賢帝は皇妃と実弟に謀殺され復讐を誓って逆行転生する

克全

文字の大きさ
19 / 32
第1章

第19話:魔導書

しおりを挟む
 ブラウン男爵の領都と居城はかなり破壊されていた。
 前のブラウン男爵が死に物狂いで抵抗したから、破壊はしかたがない。
 更に貴族最下級の男爵領都と居城は、高位貴族の領都や居城に比べると小さい。

 厳密に言えば士族でしかない騎士爵の館に比べれば、男爵の居城は大きい。
 だが、貴族の中ではささやかと言ってもいいくらい、狭く小さい居城だ。
 だから、口の悪い貴族は城ではなく砦と陰で言っている。

 とは言っても戦国乱世の平民にとったら、とても安全な場所だ。
 俺とフェルを愛してくれている母上にとったら、今手に入る最良の育児場だ。
 だから母上は、身体強化された怪力を惜しまずに使って城を修理している。

「ははうえ、まどうしょがほしいです」

 騎士と成られた母上は、これまで住んでいたボロ屋よりも広い部屋を与えられた。
 城なので普通の家よりは居住性が悪いが、ボロ屋よりはずっと過ごし易くなった。
 そんな部屋で家族団欒している時に、俺は母上に魔導書が欲しいと頼んだ。

「魔導書はとても貴重で高いのよ、とても買えないわ」

「だんしゃくかっかにたのんでください」

「無理よ、魔導書のような高い物、私のために買ってくださらないわ」

「いうだけ、いってみてください」

 俺は諦めずに何度も母上に頼んだ。
 本当は魔導書なんかなくても魔術は使える。
 俺だけでなく、母上に魔術を教え、使えるようにもできる。

 だがそんな事をしてしまったら、この時代の常識から外れてしまう。
 俺でも、本来の世界では、人から教えて貰って初めて魔術が使えるようになった。
 表立って魔術を使うなら、疑われないように、使えるようになる前提が必要だ。

「分かったわ、リチャがそこまっで言うなら、無理だと思うけど、頼んでみるわ」

 俺の御願いに根負けした母上が、男爵に頼んでみてくれた。

「そうか、分かった、下げ渡す訳にはいかないが、貸すくらいならよい。
 ただし、魔導書は貴重で高価な物だから、図書室から出す事は許さん。
 破ったり汚したりしたら罰を与えないといけなくなる。
 子供たちに読み聞かせても好いが、絶対に触らせるな。
 イリナが持って読み聞かせるのだ、好いな?」

「はい、わかりました、でも、私は字が読めなくて……」

「それでよく魔導書を借りたいと言ったな?」

「リチャードが借りて欲しいと何度も言ったので」

「リチャードが言ったのか、リチャードはオオカミと友達のほうだな?」

「はい、そうです」

「ならば妻に読み聞かせるように命じてやる」

「そんな、奥方様に読み聞かせていただくなんて、畏れ多いです」

「気にするな、余にも考えがあるのだ、ちゃんと読み聞かせてもらえ、いいな!」

「はい、御領主様がそう言ってくださるのでしたら、奥方様に読んでいただきます」

「私の事は男爵閣下と言え、イリナは平民の領民ではなく士族の家臣なのだ」

「はい、私の主君、ブラウン男爵閣下」

 思っていた通り、男爵は母上に魔導書を読む許可を与えた。
 平凡な村人だった母上が、突然とんでもない強さを発揮したのだ。
 領主としたら、他の才能も発現していないか確かめたくなる。

 同時にオオカミを手懐けられる俺の才能を確かめたいのだ。
 双子のフェルにも何か才能があれば良いと思っているのだ。
 だからこそ貴重で高価な魔導書を貸してくれる。

 ただ、貸してくれる魔導書は新たに買ったものではない。
 前のブラウン男爵が財産として持っていたものだ。
 だから比較的簡単に、直ぐに貸してもらえたのだ。

 それと、魔導書が貴重で高価なのは獣皮紙が高く手書きだからだ。
 持つだけで魔術が使えるようになるような、特別な力がある訳ではない。
 魔術の才能がある者が、読んで覚えて練習を重ねて初めて使えるようになる。

 それでも、魔導書を書けるのが100人に1人しかいない魔術士だから高い。
 下級の魔術士でも貴重な戦力なので、本を作る余裕がないから数が少ない。
 魔術師の弟子になって教わるか、独学で魔導書を読むしか魔術は使えない。

 それと、読んだからといって魔導書は消えてなくならない。
 何度でも使えるから、母子3人で使えるし、次の人にも渡せる。
 俺たちが覚えた後で、他の魔導書と交換する事も可能だ。

「ファイア」

 ブラウン男爵の妻に魔導書を読み聞かせてもらった母上は、1度で魔術を使った。
 理由は簡単だ、俺が母上の身体を通して魔術を使っていたからだ。
 母上の魔力臓器と魔力回路が物凄く発達しているからだ。

 それと、魔術に大切なのは呪文ではなく、明確なイメージだからだ。
 炎を飛ばすような攻撃魔術は、平民の母上にはイメージできない。
 攻撃魔術を見た事もない母上には想像もできない現象なのだ。

