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ローファン王国・ビラン街

杞憂

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「あの、ミノル様が人間ではなくても、全然問題はないんですが? と言うか、ミノル様が普通の人間だなんて、最初から思っていませんでした」

「へぇ? なんで?」

「普通の人間が、単独でジャイアント・レッドベアーを狩れるはずがあません。冒険者や冒険者ギルドの職員で、ミノル様を純粋な人間だと思っている者は、1人もいないはずです」

「え~と、だったらオードリーは俺を何だと思っていたの?」

「そうですね、私は見たことも聞いた事もありませんが。ハイエルフがいるように、人間種にもハイヒューマンがいて、ミノル様はハイヒューマンみたいな方だと思っていました」

「それでも俺の子供を産んでくれる気だったんだ?」

「愛することに人種は関係ありませんよ、ミノル様。私はミノル様を愛したのであって、種族などは関係ありません」

「そうか、ありがとう」

「それで、ミノル様が人間でないことの、問題とは何なんですか?」

「え~とね、俺が人間じゃないから、オードリーに宿った子供が、オードリーから魔力や体力を奪うんじゃないかと心配になったんだよ」

「まぁ! それは大変です! 私ではミノル様の子供を産むことができないのでしょうか!」

「いや、その、まだそれがはっきりしないんだ。オードリーに宿った子供が、オードリーから魔力を必要にするのか、それともハーフエルフやハーフデビルのように、特に母親から魔力を必要としないのか、妊娠してみないと分からないんだよ」

「失礼な事を聞くようですが、ミノル様の父上様や母上様に、お聞きする事はできないのでしょうか?」

「残念だけど、もう同族とは連絡できないんだ」

「そうなんですか、それは残念です。もし死ぬことになっても、ミノル様の子を産む決意に変わりはないですが、無事に産むことができるかどうかが気掛かりです」

(ミノルは息をするように嘘をつくな)

(全部セイの所為だろうが!)

(すまんすまん、まあオードリー不安がらせる事はないのではないか? 早く何かあった時のために、従魔と交代で、つきっきりで見守ると言ってやれ)

(そんな事は言われなくても分かっているよ)

(そう言う割には、言いよどんでいたようだが?)

(うるさい!)

「ミノル様、どうかなされたのですか?」

「いや、ちょっと考え事をしていてね」

「他にも心配事がおありなのでしょうか?」

「ないないない、オードリーと俺の間にできる子供以上の、心配事などないさ」

「まあ、そう言って頂けたら嬉しいです」

「それでなんだが、俺にはモンスターの従魔がいるんだけど、俺とそいつでオードリーと子供を見守ろうと思うんだ」

「ミノル様が従魔と一緒に、私と子供を見守って下さるんですか?!」

「ああ、そうしたいんだが、従魔と一緒に暮らすのは嫌かな?」

「そんなことはありません! ミノル様に従魔がいた事に驚いただけでございます。ですがもう落ち着きました、どうか私にミノル様の従魔を紹介して下さい」
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