賢帝は皇妃と実弟に謀殺され復讐を誓って逆行転生する

克全

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第1章

第26話:殺意

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「どうしてイリナを殺さないの、イリナを殺したら貴男が領主に成れるのよ!」

 クソ親父と性悪女を見張っているネコとネズミ、イモリが伝えてくれる。
 どんな悪事を企んでいるのか、前もって全部伝えてくれる。

「ああ、何を言ってる、馬鹿かお前?
 イリナを殺しても、俺が騎士に成れるわけないだろう」

「どうしてよ、貴男はイリナの夫でしょう!
 当主が死んだら子供や妻が跡を継ぐのが常識ででしょう!」

「けっ、それは主君であるお貴族様に認められている場合だけだ!
 ブラウン男爵が俺の事を認めていたら、こんな所で安酒を飲んでいない。
 領主館で上等の酒を飲んでいるよ。
 全く信用されていないから、領主館に近づく事も禁じられているんだ。
 イリナを殺したら、真っ先に俺とお前が殺されて終りだよ!」

 クソ親父は、俺が覚えさせたセリフを性悪女に吐く。
 クソ親父は馬鹿なので、この程度の事も傀儡魔術を使わないと覚えない。
 問題は、このセリフを聞いた性悪女がどうするかだ。
 
「何て情けない、それでも投擲と狩りの名手なの?!
 もっと働いて信用を得たらどうなの!?」

 性悪女が自分の事を棚に上げてクソ親父を非難する。
 クソ親父に命懸けで働けというのなら、お前も真っ当な方法で働け!
 母上を最優先に考えるなら、俺個人の恨みなど忘れて殺してしまうべきか?

「けっ、誰が好き好んで、男爵の御機嫌をとるために戦うかよ!
 女と酒の為ならやるが、騎士に成るために戦う訳がないだろう!
 殺されるかもしれない戦いになんて、本当は行きたくないんだ!
 騎士に成ったらさらに危険な戦いに駆り出されるんだぞ!
 騎士でも兵士でも、狩りの獲物を半分も男爵に納めないといけないんだ!
 だったら兵士のままで十分だ、いや、平民のままでいた方が安全なんだよ!」

 クソ親父が身勝手な事を言う性悪女を激しく罵った。
 このままクソ親父に性悪女を殺させてしまうか?
 
「ねぇ、そんな覇気のない事を言わないで、騎士に成りましょうよ。
 騎士に成ったら、さっき言っていたような、上等の酒が飲めるわよ。
 女だって年老いて痩せこけた寡婦じゃなく、私のような良い女が抱けるわよ」

 クソ親父に捨てられるかもしれないと思ったのだろう。
 性悪女が急に猫撫で声でおもねりだした、吐き気がする!

「はぁ、酒なんて安くても高くても酔えば同じだ。
 年老いて痩せこけた寡婦より好い女だと、みんなお前と同じ好い女だろうが?」

「きぃいいいいい、何を言っているのよ!
 美しい私が寡婦たちと同じな訳ないでしょう!
 少しでも上等の酒を飲んで、好い女を抱きたいのが男でしょう!」

「けっ、好きに言ってろ、どうしてもイリナを殺したいのならお前がやれ。
 まあ、お前にやれたらの話だけどな!」

「きぃいいいいい、いいわよ、やってやるわよ!
 私が声をかけたら、幾らでも男が集まってくるのよ!
 殺してと言ったら、よろこんで殺してくれるのよ!」

 性悪女は半分狂っているのか、それとも単なるヒステリーか?
 自分が二目と見れない醜悪な顔になって、クソ親父以外の男が近寄って来ない事を、どうしても認められないのか?

 性悪女はその後もクソ親父に母上を殺せとせっついた。
 だが、クソ親父は俺が操っているので、全く相手にせず酒を飲み続けた。
 最終的には泥酔したクソ親父に諦めて、家から出て行った。

 出て行った性悪女は、思っていた通り敵の密偵と接触した。
 クソ親父と愛人たちの住む隔離区画から、元の住民たちが住む区画に移動して、レンドルシャム子爵が送り込んだ密偵と接触した。

「次にイリナが村にやってくるのは5日後よ。
 本当に今度こそイリナを拉致するんでしょうね?
 拉致が成功したら、私の顔を上級治癒魔術で治してくれるんでしょうね!」

「くどいぞ、平民の売女が図に乗るな!
 既に破格の情報料を恵んでやっている、これ以上欲張るなら殺すぞ!」

「キィイイイイ、なんですって、馬鹿にしないでよ!
 そんな事を言うなら、もう情報は売らないわよ?
 イリナの情報を買いたいという奴は幾らでもいるのよ!
 この顔を治す条件を飲んだ奴に売るわよ?
 イリナがこの村に来ないように、貴男の事を売ってもいいのよ?
 そうなれば貴男は生きて領地から出られないわよ、分かっている?!」

