6 / 48
第一章
第5話:経絡指導
しおりを挟む
神暦3103年王国暦255年1月5日13時:ジャクスティン視点
「お爺様、今日も鍛錬するのでしょうか?」
ジェネシスは、自分がオメガ落ちしたにもかかわらず、アルファの俺様が以前と変わらず鍛錬するのが不思議なようだ。
「当然だ、俺様には王家にも大陸連合魔道学院にも無い知恵がある。
その知恵を使ってジェネシスを強くする。
アルファにも負けない強い男にする心算だ」
「本当にその様な方法があるのでしょうか?」
「さあな、誰だってやってみなければ分からない。
先の成人式だって、やってみなければ誰がアルファになるかオメガになるかは分からないのだ」
「そうですね、何事もやってみなければ分からないのですよね」
「ジェネシスがオメガから強い男に変化できるのかできないのかは、俺様の言う通り鍛錬してみないと分からない。
ジェネシスにやる気があるか無いかだけの事だ」
「やります、やらしてください」
二人きりの馬車の中でジェネシスが決意を露にする。
成人式の日から続けている経絡に魔力を流す実験が、弱気一辺倒だったジェネシスの言動を変えているのだ。
「先ずは俺様がジェネシスの身体に魔力を流す。
身体の正面、尻の穴の前から下顎の上のところにまで魔力を流すから、それを感じてみろ」
最初に任脈経といわれる所に魔力を流す。
ジェネシスにやらす前に自分の身体に魔力を流して確かめてある。
間違いなく魔力が増してとんでもない強さを得られる。
「はい」
「大切な所には俺様が指を置くから、そこの魔力を止めるようにしろ」
会陰から承漿までの二十四経穴をジェネシスに覚えさせる。
今はまだ経穴の名称や効果まで覚える必要はない。
魔力を流してオメガになった身体を変化させられればそれでいい。
「ジェネシスはそのまま覚えた任脈と督脈、手の太陰肺経に魔力を流していろ」
「はい」
俺様はジェネシスの鍛錬を続けるように命じると、馬車の扉を開けて外に出た。
「魔獣が近づいている!
迎え討つから馬を用意しろ」
馬車の扉の外にある足置きに身を置き、護衛をしているベータ騎兵に命じた。
疾走する馬車の外、わずかなでっぱりに身を置いているのに微動だにしない。
我ながら惚れ惚れする身体能力だ。
「はっ、ただいま」
騎兵が直ぐに俺様の軍馬を用意してくれた。
俺様とジェネシスの乗る馬車の前にはセイントの馬車があり、後ろにはオリビアの馬車があるのだが、まだ魔獣の接近に気がついていないようだ。
「二人の軍馬も用意しておいてやれ」
「はっ」
王都を出てまだ四日目だ。
しかも主要な街道を使って公爵領に向かっているのだ。
こんな場所に魔獣が出てくるなど、普通はありえない話だ。
「遅れて申し訳ありません」
「オリビアより先に気付けて良かったな」
「はい、何とか兄の面目を保てました」
「今がどんな状況だか分かっているか?」
「はい、誰かが魔獣の群れを連れてきたのだと思います」
「その通りだ、王都からわずか四日の場所に、これだけ強大な気配を放つ魔獣の群れを近づけさせるなど、周辺の貴族士族は厳罰に処せられる失態だ」
「それが起きるという事は、王家から処罰されない確証があって魔獣の群れをここまで誘導したという事ですね」
「そうだ、それに、一人二人の貴族士族ではなく、ほとんど全ての貴族士族がこの暴挙に加担しているのだ」
「討伐なさいますか、見捨てられますか?」
「見捨ててこの地方一隊が魔獣に壊滅させられるのも一興だが、残念ながら俺様には不完全な良心があるのだ」
