聖賢者は悪女に誑かされた婚約者の王太子に婚約を破棄され追放されました。

克全

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第一章

第5話:戦闘士アレクサンドロス初戦

「さあ、今日の第一試合は新人同士の対戦となります。
 東から登場は、戦闘士として成り上がる事を夢見て、王都出身の平民から剣士となったグドレル。
 西から登場するのは、南の辺境から皇都で立身出世を目指してやって来た、未開の蛮族戦士アレクサンドロス」

 随分と馬鹿にした紹介だが、これが初戦の新人同士ならしかたがないのだろう。
 それにこの試合は殺人が禁止されている、皇都闘技場にしてはお遊戯のような戦いだと、最初に説明があった。
 金を賭ける事はできるが、後半の試合ほど面白い取り組みも多いから、掛け金の総額もそれほど高くはない。
 実際俺も自分が勝つ方に金を賭けたが、金額を上げ過ぎて旨みが少ない。

「この試合は俺が絶対に勝つ!」

 グドレルという男が俺を威嚇してきた。
 まがりなりにも戦闘士で成り上がろうとするほどの男だ。
 俺の強さを肌で感じていて、逃げ出したい気持ちを奮い立たせているのだろう。
 身長は一八五センチ程度で、均整の取れたいい筋肉をしている。
 手にできた剣ダコと足の運びを見れば、闘技場のお膝元と言える皇都の平民が、戦闘士になる決意ができるくらい、不断の努力を重ねてきたことが分かる。

「はじめ!」

 レフリーと言うべきなのか、それとも立会人と言うべきなのか、進行役の男が試合開始を宣言したが、俺からは攻撃しない。
 聖賢者の嗜みとして、魔法袋には全財産を入れていたから、生活に困るような事はないが、これからのためには金はあればあるほどいい。
 皇都に辿り着くまでの間に、変化した後の実力を確認するために、多くの魔獣を斃して販売した利益もあるが、闘技場で自分に金を賭け続けて、莫大な資金を稼ぐ予定なのだ。

「死ね!」

 相対する俺に対する恐れと恐怖なのだろう。
 殺人が禁止されている試合にもかかわらず、グドレルが突きを放ってきた。
 簡単に見切って躱すことができるのだが、観衆受けするように、ギリギリで躱す。
 右、左、左、右、右、右、下、右と、必死で逃げているように見せかける。
 初戦をギリギリで勝ったように見せかければ、次の試合ではこれの評価が低くなるから、常に自分が勝つ方に賭ける俺には有利だ。

 何時でも、何度でも、グドレルを一刀両断にできるのだが、それでは俺の強さが際立ってしまうから、そんな事はやらない。
 皇国の権力者、中枢に名前を売るだけなら、圧倒的な強さを見せつけて勝ち続ければいいのだが、それでは誰をどう殺せばいいのか調査する前に、不適格な権力者と繋がってしまうかもしれない。

 殺すべき相手が確定するまでは、あまり目立たない予定なのだ。
 だから今回の勝ちも、運で勝ったように見せかける。
 攻撃仕掛けてきているグドレルを休ませず、殺気を送って足腰が立たなくなるまで無理矢理動かして、脚がもつれてこけた所を気絶させる。
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