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第一章

第8話:単性生殖・愛子視点

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 タイミングをどうするのか、それが問題でした。
 何故なら魅了の力で支配下に置いている貴族士族国民が多過ぎたのです。
 腐れ外道の悪人だけを殺そうと思っていたのに、全貴族士族と王都の民の心の中と記憶を確認すると、ほとんど全員何らかの犯罪を犯していたのです。
 
「どうするよ、バイロン王太子。
 調べる人間全員が悪人だぞ」

「人間などそんなモノです、愛子様。
 犯した罪の軽重によって強制労働刑にするのか、戦いの間に殺すのか、私が決めさせていただきますので、愛子様は気になさらないでください」

 ずっと病院の無菌室で暮らしていた私は知らなかった事ですが、人間の本性は悪なのだそうです。
 善の心は自分を律して初めて育つという事です。
 衝撃的な事実にしばらく何もできなくなるくらいでした。

 まあそんな事はどうでもいいです。
 私にとって一番大切な事は、自分が生まれ変わるための器を完璧に創ることです。
 正常に子供を作ってしまうと魂が宿ってしまうかもしれません。
 だから単性生殖で子供を宿すことにしました。

 ただ普通の卵子を使うと精子が必要になるので、減数分裂させない卵子を創った。
 減数分裂した卵子を再融合させて複相にする事も可能ですが、それをやると安全なクローンではなく違う遺伝子を持ってしまいます。
 そんな事になったら、子供にローズマリーの魂を宿すことができません。

 別にローズマリーの魂を宿った子供に押し込もうなんて思っていません。
 失敗しないために、宿った子供にローズマリーの魂を入れてみるのです。
 せっかく創り出した単性生殖の子供に他の魂が宿ってしまって大変ですから。
 私とローズマリーでこの身体と子供の身体で魂の行き来をさせるのです。
 子供の身体を他の魂に乗っ取られない事、これが大切です。

「どう、ローズマリー、赤ちゃんの身体の居心地は」

(そうね、最初の頃よりは身体を動かせるようになったわ。
 それでも元の身体のようにうまく動かせないわね。
 それにふわふわとして変な感じよ)

「それは仕方がないわよ。
 羊水の中に浮かんでいるのだし、身体もできていないから」

(それは愛子に教えてもらって知っているけど、もどかしいわ。
 あ、上手く足を動かせたわ)

「ふっふっふっふっ、私にも分かったわ。
 今ローズマリーがお腹を蹴ったわ。
 でもほどほどにしておいてよ、ここまで時間をかけて育てて、流産なんて嫌よ」

(わかりました、ほどほどにしておきます。
 それよりも国の方が大丈夫なの)

「大丈夫よ、上手くいっているわ。
 魅了で支配下に置いた貴族士族国民は強制労働させたり屯田させているわ。
 彼らが自給自足する分だけでなく、余剰の食糧も確保できたわ」
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