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第一章
第1話:異世界転生しました
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教会歴五五九年一月一日
「オンギャア、オンギャア、オンギャア、オンギャア」
移動式住居の仕切られた一角から、元気の赤ちゃんの声が聞こえてきた。
「氏族長、おめでとうございます、立派な男の子です」
次いでお産に慣れた中年女性の声が聞こえてきた。
「おお、めでたい、これで我が氏族も安泰だ」
若き氏族長、フィリッポが心から喜びの声をあげた。
歴戦の父や数多くの有力氏族戦士を、イタリアエルフ王国との戦いで失ったフィリッポには、跡継ぎとなる息子の誕生は何よりもうれしい事だった。
国の古い定めでは、王や氏族長の後継者は戦闘力で選ばれる。
現国王や現氏族長の長男だから優先されるわけではない。
ただ全く血統が否定されているわけでもなく、本家筋の年長実力者から選ばれるのが慣例だった。
だが、現国王アウドインは慣例通りには選ばれていない。
先代王ワルタリを弑逆して王位を簒奪していた。
そのワルタリも、父親が息子に王位を継がせたくて、本来なら次期国王になるはずだった、甥のリシウルフを追放して王位につけているのだ。
ゲピドエルフ王国との長年に渡る厳しい戦いは、その追放されたリシウルフがゲピドエルフ王国に支援を求めた事が原因となっている。
フィリッポは妻が妊娠して以来、自分の子供に氏族長を継がせたいと思っていた。
三人の弟達が可愛くない訳ではない。
同じ両親から生まれ、若くして死んだ父に代わって育てているから、可愛い。
だが、それ以上に自分の子供が可愛いと思ってしまうのだ。
王家や他の氏族家で頻発する、長の座を巡る骨肉の争いを見ているだけに、つい悪い方に考えてしまうのだ。
★★★★★★
俺、智徳平八郎は転生したようだった。
どうやらこれで六度目の転生のようだ。
どうやらと言わなければいけないのは、過去五度の転生では前世の記憶がなかったからだが、今回だけは前世どころか五代前までの記憶がある。
医者で小説家だった智徳平八郎。
死後に神格化までされた東郷平八郎。
幕末の叛乱で有名な大塩平八郎。
忠臣蔵に出てくる小林平八郎。
徳川家康に過ぎたるものと称えられた本多平八郎の五人だ。
全員平八郎なのには笑ってしまう。
母に胎内にいる時から記憶が蘇って、随分と混乱してしまった。
五人もの記憶が一度に思い出されたのだから当然だ。
仮想戦記を書いていた智徳平八郎に記憶がなければ、狂っていたかもしれない。
何とか狂気には囚われなかったが、とてつもなく苦しかった。
智徳平八郎の記憶から、それぞれの成功と失敗が胸をえぐったからだ。
特に東郷平八郎の記憶は、血反吐を吐くほどの悔恨をうんだ。
それぞれの記憶に従って、大いに反省した。
前世の記憶がなかったからではあるが、それでも、もう少しやり方があった。
せっかく五代分の記憶があるのだから、今度こそ大きな失敗は犯さない。
特に東郷平八郎と大塩平八郎の記憶がそう思わせる。
自分一人だけならともかく、多くの人を道連れにするような方法はとらない。
そう強く心に誓って生まれた。
俺はまた同じ日本人に生まれるのだと思っていた。
智徳平八郎が死んでから数年か数十年後の日本に生まれると思っていた。
過去五度が歴史の流れに沿って日本に生まれたのだから、当然だろう。
だが、そうではなかった。
別の国に生まれたか、とんでもなく文明が後退した時代に生まれていた。
そう思ったのは、先ず耳に聞こえてくる言葉が日本語ではなかったからだ。
智徳平八郎と東郷平八郎が知っている英語でもドイツ語でもなかった。
それどころか今まで全く聞いた事のない言葉だった。
日本語やラテン語との関係性も全くないと思われた。
内心密かに最悪の状況を想定しながら、必死で言葉を覚えた。
言葉が分からなければ何もできないから、この件に関しては自重を捨てた。
