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第一章
第12話:魔境
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神暦3103年王国暦255年1月21日11時:ジャクスティン視点
俺様の居城、ブラッドナイト城のある領都エディソン。
そこから軍馬を駆けさせて一時間の所に魔境がある。
何かあれば魔獣が溢れ出て来るとても恐ろしい場所だ。
「我々騎兵隊が先陣を務めさせていただきます。
公爵閣下は背後から我らをお護り下さい」
俺様を護る親衛騎兵隊の隊長が感情を押し殺した声で話しかけてきた。
彼らは常に俺様の側に付いていてくれる、公爵家最強のベータ騎兵だ。
近衛騎兵隊、正規騎隊の隊員だけでなく、全領民が憧れる最強部隊だ。
「背後は俺様が守ってやる。
今日は襲ってくる魔獣を確実に斃して素材を確保してくれ。
時々ジェネシスが放つ魔術が飛んでくるが、気にするな。
魔術で斃せた魔獣も確保しておいてくれ」
公爵領で生まれ育った者、俺様に忠誠を誓う者であっても、オメガ落ちしたジェネシスが優遇されるのには不信感があるだろう。
内心がどうあろうと、オメガ落ちした者は家族とみなさないのが常識だ。
「聞いたな、できるだけ多くの魔獣を狩って素材を確保するぞ」
「「「「「おう!」」」」」
魔獣を狩った褒美も出ないのに張り切ってくれている。
勤務時間中に狩った魔獣は全て公爵家の物になる。
これが勤務時間外に狩ったものなら、五割の税金分以外は自分の物なのに。
「ソイル!」
ジェネシスが右手で剣に触れながら短縮呪文を唱える。
十枚もの薄鉄に短縮呪文でも発動する魔法陣を刻んである。
だから一枚の鍔で二十個の魔術が発動できるのだ。
「チュウ!」
親衛騎兵の槍が届かない場所にいた灰牙鼠が断末魔をあげて倒れた。
素早く飛び出した騎兵が灰牙鼠を回収してくれる。
魔獣の中では銅貨二百枚ほどの小物だが、前世の貨幣価値なら二万円になる。
「ジェネシス、全て試せ」
二振りの剣にはそれぞれ二十の魔法陣と二つの呪文が刻まれている。
鍔を構成している薄鉄には表裏両面に魔法陣が刻まれている。
刀身の左右は呪文が刻まれている。
「はい、ウッド」
レベル一からレベル三までの下級魔術ばかりだが、使い処さえ間違えなければ、勝負を分ける切り札になる。
そもそも魔力補充すらままならない人間に上級魔術は無意味なのだ。
「ヒール」
ジェネシスが赤角鼠に突っ込まれて傷ついた軍馬に回復魔術をかけた。
後方から負傷した者に回復魔術をかけられる。
基本的に魔術を使わないこの国では、戦略を一変させる出来事だ。
「ソイルアロー」
再び突進しようとした赤角鼠にレベル三の土魔術を放ったが、良い判断だ。
一度傷つけられた軍馬が弱気になっていた。
再調教しないと恐怖を感じたとたんに逃げ出してしまう。
「突撃、一気に狩れ!」
親衛騎兵隊長の号令で、前衛部隊が目の前にいる魔獣達を狩るべく突撃する。
馬上から地上にいる魔獣を一突きできるだけの長槍を、自由自在に操って次々と下級魔獣を狩っていく。
「目の前の魔獣を狩ったら奥に進め」
「「「「「はっ!」」」」」
俺様の命令に従って親衛騎兵隊が馬を駆って魔境の奥に入っていく。
魔法陣を消費せず魔術剣だけを使っているので、俺の魔力以外は利が出ている。
とはいえ、下級魔獣だけでは大した魔法陣も魔道具も造れない。
「遊ぶな、確実に狩ってできるだけ奥に入れ」
俺様の命令を受けて近衛騎兵隊が魔境の奥深くに向かう。
背後から俺様に見られているのが緊張するのだろう。
普段なら素早く狩れる下級魔獣を時間をかけて確実に狩ってる。
「やった!」
先ほどジェネシスに助けてもらった親衛騎兵が無意識に口にしている。
さっきはジェネシスに赤角鼠を狩って助けてもらった形だ。
同じ赤角鼠を狩って、あの時も自分で狩れたと主張したいのだ。
アッオアオオオオオ!
いきなりの雄叫びと共に茶魔熊が現われ突っ込んで来た!
明らかにこちらを狙っている。
前にいる親衛騎兵達が全く目に入っていない。
「俺が盾となる、側面から突け!」
十人の親衛騎兵を配下に持つ親衛騎兵長が言い放つ。
命懸けで俺様を護ろうと言うのだろう。
できるかどうかは別にして立派な決意だ。
「「「「「ウォオオオオオ!」」」」」
十騎の親衛騎兵が、四つ足で駆けてくる茶魔熊を側面から突き殺そうとする。
上手く心臓を貫ければ不可能ではない。
だが、軍馬に匹敵するほどの速度で駆ける茶魔熊を正確に狙えるのか?