 だが単に炎を創り出すだけなら、家事をしていた母上なら明確にイメージできる。
 そして、俺が攻撃魔術をやって見せれば母上もイメージできて使えるようになる。

「本当に魔術を使えた!
 しかもたった1度読み聞かせただけで使えるようになるなんて!
 こんな才能のある人、聞いたことがありません!」

 男爵の妻がとても驚いているが、その通りだ。
 この世界で魔術を使えるようになるには、才能があるのが大前提だ。
 魔力器官が大きく丈夫で、魔力を貯められる者しか魔術を使えない。

 才能がある者でも、かなりの時間と努力を必要とする。
 意識して魔力器官に魔力を貯められるようにならないといけない。
 その魔力を、意識して魔力回路に流せるようにならないと魔術は使えない。

 俺がチャクラを解放した母上は常に力が満ちている。
 魔力器官も魔力回路も、俺が外から使って発達強化させてきた。
 本気で魔術を使う気になりさえすれば、使える条件は整っていたのだ。

「ふぁいあ」

 俺も男爵の妻に、火属性で最も下級の魔術を使って見せた。

「なんですって、たった3歳の子供が、1度読み聞かせただけでファイアを使うなんて信じられません!」

「ふぇるもじゅもんとなえる」

 俺は一緒に読み聞かせてもらっていたフェルディナンドに勧めた。

「ふぁいあ」
 
「なんですって、この子までファイアの魔術を使うなんて!
 リチャードの方は才能があるかもしれないと聞いていましたが!
 フェルディナンドまで才能があるとは思ってもいませんでした!」

 男爵の妻が俺の時以上に驚いている。
 領民、それも何の才能もなかった平民が1度で魔術を使ったのだ。
 それも、同時に3人も才能の有る者が現れたのだ、驚いて当然だ。

 俺は母上だけでなくフェルも身体強化し続けていた。
 フェルの身体を通して魔術を使い続けていた。

 だから母上と同じように魔力臓器も魔力回路も発達していて、いとも簡単に魔術が使えるようになっていた。

「危険だから、今日はもう魔術を使ってはいけません。
 わたくしは主人にこの事を伝えてきます。
 貴方たちは自分の部屋に戻って休みなさい」

「はい、奥方様」

「「はい」」

「ああ、イリナ、子供たちが勝手に魔術を使わないように気を付けなさい。
 城の中で火魔術を使ってしまったら、火事になってしまいます!」

 男爵の妻が母上に厳しく注意するが、これはしかたがない。
 夫たちが命懸けで手に入れた城を、子供の火遊びで燃やされる訳にはいかない。

「あ、分かりました、気を付けます」

 男爵の妻は、慌てて俺たちが魔術を使える事をブラウン男爵に伝えに行った。
 男爵家程度の家では、下級とはいえ魔術が使える家臣が召し抱えるのは無理だ。
 それも3人も召し抱えるのは絶対に不可能だ。

 男爵程度の戦力しかない家だと、領内に魔術士が生まれても、もっと財力も武力も権力もある上級貴族が取り上げてしまうのが普通だ。

 無理矢理取り上げなくても、高い報酬を提示して引き抜く。
 だがまだ魔術を使えると周りに知られていない俺たちなら、抱え続けられる。
 更に今は下級の魔術しか使えないが、将来も下級とは限らない。

 魔術が使えるようになったばかりだから、どれだけ才能があるか分からない。
 魔術を使える事を秘匿するのか表に出して攻勢に出るのか、方針を決めないといけないから、ブラウン男爵の妻が慌てて報告に行くのも当然だ。

 3人とも上級魔術師になれば、ブラウン男爵の建国も夢ではなくなる。
 伯国や侯国程度の小国に留まるだろうが、建国王も夢ではない。
 俺たちの才能が中級程度だったとしても、伯爵家程度の領地は切り取れるだろう。

 思っていた通り、ブラウン男爵は城にあった魔導書を全部読み聞かせてくれた。
 家族を総動員して魔導書を写本し、その写本と新しい魔導書を交換した。
 そのお陰で色々な魔術を表に出して使えるようになった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

転落貴族〜千年に1人の逸材と言われた男が最底辺から成り上がる〜

ぽいづん
ファンタジー
ガレオン帝国の名門貴族ノーベル家の長男にして、容姿端麗、眉目秀麗、剣術は向かうところ敵なし。 アレクシア・ノーベル、人は彼のことを千年に1人の逸材と評し、第3皇女クレアとの婚約も決まり、順風満帆な日々だった 騎士学校の最後の剣術大会、彼は賭けに負け、1年間の期限付きで、辺境の国、ザナビル王国の最底辺ギルドのヘブンズワークスに入らざるおえなくなる。 今までの貴族の生活と正反対の日々を過ごし1年が経った。 しかし、この賭けは罠であった。 アレクシアは、生涯をこのギルドで過ごさなければいけないということを知る。 賭けが罠であり、仕組まれたものと知ったアレクシアは黒幕が誰か確信を得る。 アレクシアは最底辺からの成り上がりを決意し、復讐を誓うのであった。 小説家になろうにも投稿しています。 なろう版改稿中です。改稿終了後こちらも改稿します。

