六度目の転生は異世界で

克全

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第一章

第21話:建国ラッシュ

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教会歴五六〇年十月(十一歳)

 俺と父上が領内の開発に集中している間に、南イタリアに侵攻していた氏族長達が次々と都市を落とし、公国の建国を宣言していた。
 八月には有力氏族長のファロアルドがスポレート公国の建国を宣言し、一緒に侵攻していた中小の氏族も制圧した都市を首都にして小公国の建国を宣言した。
 九月には有力氏族長のゾットーネがさらに南下して、ベネヴェント公国の建国を宣言し、一緒に侵攻していた中小の氏族もそれぞれ小公国の建国を宣言した。

 彼らがオーク王国の反撃で経済的に苦しくなっていた氏族を受け入れてくれ、略奪の分け前を与えてくれたので、俺や父上に対する妬み嫉みが抑えられた。
 そうでなければ、略奪した翌年に略奪した年の十倍以上の穀物を手に入れた我らを、彼らは見逃すことなく襲いかかってきていたはずだ。
 ランゴバルド人同士が争わなくても略奪をして豊かになれるのなら、よほどの愚か者でなければ同族同志で争おうとは思わない。

 だがロアマ人もランゴバルド人の侵攻に何の対策も立てなかったわけではない。
 イタリアの半分は征服されたが、残された街と村の防御を固めていた。
 多くの犠牲を払って都市を落とし財貨を奪ったのだ。
 そしてこれからも略奪を続けるのなら、更に多くの犠牲を払う事になる。
 生き残ったロアマ人は死に物狂いで残された土地と都市を護ろうとする。

 俺が従属民の地位を与えて保護している、ロアマ人商人達が持ってくる情報を総合して検討すれば、ロアマ帝国イタリア駐屯軍が何を画策しているかくらい分かる。
 彼らはアルボイーノ王を謀殺してランゴバルド人を同士討ちさせようとしている。
 自分達が何度も皇帝を殺して皇位を簒奪したのと同じ方法を取ろうとしている。
 だが俺がいる以上、ロアマ帝国の思い通りにはさせない。

「父上、国王陛下に使者を送ってください」

「使者でいいのか、何なら俺自身が乗り込んでやるぞ」

「いえ、今回はわざわざ父上に出張ってもらうほどの事ではありません。
 ロアマ帝国の侵攻と策謀を防ぐために、こちらから策謀を仕掛けるだけです」

「こちらからロアマ帝国に策謀を仕掛けるだと、大丈夫か。
 追い込まれる前に貢物をする事を、王や氏族長達が認めるとは思えないぞ」

 父上はとても成長されていて、俺の策を理解できるようになった。
 まあ、ある程度の策を決める時には、必ず父上に事前説明しているからだが、それにしても以前とは比較にならないほど戦略が立てられるようになられた。
 俺が策謀を仕掛けると言っただけで、ロアマ帝国の貴族や総督に賄賂を贈り、軍をイタリアに派遣させないようにする策の方だと理解された。
 だがまだ完全に俺の策を理解されているわけではない。

「それは父上を通して国王陛下も氏族長達も内々に説得します。
 納得してくださらない氏族長がいてもしかたがありません。
 同意してくださる方と一緒にやるだけです」

「それは国王陛下だけが納得されなくても、全氏族長が手を結んでやることもあるという事か」

「はい、国王陛下だけが賛成されない事もあります」

「そうか、ではその策というのを教えてもらおうか」

 俺は今回の策を父上に説明したが、随分と驚かれた。
 単に賄賂を贈ってロアマ帝国内にランゴバルド王国の味方を作るのではなく、ロアマ帝国貴族と養子縁組をして、同族に入れてもらうのだ。
 毎年その貴族に貢物を送る事で、ランゴバルド王国をロアマ帝国が認めた属国とするのだ。

「この策の好い所は、ロアマ貴族の一族として、帝国内で交易ができる事です。
 狭いイタリアの中で活動するよりも、ずっと利益をあげられます。
 ロアマ貴族に渡す貢ぎ物の何十倍何百倍も儲けられますよ」

「草原地帯での交易や略奪なら、俺にも経験があるし理解もできる。
 だがロアマ帝国貴族の養子になって、帝国内で交易をするなどとても理解できん。
 全てレオナルドに任せるから、好きにするがいい」

「はい、父上の許しを受けて好きにさせていただきます。
 ですが、私だけでできる事など、とても少ないのです。
 万夫不当の父上が力を貸してくださるから、全てが上手くいくのです。
 どうか私のために力を貸してください、お願いします」

「心配するな、分かっている、何があろうと力を貸してやる」

 父上の力強い後押しを受けて、王と氏族長達に策略を伝えてもらった。
 誇り高いというよりは、傍若無人という表現が当てはまっているアルボイーノ王は、ロアマ人の養子になる事を激しく拒絶した。
 一国の王なのだから、当然の反応だと思う。
 これから更に南イタリアに攻め込もうとしている氏族達も、ロアマ貴族に侵攻を許されなくなる事を警戒して、ロアマ貴族の養子になる事を拒絶した。

 だが北イタリアに建国した氏族達は、ロアマ人の反撃を警戒して、ロアマ貴族の養子になる事に積極的だった。
 彼らはもうロアマ帝国と戦う気を失っていた。
 俺が命懸けで略奪をしなくても豊かになれる手本を示したからだ。
 支配下に置いたロアマ人に働かせて、毎年税を納めさせればいいと知ったのだ。
 家畜と同じように大切に扱えば、富を稼いでくれると理解したのだ。
 だから我がストレーザ公国を攻めるのではなく交流しようとした。

 その代表がジェノバ公フェデリコだった。
 彼は一緒にオーク王国に攻め込んだ戦友でもあるので、普通なら境界争いになる近隣領主なのに、氏族同士が血を流すような争いは起きていない。
 互いの領地の間に緩衝地帯となる中小の公国領を作ったのもよかった。
 再びオーク王国が攻め込んできた時には、手を携えて戦わなければいけない立地でもあるので、敵対するよりは共同した方がいいと互いに思っていた。

 だから、良港を持つ立地に相応しい政策を教えてやった。
 港を使わせてもらう権利と引き換えに、商売の仕方を教えてやった。
 ロアマ帝国貴族の養子にしてもらうには、帝国の首都にまで行かなければいけないが、そのための大型船はジェノバかモンファルコーネしかなかった。
 モンファルコーネを領内に持つフリウーリ公ギスルフは、我がストレーザ公国を競争相手だと思っていたので、手を組むことができなかった。

 船大工がモンファルコーネ出身だったから、できる事なら友好な関係を築いて親方の妻を買い戻したかったのだが、無理だった。
 だから親方の地縁血縁を利用する事を諦めて、ジェノバで大型船を建造する事にしたのだが、本心は人の港ではなく自分も港が欲しかった。
 良港を持つ領地を手に入れ、そこを拠点に大きな世界に討って出たかった。
 だから多くの公に港を含む領地の購入を打診したのだが、全て断られた。
 だから奥の手を使って自力で港を手に入れる事にした。

 港を手に入れる事には時間がかかるので、港の事は後回しにした。
 まずはロアマ帝国のガレー船に負けない戦船を手に入れる事にした。
 だからガレー船を建造した事のある船大工に巨額の懸賞金をかけたのだ。
 南イタリアに侵攻中の氏族長達は、眼の色を変えて船大工を攫おうとした。
 中には船大工じゃないロアマ人を船大工と言い張って売ろうとする奴もいたが、そんな氏族は戦士の誇りにかけて父上が断罪してくれた。
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