四代目 豊臣秀勝

克全

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第一章

鳥取城の干殺し

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 一度織田家に降伏した山名豊国だったが、毛利の攻撃を受けて再び毛利に降伏した。
 秀吉は因幡侵攻計画を修正し、生野銀山の資金を活用し、若狭の商人に因幡の米や麦を買い占めさせた。
 山名豊国に代わって、牛尾春重が派遣された。
 鳥取城主となった毛利の勇将・牛尾春重だったが、桐山城の攻防で深手を負い、領地に帰還してしまった。
 山名豊国は再び織田家に降伏しようとしたが、織田に送った密使が、市場城主の毛利豊元の家臣達に斬り殺され、事前に露見してしまった。
 降伏を望んだ主君の山名豊国を、森下道誉と中村春続を代表する山名家家臣団は放逐してしまう。
 そして毛利一族の吉川元春に、城主を派遣してくれるように願い出た。
 吉川元春は、石見吉川家から文武両道に優れた吉川経家を派遣した。
 吉川経家は、山名家家臣団に決死の覚悟を示すため、自らの首桶を用意して鳥取城に入城した。
 鳥取城の兵力は、山名家の家臣団が千兵。
 援軍に入った吉川経家の家臣団が八百兵。
 周囲から集まった農民兵が二千兵であった。
 経家は直ぐに防衛線の構築にかかったが、問題は兵糧だった。
 城に蓄えられていた兵糧は、山名家家臣団だけの三ヶ月分しかなかったのだ。
 秀吉の謀略に引っかかった山名家家臣団は、事もあろうに兵糧を売り払ってしまっていたのだ。
 この状態で吉川家に援軍を願い出るのだから、恥知らずにも程がある。
 そもそも自らの利権を保持する為に、主君・山名豊国を放逐するくらいだから、恥知らずなのは分かっていたことだ。
 だがそんな山名家家臣団に利用される、吉川経家と家臣団は哀れであった。
 天正九年(一五八一年)六月に、秀吉は若狭の商人に行わせた食糧の買い占めが成功したと判断し、二万の軍勢を率いて因幡に侵攻した。
 七月には鳥取城を包囲して、周囲に深さ八メートルの空堀を、全長十二キロメートルにわたって築いた。
 更に塀や柵を幾重にも設けて櫓を建てた。
 夜間も入念に監視させたうえで、河川での通交も遮断し、兵糧の運び込みも、城兵の逃亡も防いだ。
 そのうえで、昼も夜も鐘や太鼓を叩き、鬨の声をあげさせた上に、不意に鉄砲や火矢を放つなどして、城内の不安を煽り立てた。
 それに加えて、多数の商人を鳥取城外に集めて市を開かせて、籠城兵が羨む衣食にかかわるものを売買させて、精神的追い込んだ。
 止めに芸人を呼び集めて、盛大に歌舞音曲をおこなうなどして、籠城兵の厭戦気分を引き出した。
 毛利も手をこまねいてみていたわけではない。
 陸路と海路を使って、必死で兵糧を運び込もうとした。
 だがその悉くが失敗に終わってしまった。
 九月十六日に、鳥取城に兵糧を送る海路の要地、因幡千代川での海戦で、毛利水軍は決定的な敗北を喫してしまった。
 細川藤孝の家臣・松井康之が、毛利家の家臣・鹿足元忠を斬り殺したことで、鳥取城は完全に糧道を絶たれた。
 籠城から二カ月経って、鳥取城では水・草木はもちろん、城内の犬・猫・鼠まで食い尽くした。
 三カ月目には餓死者が続出し、死んだ味方の遺体まで奪い合い、貪り喰う修羅場となった。
 子が親を食べ、弟が兄を貪り喰うさまは、地獄絵図と言えた。
 それでも何とか四カ月籠城したものの、遂に城内で降伏の話が出た。
 吉川経家は、森下道誉と中村春続と話し合い、城兵の助命を条件に降伏することを決意した。
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