四代目 豊臣秀勝

克全

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第二章

双頭侵攻

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 二軍に別れた与一郎と長秀は、それぞれが確実に国衆地侍を従え、戦略目標を目指した。
 長秀は南信濃を遠江に向けて侵攻し、信濃田中城の保科正直を調略したのを契機に、南信濃衆を次々と調略した。
 調略した南信濃衆を先方として、堅実に遠江に向けて侵攻。
 毛利秀頼が追われた飯田城を取り返した秀長は、改めて毛利秀頼に信濃伊那郡十万石と飯田城を与える朱印状を渡した。
 長秀軍は吉岡城に入り、遠江に攻め込む構えを見せて、尾張にいる徳川家康に圧迫をかけた。
 一方甲斐に占め込んだ与一郎は、秀吉から武田三郎信清に一万石と勝山城を与えると言う許可をもらっていたので、それを言い訳に武田遺臣が降伏臣従し易いようにした。
 その結果多くの武田遺臣が降伏臣従してきたが、望月兵大夫による調略を優先して後回しにしていた、信濃上田方面の根津昌綱が頑強に抵抗してきた。
 根津昌綱は後北条に味方し、本領と根津城に加え、甲斐国手塚千貫と清野一跡二千七百貫の広大な領地を与えられていた。
 更に今後の功名次第で、海野領より四千貫の領地を与えると、北条氏政より約束されていた。
 だが望月兵大夫には、そのような事を認める権限はなかったし、与一郎も認める気がなかったので、後北条の援軍を当てにして望月兵大夫の調略を拒否した。
 出来るだけ人的損耗を避ける与一郎ではあったが、後北条の威を借る根津昌綱を許すわけにはいかなかった。
 夜盗衆・伊賀衆・甲賀衆・信濃衆。武田遺臣を駆使して、根津昌綱の与力同心は勿論、家臣にも調略を仕掛けた。
 調略が成功するように、武力的威圧をかけようと、降伏してきた甲斐衆を先方に、根津昌綱が占拠している小諸城を四万二千兵の大軍で囲んだ。
 これに恐怖した根津昌綱の雑兵が逃げ出した。
 半農半武の地侍は田畑に戻った。
 後北条の援軍が当てに出来ず、このままでは滅ぼされると考えた根津信政・禰津常安・真田昌幸・望月信雅などの一族は、必死の説得を試みた。
 雪が降り始め、後北条の援軍が峠を越えられない時期となって、ようやく根津昌綱は諦め降伏臣従に応じた。
 だが与一郎は根津昌綱を信濃や甲斐に残すのは危険と判断した。
 雪で完全に交通が遮断される前に、根津昌綱などの疑わしい国衆地侍を岐阜城に送ることにした。
 高山右近・中川清秀・黒田官兵衛の九千兵に、甲斐信濃の国衆地侍の人質を護衛させ、美濃岐阜城に送った。
 与一郎と長秀が甲斐信濃を平定した時には、雪が激しくなり身動きが出来ない状況となっていた。
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