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反乱編

15話

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「私はここに誓います!
 神々の掟を守り、民の安寧に生涯を費やすと!」

 アリアンナが貴族士族を集めて、皇帝即位に伴う神々への誓いを口にしている。
 誰一人コトリとも音を立てず、アリアンナが言葉を発していない時は、痛いほどの静寂がその場を支配する。

 誰もがアリアンナと後見人であるファインズ公爵を恐れていた。
 皇帝エマヌエーレを弑逆しようとしたディエゴ、ジョルジャ、カーカム侯爵への討伐があまり激烈であったからだ。
 

 反乱に与したものは、一切の慈悲が与えられなかった。
 生きたままとられられた反乱者は、皇国が建国されて以来考案されてきたありとあらゆる拷問が、公開されて加えられた。
 そのおぞましさは言語を絶するモノだった。
 全ての貴族士族がそれに恐怖し、アリアンナ皇太女とファインズ公爵には絶対に逆らわないと心に誓っていた。

 それでも神々の御子クリスティアンは情け容赦しなかった。
 アリアンナは臣籍降下したとはいえ、皇族と言えるファインズ公爵の長女であり、皇帝エマヌエーレの養女となり、皇太女の地位についていた。
 それなのに、皇帝が血縁者でない者に位を譲る禅譲の儀式を行わせたのだ。

 ここで前皇室の歴史が閉じ、新たな皇室が始まると天下に宣言したのだ。
 エマヌエーレの愚かさが皇室の歴史を終わらせたことを天下に知らせたのだ。
 エマヌエーレは屈辱と諦めの混ざった複雑な表情で儀式に参加したが、参加しただけでは終わらなかった。

 禅譲台から降りた途端、今まで新皇帝の即位を祝うように晴天だった天気が一転俄かに黒雲が沸き上がり、天高くから激しい雷が落ちたのだ!
 雷はエマヌエーレだけを狙い撃ったのだ!
 誰もが息を飲んで黒焦げになったエマヌエーレの遺体を見つめた。

「よく見ろ!
 これが天下を混乱させた者の末路だ!
 天の神々が望まれた新皇帝アリアンナ陛下に逆らう者は、このように天罰が下ると心得よ!」

 太上皇になることが決まっているファインズ公爵が、戦場で鍛え上げた大音声で文武百官をはじめとした貴族を脅した。
 あまりの光景に、心にやましいところにある貴族は失禁してしまっていた。
 エマヌエーレを雷で撃った後の空は、また一転黒雲が消えていく。
 その途中で天からの光が新皇帝アリアンナだけに降り注いだ。
 その光景は神話の一幕のようだった。

 この筋書きは全て神々の御子クリスティアンによって書かれていた。
 エマヌエーレを殺す事も、そのために雷を呼ぶことも、全てクリスティアンが行い実行した事だった。
 クリスティアンは、アリアンナのためならどのような悪行でもためらわずにやると決めていた。
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