「ソイル」
ジェネシスの呪文で茶魔熊の前足の前に土の塊が現れる。
絶妙なタイミングと場所で、茶魔熊も避けようがない。
前足を取られて派手な勢いでひっくり返って転がっていく。
「オウ!」
「「「「「ウォオオオオオ!」」」」」
素早く反応できた一騎が他の九人を出し抜いて茶魔熊の側に駆けつける。
他の九人も負けじと追いかけるが、間に合いそうにない。
予想通り茶魔熊の心臓を一突きで貫く!
アッオアオオオオオ!
確かに心臓を貫かれているにも関わらず、茶魔熊が飛び起きて襲いかかってくる!
素早く馬を操って致命的な一撃を避けたが、軍馬が不安定になっている。
二撃目三撃目を避けるのは無理だろう。
「ウッド」
今度もジェネシスの呪文で茶魔熊の後足の前に木の根が現れる。
あと一歩近づく事ができれば、茶魔熊は道連れを作る事ができただろう。
だが道連れを作る事ができずに勢い余って転がった。
「見事だ」
ジェネシスは木の根を張る向きを一瞬で見極めコントロールしていた。
勢いよく転がる茶魔熊は、誰一人騎兵のいない方向に向かっている。
コントロールせずに魔術を発動していたら、誰かが巻き込まれていた。
「「「「「アッオアオオオオオ!」」」」」
信じられない、周囲に茶魔熊が集まってきている。
群れを作らないはずの茶魔熊が十頭以上固まっている。
魔境に異変が起きているのだろうか?
「「「「「ウォオオオオオン!」」」」」
「「「「「ウォオオオオオン!」」」」」
今度は魔狼だと?
それも進化レベルに関係なく多種多様な魔狼が二百頭以上集まってきているだと?
この前のように誰かが誘導しているのか?
「「「「「アオォオオオオン!」」」」」
「「「「「ウォオオオオオン!」」」」」
魔熊も種族と進化レベルに関係なく集まってきているのか?
魔狼も負けじと集まりこちらに向かってきているだと?!
「ジェネシス、何故俺様の腕の中にいる?」
ジェネシスが近づいている事に俺様が気がつかなかっただと?
なんだ、その濡れた瞳で俺様を見つめるんじゃない!
「お爺様!」
甘く蕩かせるような声で俺様を誘うんじゃない。
そんなに抱かれたいのなら、狂うほどの快楽を与えてやろうじゃないか!
俺様の居城、ブラッドナイト城のある領都エディソン。
そこから軍馬を駆けさせて一時間の所に魔境がある。
何かあれば魔獣が溢れ出て来るとても恐ろしい場所だ。
「我々騎兵隊が先陣を務めさせていただきます。
公爵閣下は背後から我らをお護り下さい」
俺様を護る親衛騎兵隊の隊長が感情を押し殺した声で話しかけてきた。
彼らは常に俺様の側に付いていてくれる、公爵家最強のベータ騎兵だ。
近衛騎兵隊、正規騎隊の隊員だけでなく、全領民が憧れる最強部隊だ。
「背後は俺様が守ってやる。
今日は襲ってくる魔獣を確実に斃して素材を確保してくれ。
時々ジェネシスが放つ魔術が飛んでくるが、気にするな。
魔術で斃せた魔獣も確保しておいてくれ」
公爵領で生まれ育った者、俺様に忠誠を誓う者であっても、オメガ落ちしたジェネシスが優遇されるのには不信感があるだろう。
内心がどうあろうと、オメガ落ちした者は家族とみなさないのが常識だ。
「聞いたな、できるだけ多くの魔獣を狩って素材を確保するぞ」
「「「「「おう!」」」」」
魔獣を狩った褒美も出ないのに張り切ってくれている。
勤務時間中に狩った魔獣は全て公爵家の物になる。
これが勤務時間外に狩ったものなら、五割の税金分以外は自分の物なのに。
「ソイル!」
ジェネシスが右手で剣に触れながら短縮呪文を唱える。
十枚もの薄鉄に短縮呪文でも発動する魔法陣を刻んである。
だから一枚の鍔で二十個の魔術が発動できるのだ。
「チュウ!」
親衛騎兵の槍が届かない場所にいた灰牙鼠が断末魔をあげて倒れた。
素早く飛び出した騎兵が灰牙鼠を回収してくれる。
魔獣の中では銅貨二百枚ほどの小物だが、前世の貨幣価値なら二万円になる。
「ジェネシス、全て試せ」
二振りの剣にはそれぞれ二十の魔法陣と二つの呪文が刻まれている。
鍔を構成している薄鉄には表裏両面に魔法陣が刻まれている。
刀身の左右は呪文が刻まれている。
「はい、ウッド」
レベル一からレベル三までの下級魔術ばかりだが、使い処さえ間違えなければ、勝負を分ける切り札になる。
そもそも魔力補充すらままならない人間に上級魔術は無意味なのだ。
