少年騎士

克全

文字の大きさ
45 / 47
第一章

第45話:帰領

しおりを挟む
 ソフィアとアーサーの3人で話し合って、そのまま銹武器が確実に手に入る階層で狩りを続ける事にしました。

 国王が馬鹿ではなく、多くの密偵を使って周辺小国群や大国の様子を調べさせ、何とかして国を守ろうとしているのが分かりました。

 そんな国王が、国を豊かにするために私を前将軍にしたのです。
 逃げなければいけなくなるまでは、できるだけ助ける事にしたのです。

 それがよかったのかどうか、90日経った今でも分かりません。
 元々我が国を攻め取る気だったピアソン王国が宣戦布告をしてきたのです。

 私たちが大量に手に入れて、国王が輸出した銹武器を購入できたからです。
 ピアソン王国軍に銹武器を装備させた事で、必勝を確信したのだそうです。

 何故そう言い切れるかというと、売った本人、ハービー商会のドミニク会長が、我が国の密偵として調べてきたからです。

 ピアソン王国軍が攻め込んできるのなら、のんきにダンジョンで狩りなどやっていられません。

「国王陛下、私たちをグリフィス騎士領に出陣させてください」

 ピアソン王国は、銹武器を持った1万以上の軍勢を送って来ました。
 途中にある小国群は、自分たちが攻撃されるのを恐れて中立を宣言しました。
 我が国の領地持ち騎士家は、グリフィス騎士家を除いて一斉に裏切りました。

 分かっていた事ですが、凄く腹が立ちました。
 代々仕えてきた王家を裏切るとは、恥知らずにも程があります!

 領民が大切だと言うのなら、領民を連れて逃げればいいのです!
 これまで他国の軍勢を撃退してきたのと同じように、富と食糧を持って王都に逃げて来る事だってできるのです。

 そんな恥知らずな連中に、愛するグリフィス騎士領を襲わせません!
 父上達なら騎士館を守り切ると信じていますが、わずかでも手伝いたいのです。

「お前達に行くなと命じても無駄なのは分かっている。
 無理に止めようとしたら、余をぶちのめしてでも行くだろう。
 ただ、お前たち3人だけだ、他の者は王都に残れ」

 許可をもらったので、急いでグリフィス騎士領に戻りました。
 ドミニク会長の情報が早かったので、まだピアソン王国が国境を越える前でした。

 卑怯で憶病な裏切者たちは、自分たちだけで攻め込む勇気がなかったようです。
 もしかしたら、ピアソン王国に勝手な事をしないように言われているのかもしれません。

 ピアソン王国は、勝った後で領地持ち騎士たちを処分するはずです。
 僕にだって分かる、あまりにも簡単な話です。

 領地持ち騎士たちに手柄を立てさせたくないはずです。
 卑怯だとか手柄がないとか再寝返りする心算だったとか言って、処分します。

 ただ、自分たちの手で処分すると世間体が悪いので、王都を攻める時に死んでくれた方が、自分たちの手で処分しなくてすみます。

 何より大切な自分の騎士や兵士を死なせずにすみます。
 我が国の人間同士を殺し合わせて、楽に国を奪いたいのです。

 こんな簡単な事も分からず、目先の利を機につられて国を裏切り、名誉を失うのですから、馬鹿ほど可哀想な生き物はいません。

「ハリー様、よくぞお戻りくださいました」
「将軍に任じられたとの事、うれしく聞かせていただいておりました」
「ハリー様と一緒に戦えると思うと、腕が鳴ります」
「俺の弓の腕をまたご覧に入れてみせます」

 馬を駆けさせるよりも、身体強化を重ねた自分たちで走る方が早いので、3人だけで急いで領地に戻ってきました。

 城のような村の城門に入ると、領民たちに歓迎してもらえました。
 みな幼い頃から知っている顔です。
 一緒に狩りに行った事のある者は、敵を射る気満々です。

「父上とお爺様に私の役割を聞いてくる」

 私はそう言って騎士館に向かいました。
 小さな村なので、村の城門から領主館までは直ぐです。

 領主館は、敵に村の城壁を超えられた場合に、領民全員を入れて最後まで戦うので、かなり大きく頑丈に造られています。

「父上、お爺様、ただいま戻りました」

「よくぞ戻った、その誇り高い行為を父として誇りに思う」

「お帰り、将軍に任じられたそうだな、祖父として誇りに思うぞ」

「全ては父上とお爺様に幼い頃から御指導していただいたお陰です。
 子として孫として、そのご恩を返すと同時に、グリフィス騎士家の者として、誇り高く戦いたいと思っております」