「父上ならそう申されると思っていました」
「気がつくのが遅れて申し訳ありません!」
「気にするな、三年程度の実戦経験しかないオリビアでは仕方のない所だ。
それに、これくらいで気がつければ、最低でも男爵くらいの能力はある。
この場所からなら十分余裕をもって魔獣を迎え討つ頃ができる」
「そう言っていただけると少しは気が休まりますが、父上と兄上に少しでも早く追いつけるように、これからの鍛錬を続けさせていただきます」
「そうだな、鍛錬ほど大切な物はないから、二人ともしっかりと続けてくれ。
この魔獣共は俺様が一人で片付けて来る」
「そんな、危険です父上!」
「そうです、父上を待ち受ける罠の可能性があります」
「心配してくれてありがとう。
だがその心配は余計な事だ。
この襲撃はミア王女が仕掛けた可能性が高い。
そうなると、目的はジェネシスだ。
ジェネシスを奪われる事がサザーランド公爵の恥だと思え!」
「分かりました、父上。
我々を魔獣の方に誘い出して馬車を襲うつもりなのですね」
「セイントにしては迂闊だぞ。
王家の襲撃がある事は言ってあったぞ。
この程度の魔獣でではなく、複数の貴族士族が直接襲ってくる可能性もある。
あらゆることを想定して対処できるようにしておくのだ」
「はい、申し訳ありません」
「オリビアはまだ味方である貴族士族から本気の殺意を向けられた事がないだろう。
公爵領に戻るまでに、この国の貴族士族を何十何百と殺すことになる。
今この場で覚悟を決めておけ」
「はい、顔見知りの貴族士族であろうと躊躇せずに殺してみせます」
「では後は任せたぞ」
「お爺様、今日も鍛錬するのでしょうか?」
ジェネシスは、自分がオメガ落ちしたにもかかわらず、アルファの俺様が以前と変わらず鍛錬するのが不思議なようだ。
「当然だ、俺様には王家にも大陸連合魔道学院にも無い知恵がある。
その知恵を使ってジェネシスを強くする。
アルファにも負けない強い男にする心算だ」
「本当にその様な方法があるのでしょうか?」
「さあな、誰だってやってみなければ分からない。
先の成人式だって、やってみなければ誰がアルファになるかオメガになるかは分からないのだ」
「そうですね、何事もやってみなければ分からないのですよね」
「ジェネシスがオメガから強い男に変化できるのかできないのかは、俺様の言う通り鍛錬してみないと分からない。
ジェネシスにやる気があるか無いかだけの事だ」
「やります、やらしてください」
二人きりの馬車の中でジェネシスが決意を露にする。
成人式の日から続けている経絡に魔力を流す実験が、弱気一辺倒だったジェネシスの言動を変えているのだ。
「先ずは俺様がジェネシスの身体に魔力を流す。
身体の正面、尻の穴の前から下顎の上のところにまで魔力を流すから、それを感じてみろ」
最初に任脈経といわれる所に魔力を流す。
ジェネシスにやらす前に自分の身体に魔力を流して確かめてある。
間違いなく魔力が増してとんでもない強さを得られる。
「はい」
「大切な所には俺様が指を置くから、そこの魔力を止めるようにしろ」
会陰から承漿までの二十四経穴をジェネシスに覚えさせる。
今はまだ経穴の名称や効果まで覚える必要はない。
魔力を流してオメガになった身体を変化させられればそれでいい。
「ジェネシスはそのまま覚えた任脈と督脈、手の太陰肺経に魔力を流していろ」
「はい」
俺様はジェネシスの鍛錬を続けるように命じると、馬車の扉を開けて外に出た。
「魔獣が近づいている!