「ヒール」
ジェネシスが赤角鼠に突っ込まれて傷ついた軍馬に回復魔術をかけた。
後方から負傷した者に回復魔術をかけられる。
基本的に魔術を使わないこの国では、戦略を一変させる出来事だ。
「ソイルアロー」
再び突進しようとした赤角鼠にレベル三の土魔術を放ったが、良い判断だ。
一度傷つけられた軍馬が弱気になっていた。
再調教しないと恐怖を感じたとたんに逃げ出してしまう。
「突撃、一気に狩れ!」
親衛騎兵隊長の号令で、前衛部隊が目の前にいる魔獣達を狩るべく突撃する。
馬上から地上にいる魔獣を一突きできるだけの長槍を、自由自在に操って次々と下級魔獣を狩っていく。
「目の前の魔獣を狩ったら奥に進め」
「「「「「はっ!」」」」」
俺様の命令に従って親衛騎兵隊が馬を駆って魔境の奥に入っていく。
魔法陣を消費せず魔術剣だけを使っているので、俺の魔力以外は利が出ている。
とはいえ、下級魔獣だけでは大した魔法陣も魔道具も造れない。
「遊ぶな、確実に狩ってできるだけ奥に入れ」
俺様の命令を受けて近衛騎兵隊が魔境の奥深くに向かう。
背後から俺様に見られているのが緊張するのだろう。
普段なら素早く狩れる下級魔獣を時間をかけて確実に狩ってる。
「やった!」
先ほどジェネシスに助けてもらった親衛騎兵が無意識に口にしている。
さっきはジェネシスに赤角鼠を狩って助けてもらった形だ。
同じ赤角鼠を狩って、あの時も自分で狩れたと主張したいのだ。
アッオアオオオオオ!
いきなりの雄叫びと共に茶魔熊が現われ突っ込んで来た!
明らかにこちらを狙っている。
前にいる親衛騎兵達が全く目に入っていない。
「俺が盾となる、側面から突け!」
十人の親衛騎兵を配下に持つ親衛騎兵長が言い放つ。
命懸けで俺様を護ろうと言うのだろう。
できるかどうかは別にして立派な決意だ。
「「「「「ウォオオオオオ!」」」」」
十騎の親衛騎兵が、四つ足で駆けてくる茶魔熊を側面から突き殺そうとする。
上手く心臓を貫ければ不可能ではない。
だが、軍馬に匹敵するほどの速度で駆ける茶魔熊を正確に狙えるのか?
「ソイル」
ジェネシスの呪文で茶魔熊の前足の前に土の塊が現れる。
絶妙なタイミングと場所で、茶魔熊も避けようがない。
前足を取られて派手な勢いでひっくり返って転がっていく。
「オウ!」
「「「「「ウォオオオオオ!」」」」」
素早く反応できた一騎が他の九人を出し抜いて茶魔熊の側に駆けつける。
他の九人も負けじと追いかけるが、間に合いそうにない。
予想通り茶魔熊の心臓を一突きで貫く!
アッオアオオオオオ!
確かに心臓を貫かれているにも関わらず、茶魔熊が飛び起きて襲いかかってくる!
素早く馬を操って致命的な一撃を避けたが、軍馬が不安定になっている。
二撃目三撃目を避けるのは無理だろう。
「ウッド」
今度もジェネシスの呪文で茶魔熊の後足の前に木の根が現れる。
あと一歩近づく事ができれば、茶魔熊は道連れを作る事ができただろう。
だが道連れを作る事ができずに勢い余って転がった。
「見事だ」
ジェネシスは木の根を張る向きを一瞬で見極めコントロールしていた。
勢いよく転がる茶魔熊は、誰一人騎兵のいない方向に向かっている。
コントロールせずに魔術を発動していたら、誰かが巻き込まれていた。
「「「「「アッオアオオオオオ!」」」」」
信じられない、周囲に茶魔熊が集まってきている。
群れを作らないはずの茶魔熊が十頭以上固まっている。
魔境に異変が起きているのだろうか?
「「「「「ウォオオオオオン!」」」」」
「「「「「ウォオオオオオン!」」」」」
今度は魔狼だと?
それも進化レベルに関係なく多種多様な魔狼が二百頭以上集まってきているだと?
この前のように誰かが誘導しているのか?
「「「「「アオォオオオオン!」」」」」
「「「「「ウォオオオオオン!」」」」」
魔熊も種族と進化レベルに関係なく集まってきているのか?
魔狼も負けじと集まりこちらに向かってきているだと?!
「ジェネシス、何故俺様の腕の中にいる?」
ジェネシスが近づいている事に俺様が気がつかなかっただと?
なんだ、その濡れた瞳で俺様を見つめるんじゃない!
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