六度目の転生は異世界で

克全

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第一章

第22話:農業革命

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教会歴五六一年四月(十二歳)

 俺が持っている知識を総動員した事で、ストレーザ公国は農業革命を成し遂げた。
 農業革命で収穫量が十五倍になり多くの労働力を農業以外に使えるようになった。
 その十五の労働力の内、十を徒士兵にして戦闘力を増強した。
 残る五を技術者にして生産力をあげることにした。
 本心は徒士兵を五に抑えて、余分となる五は農地開拓に使いたかった。

 だがそんな事をしてしまったら、王や氏族長達に襲われるかもしれない。
 オーク王国軍に襲われる可能性も皆無ではない。
 豊かさに見合うだけの戦力を持っていないと必ず襲われる。
 平和主義など何の役にも立たない、弱肉強食の世界とはそう言うモノなのだ。
 踏みつけにされ、持っている富を奪われるだけでは済まず、人間の尊厳どころか命まで奪われてしまうのがこの世界なのだ。

 だから余剰労働力の十を徒士兵にしたのだが、軍事訓練だけをさせているのでは勿体無さ過ぎるので、兼業兵とする事にした。
 具体的には戦闘工兵と屯田兵を合わせた存在にした。
 元が奴隷なので衣食住を保証するだけでいいし、定住させる必要もない。
 元々俺達は家畜のエサを求めて移動する遊牧民なのだから。

 奴隷徒士兵達には、屯田兵として軍事訓練以外に農地開墾をやらせた。
 戦闘工兵としての技術を獲得させるために、街や村の濠を掘らせ、その時に出た土で土塁を築かせ、伐採した材木で塀や逆茂木を作らせた。
 野戦構築に必要な荒縄を編めるように、麻や葛から繊維を取れるようにしたし、その繊維を使って縄や布を編めるようにもした。
 自分達で作った荒縄で投石器も作らせて、畑を荒らす鳥獣を狙う訓練もさせた。

 とてつもなく豊かになったストレーザ公国を襲いたいと思っている者は多かったが、それに相応しい軍備を整えられたので、実行できる者はいなかった。
 王も氏族長達もオーク歩兵の強烈な投石を覚えていたので、俺が莫大な余剰労働力を兵士にして投石訓練させている事を警戒したのだ。
 ロアマ商人から情報を集めて王や氏族長達の動向を確認したが、農地開拓を減らして戦闘力を増強した事は正解だった。

 そして一冬我慢した事で、情勢が大きく動いてくれた。
 俺が従属民の資格を与えて優遇している商人達が、目先の利益だけでなく、重大な情報を数多く集めて来てくれた。
 その情報の一つが、オーク王国内の争いだった。
 第七王子のクラムが、統一王の座を狙って父親であるクロタール王を殺そうとしたのだが、失敗して父王に殺されたそうだ。

 だが真実は違う、クラムは父王を殺そうとしたのではなかった。
 狡猾で残忍な兄キルペリクに陥れられただけだ。
 俺が煽らなくても勝手に殺し合ってくれたので、手間が省けた。
 智徳平八郎の記憶にある良心が痛まずにすんで万々歳だった。
 しかもクロタール王は、可愛がっていた末子のクラムを自分の手で殺した事に自責の念を感じ、精神的に不安定になっていた。
 キルペリクの謀略を噂にして耳に届くようにしてやったのが効いたようだ。

 オーク王国をまとめるクロタール王が精神的に病んでくれたお陰で、備えの軍を大幅に減らす事が可能になった。
 後継者の王子達が王位と領地を争っているオーク王国を攻めるという手もある。
 だがそれでは、本来は味方であるはずの王家や氏族長達の奇襲を警戒しながら、オーク王国を攻めなければいけなくなる。
 だから警戒しなくていいオーク王国を背後にして南イタリアに侵攻する。
 敵にも形だけの味方にも隙を見せずに南イタリアの良港を手に入れる事にした。

「だがそれでは縁を結んだゲッリウス家が怒るのではないか」

「父上の心配はもっともですが、その点は大丈夫です。
 今のイタリアには、ゲッリウス家に縁のある家はまったくありません。
 どの街を襲って領地にしようと、貢ぎ物さえ渡しておけば、ゲッリウス家は文句を言ったりしません、ご安心ください」

「最初からその心算でゲッリウス家と縁を結んだのか」

「少しでもイタリアに利権を持っている家が相手では、後でどのような争いが起こるか分かりませんので、少々力は弱くても敵対する可能性が低い家にしました。
 むしろ力が弱い家の方が、我らがロアマ帝国軍の援軍を破った時に発言力が強くなるので、邪魔になると切り捨てられる心配がありません」

「ロアマ帝国を破ることを前提に考えているのか、自信満々だな」

「それは父上も同じでしょう。
 父上もロアマ帝国に負ける事など全く考えておられないでしょう」

「まあ、その通りだな、では、いよいよ南に出張るか」

「はい、遠征軍は歩兵を主力にして私とリッカルド叔父上で行きますので、父上には領内に残って王家や他氏族に備えていただきたいです。
 父上が騎馬軍団と一緒に領地に残っておられたら、誰も手出しできませんから」

「ほう、ついに隠していた牙を見せるのか」

「予定より早く武装した奴隷歩兵を十五万用意する事が出ました。
 その内の五万を南イタリアに投入すれば、港の一つや二つは手に入れられます。
 領地を手に入れるのが早ければ早いほど、大型船の建造も農地の開拓も早くできますから、待つわけにはいきません」

「そうだな、レオナルドが考えた方法で奴隷に畑を作らせたら、あちらこちらに移動しなくても家畜のエサが手に入る。
 ここ二年の間は、無理に冬前に家畜を殺さなくても食べる物に困らなかった。
 お陰でどの分家も戦士も家畜の数が二〇倍に増えて、分家などは弱小氏族に匹敵するほどの家畜を持つことができるようになった。
 レオナルドに対する不平不満をほとんど聞かなくなったからな」

「全くなくなってはいないのですね」

「ふっ、どれほど豊かになっても不平不満を口にする者はいる。
 遊牧できないこと自体が気に入らない者もいれば、肉と乳以外を食べるのが嫌だという者もいる、しかたのない事だ」

「わかってはいますが、少々寂しいですね。
 ですがそれほど私のやり方が気に入らないのなら、また王の所に送ってリッカルド叔父上の指揮下に入れましょうか」

「そう虐めてやるな、あいつらも今の豊かな生活を手放したいわけではない。
 当主は文句を言っていても、後継者がレオナルドを慕っている家も多い。
 時期を見て当主を交代させればいい。
 これ以上騎馬兵を減らす事が、機動力を失う事になるのは分かっているだろう」

 父上の申される通りだ。
 嫌われているからと言って、全ての分家と戦士を切る捨てる訳にはいかない。
 俺がやったと分からないように、反抗する分家当主を殺す方法はある。
 だが俺が当主を殺したと疑われるだけで、分家や戦士達を敵に回すかもしれない。
 父上に騎馬軍団を預けて後方の安全を確保できたからこそ、五万もの歩兵を長距離遠征に投入する事ができたのだ。
 急がず慌てず実績を積み上げて、信頼と忠誠心を得るしかない。
 まずは南の氏族長達が落とせない都市を落として実績を手に入れる事だ。
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