処刑された勇者は二度目の人生で復讐を選ぶ

シロタカズキ
ファンタジー
──勇者は、すべてを裏切られ、処刑された。  だが、彼の魂は復讐の炎と共に蘇る──。 かつて魔王を討ち、人類を救った勇者 レオン・アルヴァレス。 だが、彼を待っていたのは称賛ではなく、 王族・貴族・元仲間たちによる裏切りと処刑だった。 「力が強すぎる」という理由で異端者として断罪され、広場で公開処刑されるレオン。 国民は歓喜し、王は満足げに笑い、かつての仲間たちは目を背ける。 そして、勇者は 死んだ。 ──はずだった。 十年後。 王国は繁栄の影で腐敗し、裏切り者たちは安穏とした日々を送っていた。 しかし、そんな彼らの前に死んだはずの勇者が現れる。 「よくもまあ、のうのうと生きていられたものだな」 これは、英雄ではなくなった男の復讐譚。 彼を裏切った王族、貴族、そしてかつての仲間たちを絶望の淵に叩き落とすための第二の人生が、いま始まる──。

転生したら最強種の竜人かよ~目立ちたくないので種族隠して学院へ通います~

ゆる弥
ファンタジー
強さをひた隠しにして学院の入学試験を受けるが、強すぎて隠し通せておらず、逆に目立ってしまう。 コイツは何かがおかしい。 本人は気が付かず隠しているが、周りは気付き始める。 目立ちたくないのに国の最高戦力に祭り上げられてしまう可哀想な男の話。

勇者パーティーにダンジョンで生贄にされました。これで上位神から押し付けられた、勇者の育成支援から解放される。

克全
ファンタジー
エドゥアルには大嫌いな役目、神与スキル『勇者の育成者』があった。力だけあって知能が低い下級神が、勇者にふさわしくない者に『勇者』スキルを与えてしまったせいで、上級神から与えられてしまったのだ。前世の知識と、それを利用して鍛えた絶大な魔力のあるエドゥアルだったが、神与スキル『勇者の育成者』には逆らえず、嫌々勇者を教育していた。だが、勇者ガブリエルは上級神の想像を絶する愚者だった。事もあろうに、エドゥアルを含む300人もの人間を生贄にして、ダンジョンの階層主を斃そうとした。流石にこのような下劣な行いをしては『勇者』スキルは消滅してしまう。対象となった勇者がいなくなれば『勇者の育成者』スキルも消滅する。自由を手に入れたエドゥアルは好き勝手に生きることにしたのだった。

解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る

早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」 解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。 そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。 彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。 (1話2500字程度、1章まで完結保証です)

攻撃魔法を使えないヒーラーの俺が、回復魔法で最強でした。 -俺は何度でも救うとそう決めた-【[完]】

水無月いい人(minazuki)
ファンタジー
【HOTランキング一位獲得作品】 【一次選考通過作品】 ---  とある剣と魔法の世界で、  ある男女の間に赤ん坊が生まれた。  名をアスフィ・シーネット。  才能が無ければ魔法が使えない、そんな世界で彼は運良く魔法の才能を持って産まれた。  だが、使用できるのは攻撃魔法ではなく回復魔法のみだった。  攻撃魔法を一切使えない彼は、冒険者達からも距離を置かれていた。 彼は誓う、俺は回復魔法で最強になると。  --------- もし気に入っていただけたら、ブクマや評価、感想をいただけると大変励みになります! #ヒラ俺 この度ついに完結しました。 1年以上書き続けた作品です。 途中迷走してました……。 今までありがとうございました! --- 追記:2025/09/20 再編、あるいは続編を書くか迷ってます。 もし気になる方は、 コメント頂けるとするかもしれないです。

アルフレッドは平穏に過ごしたい 〜追放されたけど謎のスキル【合成】で生き抜く〜

芍薬甘草湯
ファンタジー
アルフレッドは貴族の令息であったが天から与えられたスキルと家風の違いで追放される。平民となり冒険者となったが、生活するために竜騎士隊でアルバイトをすることに。 ふとした事でスキルが発動。  使えないスキルではない事に気付いたアルフレッドは様々なものを合成しながら密かに活躍していく。 ⭐︎注意⭐︎ 女性が多く出てくるため、ハーレム要素がほんの少しあります。特に苦手な方はご遠慮ください。

無限に進化を続けて最強に至る

お寿司食べたい
ファンタジー
突然、居眠り運転をしているトラックに轢かれて異世界に転生した春風 宝。そこで女神からもらった特典は「倒したモンスターの力を奪って無限に強くなる」だった。 ※よくある転生ものです。良ければ読んでください。 不定期更新 初作 小説家になろうでも投稿してます。 文章力がないので悪しからず。優しくアドバイスしてください。 改稿したので、しばらくしたら消します

処理中です...