな容姿です。
 今は私の心を愛して下さっているかもしれません。
 ですがいつ心変わりされるか分からないのです。
 どうにかお断りする方法はないものでしょうか。
しおりを挟む
感想 14

あなたにおすすめの小説

伯爵令嬢の婚約解消理由

七宮 ゆえ
恋愛
私には、小さい頃から親に決められていた婚約者がいます。 婚約者は容姿端麗、文武両道、金枝玉葉という世のご令嬢方が黄色い悲鳴をあげること間違い無しなお方です。 そんな彼と私の関係は、婚約者としても友人としても比較的良好でありました。 しかしある日、彼から婚約を解消しようという提案を受けました。勿論私達の仲が不仲になったとか、そういう話ではありません。それにはやむを得ない事情があったのです。主に、国とか国とか国とか。 一体何があったのかというと、それは…… これは、そんな私たちの少しだけ複雑な婚約についてのお話。 *本編は8話+番外編を載せる予定です。 *小説家になろうに同時掲載しております。 *なろうの方でも、アルファポリスの方でも色んな方に続編を読みたいとのお言葉を貰ったので、続きを只今執筆しております。

『紅茶の香りが消えた午後に』

柴田はつみ
恋愛
穏やかで控えめな公爵令嬢リディアの唯一の楽しみは、幼なじみの公爵アーヴィンと過ごす午後の茶会だった。 けれど、近隣に越してきた伯爵令嬢ミレーユが明るく距離を詰めてくるたび、二人の時間は少しずつ失われていく。 誤解と沈黙、そして抑えた想いの裏で、すれ違う恋の行方は——。

冷徹公爵の誤解された花嫁

柴田はつみ
恋愛
片思いしていた冷徹公爵から求婚された令嬢。幸せの絶頂にあった彼女を打ち砕いたのは、舞踏会で耳にした「地味女…」という言葉だった。望まれぬ花嫁としての結婚に、彼女は一年だけ妻を務めた後、離縁する決意を固める。 冷たくも美しい公爵。誤解とすれ違いを繰り返す日々の中、令嬢は揺れる心を抑え込もうとするが――。 一年後、彼女が選ぶのは別れか、それとも永遠の契約か。

月夜に散る白百合は、君を想う

柴田はつみ
恋愛
公爵令嬢であるアメリアは、王太子殿下の護衛騎士を務める若き公爵、レオンハルトとの政略結婚により、幸せな結婚生活を送っていた。 彼は無口で家を空けることも多かったが、共に過ごす時間はアメリアにとってかけがえのないものだった。 しかし、ある日突然、夫に愛人がいるという噂が彼女の耳に入る。偶然街で目にした、夫と親しげに寄り添う女性の姿に、アメリアは絶望する。信じていた愛が偽りだったと思い込み、彼女は家を飛び出すことを決意する。 一方、レオンハルトには、アメリアに言えない秘密があった。彼の不自然な行動には、王国の未来を左右する重大な使命が関わっていたのだ。妻を守るため、愛する者を危険に晒さないため、彼は自らの心を偽り、冷徹な仮面を被り続けていた。 家出したアメリアは、身分を隠してとある街の孤児院で働き始める。そこでの新たな出会いと生活は、彼女の心を少しずつ癒していく。 しかし、運命は二人を再び引き合わせる。アメリアを探し、奔走するレオンハルト。誤解とすれ違いの中で、二人の愛の真実が試される。 偽りの愛人、王宮の陰謀、そして明かされる公爵の秘密。果たして二人は再び心を通わせ、真実の愛を取り戻すことができるのだろうか。

冷徹公に嫁いだ可哀想なお姫様

さくたろう
恋愛
 役立たずだと家族から虐げられている半身不随の姫アンジェリカ。味方になってくれるのは従兄弟のノースだけだった。  ある日、姉のジュリエッタの代わりに大陸の覇者、冷徹公の異名を持つ王マイロ・カースに嫁ぐことになる。  恐ろしくて震えるアンジェリカだが、マイロは想像よりもはるかに優しい人だった。アンジェリカはマイロに心を開いていき、マイロもまた、心が美しいアンジェリカに癒されていく。 ※小説家になろう様にも掲載しています いつか設定を少し変えて、長編にしたいなぁと思っているお話ですが、ひとまず短編のまま投稿しました。

【完結】大好きな彼が妹と結婚する……と思ったら?

江崎美彩
恋愛
誰にでも愛される可愛い妹としっかり者の姉である私。 大好きな従兄弟と人気のカフェに並んでいたら、いつも通り気ままに振る舞う妹の後ろ姿を見ながら彼が「結婚したいと思ってる」って呟いて…… さっくり読める短編です。 異世界もののつもりで書いてますが、あまり異世界感はありません。

毒味役の私がうっかり皇帝陛下の『呪い』を解いてしまった結果、異常な執着(物理)で迫られています

白桃
恋愛
「触れるな」――それが冷酷と噂される皇帝レオルの絶対の掟。 呪いにより誰にも触れられない孤独な彼に仕える毒味役のアリアは、ある日うっかりその呪いを解いてしまう。 初めて人の温もりを知った皇帝は、アリアに異常な執着を見せ始める。 「私のそばから離れるな」――物理的な距離感ゼロの溺愛(?)に戸惑うアリア。しかし、孤独な皇帝の心に触れるうち、二人の関係は思わぬ方向へ…? 呪いが繋いだ、凸凹主従(?)ラブファンタジー!

居場所を失った令嬢と結婚することになった男の葛藤

しゃーりん
恋愛
侯爵令嬢ロレーヌは悪女扱いされて婚約破棄された。 父親は怒り、修道院に入れようとする。 そんな彼女を助けてほしいと妻を亡くした28歳の子爵ドリューに声がかかった。 学園も退学させられた、まだ16歳の令嬢との結婚。 ロレーヌとの初夜を少し先に見送ったせいで彼女に触れたくなるドリューのお話です。

処理中です...