次に大きな疑念を感じたのは、目が見えるようになってからだった。
最初は明るいか暗いかしか分からなかった。
徐々に形がぼんやりと分かるようになってきた。
次に色が見分けられるようになってきた。
最後に動く物が追えるようになって、ようやく両親を目で追えるようになった。
そして父親と母親の顔を見て大いに驚いた。
父親が金髪碧眼なのはまだいい、智徳平八郎に時代は外国人も多くなっていた。
だが、母親が緑髪朱眼だったのには思わず泣いてしまった。
赤子とは直ぐに泣いてしまうのだと、大いに反省した。
髪を染めカラーコンタクトレンズを入れている可能性はある。
可能性はあったが、どうやら元々そういう色彩のようなのだ。
俺は直ぐに自分の姿がどのようなモノなのか恐怖を感じた。
智徳平八郎の頃も髪は染めなかったしカラーコンタクトレンズも入れなかった。
五代に渡ってずっと黒髪と黒い瞳だった。
金髪はまだ何とか我慢できるが、緑の髪は受け入れなれない。
夢でうなされるくらい怖かった。
次に驚いたのは、母親が家の外に出してくれた時だった。
その頃にはなんとなく父親が地位のある人間だと分かっていた。
まだ言葉の意味を完全に理解できていたわけではない。
自分に話しかけてくれる単語の意味は完全に覚えたが、文法が分からない。
覚えた単語自体の数も限られている。
だが、仕える者達の態度で父の地位が高い事は想像できたのだ。
それなのに、自分が住んでいる家が結構粗末なのだ。
別に隣近所にある他の家に比べて粗末な訳ではない。
大きさで言えば、多分この辺りに建つ家の中で一番大きいだろう。
あくまでも過去五代で住んでいた家よりは粗末だと言う事だ。
外壁がモルタルでもタイルでもサイディングでもなく、皮なのだ。
まるでゲルのような……
もしかして、騎馬民族に転生してしまったのだろうか。
逆行転生という、過去にさかのぼった転生をしたのだろうか。
だが、逆行転生なら色鮮やかな髪や瞳の色が説明できない。
もしかしたら地球の文明が一度滅んでしまって、再度繁栄している所なのか。
俺の記憶や知識を表に出して大丈夫なのか、慎重に判断する必要がある。
「オンギャア、オンギャア、オンギャア、オンギャア」
移動式住居の仕切られた一角から、元気の赤ちゃんの声が聞こえてきた。
「氏族長、おめでとうございます、立派な男の子です」
次いでお産に慣れた中年女性の声が聞こえてきた。
「おお、めでたい、これで我が氏族も安泰だ」
若き氏族長、フィリッポが心から喜びの声をあげた。
歴戦の父や数多くの有力氏族戦士を、イタリアエルフ王国との戦いで失ったフィリッポには、跡継ぎとなる息子の誕生は何よりもうれしい事だった。
国の古い定めでは、王や氏族長の後継者は戦闘力で選ばれる。
現国王や現氏族長の長男だから優先されるわけではない。
ただ全く血統が否定されているわけでもなく、本家筋の年長実力者から選ばれるのが慣例だった。
だが、現国王アウドインは慣例通りには選ばれていない。
先代王ワルタリを弑逆して王位を簒奪していた。
そのワルタリも、父親が息子に王位を継がせたくて、本来なら次期国王になるはずだった、甥のリシウルフを追放して王位につけているのだ。
ゲピドエルフ王国との長年に渡る厳しい戦いは、その追放されたリシウルフがゲピドエルフ王国に支援を求めた事が原因となっている。
フィリッポは妻が妊娠して以来、自分の子供に氏族長を継がせたいと思っていた。
三人の弟達が可愛くない訳ではない。
同じ両親から生まれ、若くして死んだ父に代わって育てているから、可愛い。
だが、それ以上に自分の子供が可愛いと思ってしまうのだ。
王家や他の氏族家で頻発する、長の座を巡る骨肉の争いを見ているだけに、つい悪い方に考えてしまうのだ。
★★★★★★
俺、智徳平八郎は転生したようだった。
どうやらこれで六度目の転生のようだ。
どうやらと言わなければいけないのは、過去五度の転生では前世の記憶がなかったからだが、今回だけは前世どころか五代前までの記憶がある。
医者で小説家だった智徳平八郎。
死後に神格化までされた東郷平八郎。