「……だったらお前が死ね、ブス!」

 レンドルシャム子爵の密偵が性悪女に毒の短剣を突き立てた。
 密偵であると同時に凄腕の暗殺者なのだろう、心臓をひと突きして即死させた。

 素人や変質者のように、愉悦の為に苦しめるような事はなかった。
 血痕が残らないように、刺した短剣を性悪女の身体から抜かなかった。

 凄腕の密偵は性悪女を肩に担いで村から出て行った。
 森の肉食獣に喰わすか、地に埋めて証拠を隠滅する気だろう。
 愚かな奴だ、自分の足で処刑場にやってきた。
 
「「「「「ウォオオオオオン」」」」」

 眷属のオオカミが密偵を襲って喰い殺してくれた。
 骨一片も残さずに証拠を隠滅してくれた。
 命じたら、殺された性悪女も骨一片も残さずに喰ってくれる。

 だがそれでは俺の計画が狂ってしまう。
 母上が味わった以上の苦しみを与えるという計画が狂ってしまう。

 多少迷ったが、こんな簡単に、楽に死なせるほど、俺は甘くない。
 母上の安全が確保できるのなら、母上が苦しまれた分だけは絶対に味あわせる!

 「リサシテイション」

 俺は転移魔術でその場に行き、性悪女を蘇生させた。
 母上を苦しめ続けた性悪女を簡単に死なせない、楽には死なせない。
 何度も蘇生させて苦しめ続ける。

 心優しい母上が知ったら止めるだろうが、知らせなければ止められない。
 母上にはできるだけこの世の嫌な所を見させたくない、悪事は隠してやる。
 どうしても避けられない事もあるが、できるだけ少なくしたい。

「私は殺されたはず、何で生きてるの?
 あ、私は特別なのね、死んでも生き返られる特別な人間なのよ。
 だったらあんなクソ男に頼らずに、私の手でイリナを殺してやる!」

 愚かな性悪女は、何でも自分の都合の良いように解釈する。
 自分は特別な人間だと思い込んで、母上を殺そうとした。
 村と領主館を分けている防壁を乗り越えて、母上を殺そうとした。

 「「「「「ウォオオオオオン」」」」」

 人間が防壁を乗り越えて、俺たちの縄張りである領主館に入り込む。
 俺の眷属であるオオカミたちが許す訳がない。
 
「ギャアアアアア、いたい、いたい、いたい、止めて、食べないで!」

 俺の恨み、怒りが伝わっている眷属のオオカミたちは、性悪女に容赦しない。
 生きたまま腕や足を喰い千切り、性悪女の目の前で噛み砕いて飲み込む。
 性悪女にまだ息のある状態で、腹を喰い破って内臓を食べる。

 生きて内臓を喰られる激痛は想像を絶するモノがある。
 泣いて命乞いする性悪女を徐々に食っていく。
 性悪女が絶命したのを確認して蘇生させた。

 「リサシテイション」

 性悪女を村の防壁外で蘇生させたが、そのまま見逃す気はない。
 眷属のオオカミたちに言い聞かせて、意識を回復した所を再度襲わせた。
 
 もう2度と防壁を乗り越えて母上を殺そうとしないように、厳しい罰を与えた。
 あれだけ痛い思いをしたら、生き返られると思っても防壁を乗り越えない。
 生きながら体を喰われるというのは、それだけ痛く苦しいのだ。

 治るのに時間がかかってずっと痛むように、両膝を噛み砕かせた。
 それでも性悪女は妬み嫉みを忘れず、母上を狙い続けるだろう。
 俺が危機感を持ってしまうくらい性悪女は執念深い。

「次にイリナが村にやってくるのは8日後よ。
 なにをクズグズしているの、本当にイリナを拉致するんでしょうね?
 拉致が成功したら、私の顔を上級治癒魔術で治してくれるんでしょうね!」

 俺が思っていた通り、蛇よりも執念深い性悪女は、ブリル村に残っているガーヴァー伯爵の密偵に、母上がブリル村に通う日程を売った。

 それと、どのような手段を使ってでも酸に焼かれた顔を治したいようだ。
 性悪女の容姿に対する執念は、俺が恐怖を感じるくらい凄い。
 母上を完全に守りたいのなら、復讐計画を修正すべきかもしれない。

「ああ、約束しよう、ただし、イリナの拉致に協力した場合だけだ。
 イリナの拉致に協力して成功した場合だけ顔を治してやる、協力するか?」

「やるわ、顔が元に戻るのなら何だってするわ!」
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