六度目の転生は異世界で

克全

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第一章

第9話:戦船

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教会歴五六八年十一月

「レオナルド様、今度作る船はこの絵の通りでよろしいのですね」

「ああ、そうだ、この絵の通りに作ってくれ」

 我が氏族の領地は海に面していなかったが、大きな湖があった。
 そのお陰で、湖で魚を獲るくらいの舟は作られていた。
 丸木舟のような粗末な舟ではなく、カヌーくらいの小型舟は作っていた。
 だがやはりガレー船のような大型船も、帆を使った船も作ってはいなかった。
 残念ではあるが、まったく船大工がいないよりはましだ。
 〇から一を創り出す事に比べれば、一を二や三にする方が簡単だから。

 最初俺はそれなりに詳細な船の設計図を書いてみたが、全く理解されなかった。
 智徳平八郎は不器用だったが、東郷平八郎や大塩平八郎には絵心があった。
 だから絵をかいてその通りに船を創るように命じたのだ。
 湖で漁業をするための小さな舟ではなく、他国と交易するための大きな船だ。
 商談が上手くいかなかった時には、海賊になるための兵士を乗せられる軍船だ。
 いずれは海を手に入れて、帆を使って自由自在に海面を駆け巡るフリゲートやジャンク船を建造して、海洋国家になるのだ。

 考えが大きく飛躍してしまったが、将来を見据えて一歩ずつ進むのだ。
 優秀な船大工を今から育成する事が大切だ。
 帆船を運用するためには、綿花を育てて丈夫な綿布を作らなければいけない。
 最初は麻布や獣皮で代用するにしても、最終的には綿布が必要になる。
 知識はあるのだから、後は職人を保護育成すればいい。
 真珠の養殖と同じように、長く働いてくれるエルフとドワーフの心をつかみ、忠誠を尽くしてもらえるようにならなければいけない。

「親方、これから多くの船を造ってもらう。
 今いる職人だけではとても数が足らないから、たくさんの弟子を取ってもらう。
 これは命令でお願いではないからな、分かっているな」

 今回の俺は蛮族の恐怖で言う事を聞かせる事にした。
 ロアマ人の親方にエルフ族やドワーフ族を預けるのだ。
 俺の見ていない所で彼らを差別したり虐められたりしたら、忠誠心を獲得しなければいけないという、最も重要な点を失敗する事になる。

「はい、承りました、預かった弟子は全員一人前にしてみせます」

 脅すだけではなく、褒美を用意しなければいけない。
 飴と鞭と言う言葉は好きではないのだが、今回はしかたがない。

「その代わり、俺が預けるエルフ族とドワーフ族の子供を一人前の職人にしてくれたら、奴隷から従属民にしてやる。
 そうなれば家族を他の氏族に売られる心配もなくなるし、何の理由もなく殺される心配もなくなるぞ」

「ありがとうございます、レオナルド様。
 エルフ族であろうとドワーフ族であろうと、一人前の職人にしてみせます」

「では、希望者がいれば明日から連れてくるから、頼んだぞ」

 毎日職人の所に行くのが最近の日課になっている。
 奴隷市が盛況なお陰で、欲しい職人を手に入れることができている。
 王家や他の氏族長も欲しがるような、目に見えて役に立つ職人を手に入れるのは無理だが、俺にしか有能さを理解できない職人は安く購入する事ができた。
 それが水車職人や風車職人だった。

 遊牧民族の王家や他の氏族長には、耕作地に水を運ぶ水車や風車は無用の長物だ。
 肉や乳が主食の遊牧民には、穀物を製粉する事の労力や大切さは理解できない。
 我が氏族でも、実際に俺がミートピザを焼いて食べさすまでは理解できなかった。
 肉や乳も美味しいし大切な食糧だが、穀物とは保存期間が違い過ぎる。
 特にアルコールに加工してからの保存期間は桁違いだ。
 まだ醸造には成功していないが、蒸留酒を完成させる事ができたら、莫大な富を手に入れることができる。

 ただ残念な事に、醸造職人の大切さは王家や他の氏族長も理解していた。
 彼らは馬乳酒を大切には思っていたが、ワインの美味しさも理解していた。
 ロアマ人を毛嫌いしている彼らも、ワインの美味しさだけには逆らえなかった。
 もちろん酔うためにエールも飲んでいたが、エールよりは乳酒を好んでいた。
 乳酒は子供でも飲むのだが、俺は臭いのきつい乳酒が苦手なのだ。
 そもそもアルコール自体が得意ではないから、商品としか考えられない。
 商品として考えるなら、安価な材料で長期間保管できて高く売れる蒸留酒一択だ。

「親方、水車と風車の完成にはどれくらいかかる」

「水車の方は完全に木材だけで作るのなら一年くらいで完成させられます。
 痛みやすい所に鉄を使うのなら、鍛冶職人次第です。
 風車の方は、羽を材木で作るのか布で作るかによります」

「そうか、まずは木だけを使って完成させてくれ。
 鉄の方は各地の鍛冶職人に話をしてもらっているのだが、残念ながら剣などの武器が最優先で、とても水車の部品まで作ってはもらえないのだ。
 我が氏族が抱えている鍛冶も武器造りを優先しなければいけなくてな」

 幸いなことに、イタリア半島には鉄鉱山が結構あった。
 お陰で鉄製の武器や道具を作る材料は手に入れることができる。
 だが問題は、敵が多過ぎて武器以外を作っている余裕がない事だ。
 ロアマ帝国やオーク王国だけでなく、王家や他氏族も警戒しなければいけない。
 奴隷市が大成功して大儲けした事も問題だが、パピルスを作った事が大きい。
 大儲けできる高草が群生している我が領地を、誰も彼も虎視眈々と狙ってやがる。

「分かりました、ここでレオナルド様達が負けられるような事があれば、今度こそ戦いの中で殺されてしまうかもしれません。
 殺されることはなくても、今よりも悪い暮らしになる事は確実です。
 ここ以外のロアマ人がどんな目にあっているか、色々噂を聞いていますから」

「そうか、だったら頑張っていい水車と風車をたくさん完成させてくれ。
 親方達が水車と風車を完成させてくれれば、我が家は豊かになる。
 我が家が豊かになれば、多くの兵士を養う事ができる。
 多くの兵士がいれば、敵が攻めてくる事もなく、戦争自体が起こらない。
 もしかしたら勝てるかもしれないと思わせる程度の戦力だと、襲われるかもしれないし、弱いと思われたら確実に攻め込まれるからな」

「分かっています、もう戦争に巻き込まれるのはごめんです。
 知った者達がたくさん殺され、子供はレオナルド様が買ってくださいましたが、女房はまだ他の街で性奴隷にされています。
 何としてもレオナルド様に力を持っていただいて、女房を取り返していただきたいのです」

「絶対に取り返してやるとは断言できない。
 だが、役に立つ水車と風車を二〇個完成させてくれたなら、女房を買い戻してやると言う約束は、できる限り守る。
 その代わりと言ってはなんだが、弟子を育てて欲しい。
 親方の子供だけでなく、俺の選んだエルフ族とドワーフ族の子供をだ」

「分かりました、女房を買い戻していただけるのなら何だってやります」
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