幕末の叛乱で有名な大塩平八郎。
忠臣蔵に出てくる小林平八郎。
徳川家康に過ぎたるものと称えられた本多平八郎の五人だ。
全員平八郎なのには笑ってしまう。
母に胎内にいる時から記憶が蘇って、随分と混乱してしまった。
五人もの記憶が一度に思い出されたのだから当然だ。
仮想戦記を書いていた智徳平八郎に記憶がなければ、狂っていたかもしれない。
何とか狂気には囚われなかったが、とてつもなく苦しかった。
智徳平八郎の記憶から、それぞれの成功と失敗が胸をえぐったからだ。
特に東郷平八郎の記憶は、血反吐を吐くほどの悔恨をうんだ。
それぞれの記憶に従って、大いに反省した。
前世の記憶がなかったからではあるが、それでも、もう少しやり方があった。
せっかく五代分の記憶があるのだから、今度こそ大きな失敗は犯さない。
特に東郷平八郎と大塩平八郎の記憶がそう思わせる。
自分一人だけならともかく、多くの人を道連れにするような方法はとらない。
そう強く心に誓って生まれた。
俺はまた同じ日本人に生まれるのだと思っていた。
智徳平八郎が死んでから数年か数十年後の日本に生まれると思っていた。
過去五度が歴史の流れに沿って日本に生まれたのだから、当然だろう。
だが、そうではなかった。
別の国に生まれたか、とんでもなく文明が後退した時代に生まれていた。
そう思ったのは、先ず耳に聞こえてくる言葉が日本語ではなかったからだ。
智徳平八郎と東郷平八郎が知っている英語でもドイツ語でもなかった。
それどころか今まで全く聞いた事のない言葉だった。
日本語やラテン語との関係性も全くないと思われた。
内心密かに最悪の状況を想定しながら、必死で言葉を覚えた。
言葉が分からなければ何もできないから、この件に関しては自重を捨てた。
次に大きな疑念を感じたのは、目が見えるようになってからだった。
最初は明るいか暗いかしか分からなかった。
徐々に形がぼんやりと分かるようになってきた。
次に色が見分けられるようになってきた。
最後に動く物が追えるようになって、ようやく両親を目で追えるようになった。
そして父親と母親の顔を見て大いに驚いた。
父親が金髪碧眼なのはまだいい、智徳平八郎に時代は外国人も多くなっていた。
だが、母親が緑髪朱眼だったのには思わず泣いてしまった。
赤子とは直ぐに泣いてしまうのだと、大いに反省した。
髪を染めカラーコンタクトレンズを入れている可能性はある。
可能性はあったが、どうやら元々そういう色彩のようなのだ。
俺は直ぐに自分の姿がどのようなモノなのか恐怖を感じた。
智徳平八郎の頃も髪は染めなかったしカラーコンタクトレンズも入れなかった。
五代に渡ってずっと黒髪と黒い瞳だった。
金髪はまだ何とか我慢できるが、緑の髪は受け入れなれない。
夢でうなされるくらい怖かった。
次に驚いたのは、母親が家の外に出してくれた時だった。
その頃にはなんとなく父親が地位のある人間だと分かっていた。
まだ言葉の意味を完全に理解できていたわけではない。
自分に話しかけてくれる単語の意味は完全に覚えたが、文法が分からない。
覚えた単語自体の数も限られている。
だが、仕える者達の態度で父の地位が高い事は想像できたのだ。
それなのに、自分が住んでいる家が結構粗末なのだ。
別に隣近所にある他の家に比べて粗末な訳ではない。
大きさで言えば、多分この辺りに建つ家の中で一番大きいだろう。
あくまでも過去五代で住んでいた家よりは粗末だと言う事だ。
外壁がモルタルでもタイルでもサイディングでもなく、皮なのだ。
まるでゲルのような……
もしかして、騎馬民族に転生してしまったのだろうか。
逆行転生という、過去にさかのぼった転生をしたのだろうか。
だが、逆行転生なら色鮮やかな髪や瞳の色が説明できない。
もしかしたら地球の文明が一度滅んでしまって、再度繁栄している所なのか。
俺の記憶や知識を表に出して大丈夫なのか、慎重に判断する必要がある。
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