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56話

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 魔力検査は粛々と受け入れられた。
 拒否したい者も一定数いるだろうが、拒否はできなかった。
 当主と後継者が爵位の魔力基準を満たしている家は、お墨付きがもらえるので大賛成していた。
 現在の爵位以上の魔力を持つ当主や後継者がいる家は、陞爵される好機だと積極的に魔力検査に協力していた。

 後継者が聖女マルティナと一緒に自滅した、トーフィッケン侯爵家、マンフォード伯爵家、グレンヴィル伯爵家は、王家同様に爵位を維持できる後継者がおらず、一族内にいる魔力持ちにあわせて降爵を受け入れるか、爵位に相応しい魔力持ちを養子に迎えるしか道はなかった。

 それと同時に、最初から魔力を偽って爵位を継承していた当主はいる貴族は、それ相応の処罰を受けて降爵された。
 同時に今現在の爵位以上の魔力を持つ者は、特に当主や後継者以外は、養子候補として王家が名簿を作って公表していた。
 だがそれでも、王族に相応しい魔力持ちは現れなかった。

「ルシア嬢。
 まだ魔力検査を受けないのか?」

「まだよ。
 できれば私達以外の王族級が現れてからよ。
 できるだけ目立ちたくないのよ。
 特にネイは安全圏に置いておきたいの」

 ウィリアムの質問に、はっきりと答えた。
 これだけは絶対に譲れない一線です。
 でも正直期待薄でしょう。
 現状公爵家と侯爵家の検査はほぼ終わっています。
 王家は貴族達の魔力検査を始める前に王族の検査を終えていて、王族級がいない事を確認したはずですから、たぶん私達以外の王族級はいないのでしょう。

「ならば俺達もまだ受けない方がいいな。
 どうせ王族級に判定されるんだ。
 急いで養子の口を探す必要もない。
 あと数日はこのままでいいな」

「そうお願いするわ。
 ウィリアムとイライアスの後で私が受けて、最後にネイに受けてもらうわ。
 そのために父上に根回しをお願いしたのよ」

 ルシアの言う通り、サンディランズ公爵は宰相の地位を利用して、自分達は最後に検査を受けるようにしていた。
 王家が絶えそうで焦っている国王には、公爵家の跡継ぎが絶えると困るという理由で、強く最期の検査を望んだのだ。

 確かに後継者を予定していたディビッドが死に、サンディランズ公爵やルシアが王族級の魔力を持つと広く知られてしまうと、その後で元の地位が低い者から王族級の魔力持ちが現れても、サンディランズ公爵やルシアが国王や女王に選ばれてしまう。
 そんなことになったら、サンディランズ公爵家が無くなってしまう。
 サンディランズ公爵もそれだけは絶対に認められなかった。
 歴史あるサンディランズ公爵家をなくすことだけは認められなかった。
 だが同時に、家督争いをした弟やその子孫に、サンディランズ公爵家を継がせたくなかった。
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