迎え討つから馬を用意しろ」
馬車の扉の外にある足置きに身を置き、護衛をしているベータ騎兵に命じた。
疾走する馬車の外、わずかなでっぱりに身を置いているのに微動だにしない。
我ながら惚れ惚れする身体能力だ。
「はっ、ただいま」
騎兵が直ぐに俺様の軍馬を用意してくれた。
俺様とジェネシスの乗る馬車の前にはセイントの馬車があり、後ろにはオリビアの馬車があるのだが、まだ魔獣の接近に気がついていないようだ。
「二人の軍馬も用意しておいてやれ」
「はっ」
王都を出てまだ四日目だ。
しかも主要な街道を使って公爵領に向かっているのだ。
こんな場所に魔獣が出てくるなど、普通はありえない話だ。
「遅れて申し訳ありません」
「オリビアより先に気付けて良かったな」
「はい、何とか兄の面目を保てました」
「今がどんな状況だか分かっているか?」
「はい、誰かが魔獣の群れを連れてきたのだと思います」
「その通りだ、王都からわずか四日の場所に、これだけ強大な気配を放つ魔獣の群れを近づけさせるなど、周辺の貴族士族は厳罰に処せられる失態だ」
「それが起きるという事は、王家から処罰されない確証があって魔獣の群れをここまで誘導したという事ですね」
「そうだ、それに、一人二人の貴族士族ではなく、ほとんど全ての貴族士族がこの暴挙に加担しているのだ」
「討伐なさいますか、見捨てられますか?」
「見捨ててこの地方一隊が魔獣に壊滅させられるのも一興だが、残念ながら俺様には不完全な良心があるのだ」
「父上ならそう申されると思っていました」
「気がつくのが遅れて申し訳ありません!」
「気にするな、三年程度の実戦経験しかないオリビアでは仕方のない所だ。
それに、これくらいで気がつければ、最低でも男爵くらいの能力はある。
この場所からなら十分余裕をもって魔獣を迎え討つ頃ができる」
「そう言っていただけると少しは気が休まりますが、父上と兄上に少しでも早く追いつけるように、これからの鍛錬を続けさせていただきます」
「そうだな、鍛錬ほど大切な物はないから、二人ともしっかりと続けてくれ。
この魔獣共は俺様が一人で片付けて来る」
「そんな、危険です父上!」
「そうです、父上を待ち受ける罠の可能性があります」
「心配してくれてありがとう。
だがその心配は余計な事だ。
この襲撃はミア王女が仕掛けた可能性が高い。
そうなると、目的はジェネシスだ。
ジェネシスを奪われる事がサザーランド公爵の恥だと思え!」
「分かりました、父上。
我々を魔獣の方に誘い出して馬車を襲うつもりなのですね」
「セイントにしては迂闊だぞ。
王家の襲撃がある事は言ってあったぞ。
この程度の魔獣でではなく、複数の貴族士族が直接襲ってくる可能性もある。
あらゆることを想定して対処できるようにしておくのだ」
「はい、申し訳ありません」
「オリビアはまだ味方である貴族士族から本気の殺意を向けられた事がないだろう。
公爵領に戻るまでに、この国の貴族士族を何十何百と殺すことになる。
今この場で覚悟を決めておけ」
「はい、顔見知りの貴族士族であろうと躊躇せずに殺してみせます」
「では後は任せたぞ」
14
あなたにおすすめの小説
番を拒み続けるΩと、執着を隠しきれないαが同じ学園で再会したら逃げ場がなくなった話 ――優等生αの過保護な束縛は恋か支配か
雪兎
BL
第二性が存在する世界。
Ωであることを隠し、平穏な学園生活を送ろうと決めていた転校生・湊。
しかし入学初日、彼の前に現れたのは――
幼い頃に「番になろう」と言ってきた幼馴染のα・蓮だった。
成績優秀、容姿端麗、生徒から絶大な信頼を集める完璧なα。
だが湊だけが知っている。
彼が異常なほど執着深いことを。
「大丈夫、全部管理してあげる」
「君が困らないようにしてるだけだよ」
座席、時間割、交友関係、体調管理。
いつの間にか整えられていく環境。
逃げ場のない距離。
番を拒みたいΩと、手放す気のないα。
これは保護か、それとも束縛か。
閉じた学園の中で、二人の関係は静かに歪み始める――。
番解除した僕等の末路【完結済・短編】
藍生らぱん
BL
都市伝説だと思っていた「運命の番」に出逢った。
番になって数日後、「番解除」された事を悟った。
「番解除」されたΩは、二度と他のαと番になることができない。
けれど余命宣告を受けていた僕にとっては都合が良かった。
2026/02/14 累計30万P突破御礼バレンタインSS追加しました
2026/02/15 累計いいね♡7777突破御礼SS 19時に公開します。
様々な形での応援ありがとうございます!
夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い
青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。
神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。
もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。
生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。
過去世と同じ轍を踏みたくない……
【完結】愛されたかった僕の人生
Kanade
BL
✯オメガバース
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。
今日も《夫》は帰らない。
《夫》には僕以外の『番』がいる。
ねぇ、どうしてなの?
一目惚れだって言ったじゃない。
愛してるって言ってくれたじゃないか。
ねぇ、僕はもう要らないの…?
独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
✻改稿版を他サイトにて投稿公開中です。
人族は一人で生きられないらしい――獣人公爵に拾われ、溺愛されて家族になりました
よっちゃん
BL
人族がほとんど存在しない世界に、
前世の記憶を持ったまま転生した少年・レオン。
獣人が支配する貴族社会。
魔力こそが価値とされ、
「弱い人族」は守られるべき存在として扱われる世界で、
レオンは常識の違いに戸惑いながらも必死に生きようとする。
そんな彼を拾ったのは、
辺境を治める獣人公爵アルト。
寡黙で冷静、しかし一度守ると決めたものは決して手放さない男だった。
溺愛され、守られ、育てられる日々。
だが、レオンはただ守られるだけの存在で終わることを選ばない。
学院での出会い。
貴族社会に潜む差別と陰謀。
そして「番」という、深く重い絆。
レオンは学び、考え、
自分にしかできない魔法理論を武器に、
少しずつ“並び立つ覚悟”を身につけていく。
獣人と人族。
価値観も、立場も、すべてが違う二人が、
それでも選び合い、家族になるまでの物語。
溺愛×成長×異世界BL。
読後に残るのは、
「ここに居場所があっていい」と思える、あたたかな幸福。
過労死転生した公務員、魔力がないだけで辺境に追放されたので、忠犬騎士と知識チートでざまぁしながら領地経営はじめます
水凪しおん
BL
過労死した元公務員の俺が転生したのは、魔法と剣が存在する異世界の、どうしようもない貧乏貴族の三男だった。
家族からは能無しと蔑まれ、与えられたのは「ゴミ捨て場」と揶揄される荒れ果てた辺境の領地。これは、事実上の追放だ。
絶望的な状況の中、俺に付き従ったのは、無口で無骨だが、その瞳に確かな忠誠を宿す一人の護衛騎士だけだった。
「大丈夫だ。俺がいる」
彼の言葉を胸に、俺は決意する。公務員として培った知識と経験、そして持ち前のしぶとさで、この最悪な領地を最高の楽園に変えてみせると。
これは、不遇な貴族と忠実な騎士が織りなす、絶望の淵から始まる領地改革ファンタジー。そして、固い絆で結ばれた二人が、やがて王国を揺るがす運命に立ち向かう物語。
無能と罵った家族に、見て見ぬふりをした者たちに、最高の「ざまぁ」をお見舞いしてやろうじゃないか!
悪役令息(Ω)に転生したので、破滅を避けてスローライフを目指します。だけどなぜか最強騎士団長(α)の運命の番に認定され、溺愛ルートに突入!
水凪しおん
BL
貧乏男爵家の三男リヒトには秘密があった。
それは、自分が乙女ゲームの「悪役令息」であり、現代日本から転生してきたという記憶だ。
家は没落寸前、自身の立場は断罪エンドへまっしぐら。
そんな破滅フラグを回避するため、前世の知識を活かして領地改革に奮闘するリヒトだったが、彼が生まれ持った「Ω」という性は、否応なく運命の渦へと彼を巻き込んでいく。
ある夜会で出会ったのは、氷のように冷徹で、王国最強と謳われる騎士団長のカイ。
誰もが恐れるαの彼に、なぜかリヒトは興味を持たれてしまう。
「関わってはいけない」――そう思えば思うほど、抗いがたいフェロモンと、カイの不器用な優しさがリヒトの心を揺さぶる。
これは、運命に翻弄される悪役令息が、最強騎士団長の激重な愛に包まれ、やがて国をも動かす存在へと成り上がっていく、甘くて刺激的な溺愛ラブストーリー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる