賢帝は皇妃と実弟に謀殺され復讐を誓って逆行転生する

克全

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第1章

第25話:妊活と異母弟

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「なかなか妊娠しないな」

 俺とフェルが4歳になってしばらくしてブラウン男爵が言った。
 男爵一家を見張らせている眷属たちが、家族会議の内容を伝えてくれる。

 母上とクソ親父に3人目の子供を作らせて、魔術が使える子供が生まれるか検証したいのに、一向に妊娠しないから苛立っているようだ。

「こればかりは運もありますから、焦っても仕方ありませんわ」

 ブラウン男爵の妻が慰める。

「子供を作らないようにしているのではないな?」

 ブラウン男爵は疑い深くなっているようだ。
 ガーヴァー伯爵とレンドルシャム子爵の両方を敵に回しているのだ。
 精神的に追い込まれ、性格が歪むのもしかたがない。

「それはありません、イリナから子供が欲しいと相談されています」

 俺たち以外の子供を欲しいと男爵の妻に相談する母上。
 複雑な心境だ、本心は嫌だが、頭では次の子供を願う母上の気持ちは理解できる。

 全ての危険から母上を守るためには、眷属に見守らせる必要がある。
 盗み聞きするのは良心が痛むが、母上を守りきるためには必要だ。

「……そうか、だったら本当に運が悪いだけか……
 子供を作らせたいとはいえ、他の男の子供では意味がないからな」

 母上とクソ親父が愛し合うのは、吐き気がするくらい嫌だ。
 同時に、母上が他の男を愛するのを想像しても、吐き気が込み上げる。

 俺の本当の世界では、苦しみ抜いて亡くなられた母上を思い出しては、誠実で心優しい男性と再婚して欲しかったと言っていたが、内心は違っていたと思い知った。

 心の奥底では、自分だけを愛して欲しいと願っていたのだ。
 自分の浅ましさが分かって吐き気がした。
 内心の欲望は抑えて、母上に幸せになっていただく、絶対に!

「では兄上、コルスに別の女と子供を作らせてはどうです?」

 領主の長弟が余計な事を言う。
 クソ親父の子供として生まれるなんて、不幸でしかない。

「効率で言えばそれが1番良いだろうが、普通の女を抱かす訳にはいかない。
 こちらから許可を与えるなんて、絶対にできんぞ。
 コルスの言動を考えると、許可を出したら夫や恋人のいる女でも平気で手を出す。
 そんな事になったら私への忠誠心が低くなる」

「大兄上の言われる通りです、隔離しましょう。
 良民とは関われないように、どうでもよい連中だけを集めて隔離しましょう。
 死んでもいい連中を隔離して、そこで子供を作らせましょう」

「そうですわね、私もコルスのような男には虫唾が走ります。
 ブリル村はイリナの領地にしたのです、そこにコルスを隔離いたしましょう。
 コルスが手を出している売春婦や寡婦と一緒に隔離しましょう」

「おい、おい、イリナを危険に晒さないのが大前提だろう」

「それは分かっていますが、リチャのオオカミたちが守っているのでしょう?」

「そうですよ、大兄上、領地に送られてきた密偵を全員殺しているのでしょう?」

「兄上、密偵の何人かを泳がしているというのは本当ですか?」

「確かにオオカミたちの守りは完璧だ。
 殺す密偵と泳がす密偵を分けても、完璧に守ってくれている。
 とはいえ、無駄に危険を増やす気はない。
 特に心配なのはコルスの愛人だ、性根が悪すぎて何をするか分からん」

「そうですわね、あのような性格の女は、嫉妬で何をするか分からないわ。
 誰かを唆して、イリナを襲わせたり毒を盛ったりするでしょうね」

 男爵の妻は同じ女だから、性悪女の本性を良く分かっている。

「うっわ、そんな女をよく愛人にするな!」

 3兄弟の仲では比較的甘い考えの次弟が引くように言う。

「以前は、性根と違って見た目だけは美しかったからな。
 虫の酸で二目と見れない醜悪な顔になったが、コルスはそのまま愛人にしている」

「本当ですか、小兄上、それだけ聞いているとコルスも良い奴に思えますね」

「いや、コルスは女なら誰でも良いのだろう。
 年老いている寡婦も瘦せ衰えた寡婦も関係なく抱いている。
 こう言っては何だが、イリナも御世辞にも美しいとは言えない」