「よくぞ申した、それでこそ我が息子だ」

「その決意天晴である、籠城戦は儂たちに任せて、好きに戦うがいい」

「好きに戦って宜しいのですか?」
 
 私がそう言うと、父上をお爺様が目配せされた。
 2人で確認された後で父上が話された。

「国王陛下がお前たちを無理矢理王都に籠城させる可能性は低いと思っていが、領地には帰さずに、遊撃兵としてピアソン王国軍を迎え討たせる事は考えていた。
 その心算で籠城の御準備をしていたから、今になってお前たちを籠城させるよりは、遊撃兵として自由に戦わせた方がやりやすいのだ」

「それは『ピアソン王国軍が領地に来る前に、全滅させろ』と言われているのですか?」

「そこまで難しい事をやれとは言っていない。
 私たちが望むのは、ここに来るピアソン王国軍をできるだけ減らしてくれる事だ。
 減らせないのなら、寝られないようにして、疲れさせてくれてもかまわない。
 敵を殺せなくてもいい、戦える人数さえ減らしてくれればいい。
 もちろん、全滅させられるのなら、それが1番だ」

「分かりました、微力ながら全力を尽くさせていただきます」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

運よく生まれ変われたので、今度は思いっきり身体を動かします!

克全
児童書・童話
「第1回きずな児童書大賞」重度の心臓病のため、生まれてからずっと病院のベッドから動けなかった少年が12歳で亡くなりました。両親と両祖父母は毎日のように妾(氏神)に奇跡を願いましたが、叶えてあげられませんでした。神々の定めで、現世では奇跡を起こせなかったのです。ですが、記憶を残したまま転生させる事はできました。ほんの少しだけですが、運動が苦にならない健康な身体と神与スキルをおまけに付けてあげました。(氏神談)

14歳で定年ってマジ!? 世界を変えた少年漫画家、再起のノート

谷川 雅
児童書・童話
この世界、子どもがエリート。 “スーパーチャイルド制度”によって、能力のピークは12歳。 そして14歳で、まさかの《定年》。 6歳の星野幸弘は、将来の夢「世界を笑顔にする漫画家」を目指して全力疾走する。 だけど、定年まで残された時間はわずか8年……! ――そして14歳。夢は叶わぬまま、制度に押し流されるように“退場”を迎える。 だが、そんな幸弘の前に現れたのは、 「まちがえた人間」のノートが集まる、不思議な図書室だった。 これは、間違えたままじゃ終われなかった少年たちの“再スタート”の物語。 描けなかった物語の“つづき”は、きっと君の手の中にある。

「いっすん坊」てなんなんだ

こいちろう
児童書・童話
 ヨシキは中学一年生。毎年お盆は瀬戸内海の小さな島に帰省する。去年は帰れなかったから二年ぶりだ。石段を上った崖の上にお寺があって、書院の裏は狭い瀬戸を見下ろす絶壁だ。その崖にあった小さなセミ穴にいとこのユキちゃんと一緒に吸い込まれた。長い長い穴の底。そこにいたのがいっすん坊だ。ずっとこの島の歴史と、生きてきた全ての人の過去を記録しているという。ユキちゃんは神様だと信じているが、どうもうさんくさいやつだ。するといっすん坊が、「それなら、おまえの振り返りたい過去を三つだけ、再現してみせてやろう」という。  自分の過去の振り返りから、両親への愛を再認識するヨシキ・・・           

四尾がつむぐえにし、そこかしこ

月芝
児童書・童話
その日、小学校に激震が走った。 憧れのキラキラ王子さまが転校する。 女子たちの嘆きはひとしお。 彼に淡い想いを抱いていたユイもまた動揺を隠せない。 だからとてどうこうする勇気もない。 うつむき複雑な気持ちを抱えたままの帰り道。 家の近所に見覚えのない小路を見つけたユイは、少し寄り道してみることにする。 まさかそんな小さな冒険が、あんなに大ごとになるなんて……。 ひょんなことから石の祠に祀られた三尾の稲荷にコンコン見込まれて、 三つのお仕事を手伝うことになったユイ。 達成すれば、なんと一つだけ何でも願い事を叶えてくれるという。 もしかしたら、もしかしちゃうかも? そこかしこにて泡沫のごとくあらわれては消えてゆく、えにしたち。 結んで、切って、ほどいて、繋いで、笑って、泣いて。 いろんな不思議を知り、数多のえにしを目にし、触れた先にて、 はたしてユイは何を求め願うのか。 少女のちょっと不思議な冒険譚。 ここに開幕。