 ブラウン男爵の長弟の言う通りだが、母上を悪く言うのは許せん!
 クソ親父が、希望する寡婦全てに手を出しているのは、俺がやらせている。

 最初は比較的美しい寡婦を本能のまま抱いていた。
 俺が操らなければ、どれほど困っている寡婦でも、好みじゃないと抱かない。

 だが今は、生活が苦しい寡婦で、コルスに抱かれても好いという人を、全員抱くように傀儡魔術で命じている。

 もの凄く不本意だが、クソ親爺が優秀な猟師に成っている。
 母上に幸せになってもらいたくて、クソ親父を鍛える事になり、俺が考えもしていなかった優秀な投擲兵兼猟師となっている。

 計算外に優秀になったクソ親父が狩る鳥獣。
 それを酒や売春婦だけに使わせるのは、不完全な良心が許さなかった。
 だから狩りの獲物を、生活の苦しい寡婦に与えるように命じたのだ。

「ねえ、貴男、わたくしもコルスは大嫌いですが、役に立っている事もあります。
 あの女好きのお陰で、寡婦とその子供たちが生きていけています。
 いっそ領内全ての寡婦をブリル村に集められてはいかがです?」

 男爵の妻がとんでもない事を言いだした。

「幾らコルスでも領内全ての寡婦を抱くのは無理だろう?」

「ですが兄上、寡婦だけを集めた村にコルスを閉じ込めたら、最初の問題が無くなりますよ」

「そうですよ、大兄上、領民の忠誠心を下げる事無く子供を作らせられますよ。
 コルスが手を出さない寡婦は、イリナに仕えさせましょう。
 イリナはもちろん、子供たちにも人を使う事を覚えさせましょう」

「そうだな、イリナには騎士に相応しい言動を学ばせるべきだな。
 それと、イリナの妊娠は運に任せるしかないが、コルスの子供は余の決断1つで幾らでも作らせられるな……」

「貴男、寡婦たちは生活の心配があるから妊娠しないようにしているのでしょう。
 ですが、ブラウン男爵家は領民を増やして生産力と兵力を増やしたいのです。
 貴男が食糧を与えてでも、寡婦に子供を生ませるべき状況です。
 ですがコルスの子供なら、狩りの名手であるコルスに育てさせられます。
 コルスが嫌がっても、心優しいイリナが食糧を分け与えるでしょう」

「そうだな、イリナの優しさを利用するようで少し胸が痛むが、ブラウン男爵家にとっては利益しかないやり方だ、断じて行うしかないな。
 基本的にはそれで良いが、イリナの安全はどう確保する?
 特に性悪なコルスの愛人をどうするのだ?」

「妊娠し易い日を選んでブリル村に通わすのは、これまで通りで好いと思いますわ」

「姉上の言われる通りです、通いを続けてもらいましょう。
 ですが、性悪女の嫉妬が心配です、これまで以上の護衛を付けましょう」

「それが良いですね、小兄上の言う通り護衛を増やしましょう。
 オオカミは増やせるのですね、大兄上?」

「リチャードの話では、餌さえ確保できればオオカミの数を増やせるそうだ。
 今でも250頭に増えているらしい。
 その内の50頭を常にイリナにつけるようにする」

「そうだ、兄上、少々人手と費用がかかりますが、ブリル村を拡張しましょう。
 騎士の館に相応しい、砦並の領主館を増設しましょう。
 イリナが領主館に居ない時は、オオカミたちだけに守らせましょう。
 村を区切って、ずっと住んでいる住民と移住する寡婦たちを分けましょう。
 コルスはイリナが村に通う時だけ領主館に入れるようにすれば、他の人間が誰も入れない万全の砦になりませんか?」

「そうだな、館の敷地に入る人間は全て喰い殺せと言っておけば、性悪女でも何もできないな、好い策だ、直ぐに村の拡張を始めさせよう」

「大兄上、村を拡張するなら、イリナの怪力は利用すべきです。
 イリナの怪力は100人力どころか1000人力ですよ。
 イリナに手伝ってもらわないと、費用も日数もかかり過ぎます」

「工事中に敵の密偵に狙われるのが心配だが、やるしかないな。
 2人にはオオカミの餌を確保してもらう、いいか?」

「任せてください、領民と兵士を動員してできるだけ多くの餌を確保します」
「僕も領民と兵士を使って餌を確保します」

「頼んだぞ」

 ブラウン男爵家の方針を事前に知ることができた。
 母上に危険が及ぶなら、傀儡魔術で操ってでも邪魔した。
 だが、オオカミたちの護衛があるなら母上に危険が及ぶ事はない。

 いや、オオカミだけに頼っている訳ではない。
 オオカミ以外の毒蛇や猛禽たちにも母上を護らせている。
 必要以上に母上に近づく奴は、問答無用で毒牙の餌食だ!
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