大人で子供な師匠のことを、つい甘やかす僕がいる。

takemot
児童書・童話
 薬草を採りに入った森で、魔獣に襲われた僕。そんな僕を助けてくれたのは、一人の女性。胸のあたりまである長い白銀色の髪。ルビーのように綺麗な赤い瞳。身にまとうのは、真っ黒なローブ。彼女は、僕にいきなりこう尋ねました。 「シチュー作れる?」  …………へ?  彼女の正体は、『森の魔女』。  誰もが崇拝したくなるような魔女。とんでもない力を持っている魔女。魔獣がわんさか生息する森を牛耳っている魔女。  そんな噂を聞いて、目を輝かせていた時代が僕にもありました。  どういうわけか、僕は彼女の弟子になったのですが……。 「うう。早くして。お腹がすいて死にそうなんだよ」 「あ、さっきよりミルク多めで!」 「今日はダラダラするって決めてたから!」  はあ……。師匠、もっとしっかりしてくださいよ。  子供っぽい師匠。そんな師匠に、今日も僕は振り回されっぱなし。  でも時折、大人っぽい師匠がそこにいて……。  師匠と弟子がおりなす不思議な物語。師匠が子供っぽい理由とは。そして、大人っぽい師匠の壮絶な過去とは。  表紙のイラストは大崎あむさん(https://twitter.com/oosakiamu)からいただきました。

生贄姫の末路 【完結】

松林ナオ
児童書・童話
水の豊かな国の王様と魔物は、はるか昔にある契約を交わしました。 それは、姫を生贄に捧げる代わりに国へ繁栄をもたらすというものです。 水の豊かな国には双子のお姫様がいます。 ひとりは金色の髪をもつ、活発で愛らしい金のお姫様。 もうひとりは銀色の髪をもつ、表情が乏しく物静かな銀のお姫様。 王様が生贄に選んだのは、銀のお姫様でした。

『異世界庭付き一戸建て』を相続した仲良し兄妹は今までの不幸にサヨナラしてスローライフを満喫できる、はず?

釈 余白(しやく)
児童書・童話
 毒親の父が不慮の事故で死亡したことで最後の肉親を失い、残された高校生の小村雷人(こむら らいと)と小学生の真琴(まこと)の兄妹が聞かされたのは、父が家を担保に金を借りていたという絶望の事実だった。慣れ親しんだ自宅から早々の退去が必要となった二人は家の中で金目の物を探す。  その結果見つかったのは、僅かな現金に空の預金通帳といくつかの宝飾品、そして家の権利書と見知らぬ文字で書かれた書類くらいだった。謎の書類には祖父のサインが記されていたが内容は読めず、頼みの綱は挟まれていた弁護士の名刺だけだ。  最後の希望とも言える名刺の電話番号へ連絡した二人は、やってきた弁護士から契約書の内容を聞かされ唖然とする。それは祖父が遺産として残した『異世界トラス』にある土地と建物を孫へ渡すというものだった。もちろん現地へ行かなければ遺産は受け取れないが。兄妹には他に頼れるものがなく、思い切って異世界へと赴き新生活をスタートさせるのだった。 連載時、HOT 1位ありがとうございました! その他、多数投稿しています。 こちらもよろしくお願いします! https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/398438394

こちら第二編集部!

月芝
児童書・童話
かつては全国でも有数の生徒数を誇ったマンモス小学校も、 いまや少子化の波に押されて、かつての勢いはない。 生徒数も全盛期の三分の一にまで減ってしまった。 そんな小学校には、ふたつの校内新聞がある。 第一編集部が発行している「パンダ通信」 第二編集部が発行している「エリマキトカゲ通信」 片やカジュアルでおしゃれで今時のトレンドにも敏感にて、 主に女生徒たちから絶大な支持をえている。 片や手堅い紙面造りが仇となり、保護者らと一部のマニアには 熱烈に支持されているものの、もはや風前の灯……。 編集部の規模、人員、発行部数も人気も雲泥の差にて、このままでは廃刊もありうる。 この危機的状況を打破すべく、第二編集部は起死回生の企画を立ち上げた。 それは―― 廃刊の危機を回避すべく、立ち上がった弱小第二編集部の面々。 これは企画を押しつけ……げふんげふん、もといまかされた女子部員たちが、 取材絡みでちょっと不思議なことを体験する物語である。

処理中です...