奴隷魔法使い

克全

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王都編

強権

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 王家・王国は、王都の貴族・士族屋敷の家老・用人に総登城を命じた、集まった者達に前日秘密会議で決められた内容が下達された。

 唐津子爵家と飯豊男爵家で武芸仕官枠以外に、内政枠で新規採用が無制限で行われるとの内容に、総登城した者達は狂喜乱舞した。

 確かに条件は厳しい、仕官後に赴く任地は今後の加増も考え、蝦夷から九州までどこになるかが分からない。期間も1代限りの抱席だ、しかし精勤で子を1人前に教育すれば、子弟は新規召し抱えしてもらえると言う。扶持は武芸仕官枠よりも悪いが若党や貧乏貴族家の卒族よりは好待遇だ。

 念話で国元と連絡のつく貴族家・士族家は、急遽家臣子弟を送るように指示を出した。念話の出来る家臣がいない家は親類縁者など伝手を頼って連絡網を構築した。

 しかしこの件に関しては王家・王国は親切だった、腹に併合策があるから当然なのだが、念話の使える者を配置している各地の直轄城砦・郡代所・代官所から、周辺の貴族家・士族家へ伝令が走ったのだ。

 俺と彩は長崎での競売や新規狩場での人材育成、自分達の魔力鍛錬や秘密兵器の開発、紅鋼玉・青鋼玉・金剛魔石などの生産に忙しく働いていた、だが彩が1番気に掛けやりたかったのは、朝鮮での和人奴隷救出だった。

 「尊、もっとお金をかけて買い戻す事は出来ないの?」

 「そうすると奴隷の相場が上がってしまうんだ、そうなると出口が開いたままの状態だと、どんどん王国から奴隷として人が売られてしまうんだ。」

 「琉球大公国のこと?」

 「ああ、それと蝦夷だ、松前男爵家からも人が売られていくと思う。」

 「唐津を抑え、長崎を塞いだだけでは駄目なのね。」

 「もう少し頑張らないといけない、まずは蝦夷の松前家を転封させる事だ。」

 「早まりそうなの?」

 「多分ね、魔法使い達が大挙して仕官してきただろ。」

 「意外と王家・王国には仕官しなかったね。」

 「自由が好きで市井の魔術師として生きて来た人や、練達の魔術冒険者だからね、堅苦しい宮仕えは嫌だったんだろ。」

 「私達の所なら堅苦しくないってこと?」

 「先に仕官して来た人達から情報が行っているんだろうね、多摩冒険者組合出身の家臣達が好意的な情報を流してくれているんだろうね。」

 「確かに多摩領の家臣達は自由に暮らしているものね。」

 俺と彩の所領には多くの冒険者家臣が住んでいる、この国の基準で言えば辺境伯クラスの収入があるる者すらいる、それくらい魔境での狩りの収入は莫大だ、非常時には彼らを家臣として動員することは出来る、だがそれは経済的には大きな損失だ、彼らには狩りを続けて貰い、彼らが納める献上金で将兵を雇う方がいい。彼らの戦闘力でしか太刀打ちできない敵が現れなければだが。

 数日後に王家・王国は強権を発動した、松前士族家に移封を申し渡したのだ。松前家の家臣団は士族229家・卒族96家・在地役家24家で、彼らの生活を保障するには魔境に接した領地が必要だった。

 王家は更なる強権を発動した、松前士族家の移封先を弘前伯爵家としたのだ、松前士族家は広大な蝦夷地を取り上げられ実質収入は減るのだが、家格的には士族家から準男爵家に格上げになった。しかし1万石の所領を削られた弘前伯爵家は9万石になってしまう、そうなると伯爵家の基準を満たす事が出来ず、子爵家に降格となってしまう、当然替地が与えられることになるのだが、今回は蔵米を支給する事で話がついた。

 無理に替地を探すと、王国の蔵入り地をあてがうか、更なる転封を伴う領地替えを行う事になってしまう。松前士族家に関しては、全ての城地を奪う事になるので、替地を与えなければ貴族家としての資格を全て失ってしまうことになる、だが弘前家なら9割の城地が残るので問題は少ない。

 これに今回は家格の問題で表向きは蔵米支給になっているが、実質的には金銭を支給するのだ。貨幣経済が浸透しだした王国では、領地で採れた米を売って金銭を得て、その金銭を使って貴族家の運営を行っている。

 弘前家も冷害で不作の時などは飢饉を起こしていると噂もあり、毎年確実に定額の金穀が支給されるのは悪い話では無かった。まして米と銭を好きな割合で請求出来るのは助かる制度だった、今後は王都の屋敷の為に、国元から金穀を送る量を減らす事が出来るのだ。

 数日後俺と彩は朝鮮の和館にいた。

 『朝鮮・草梁倭館』

 「芳洲、和人奴婢の解放はどうなっている?」

 「31人の和人奴隷を解放することが出来ました、次の船が和館に着きましたら対馬に送り届ける予定でございます。」

 「大丈夫よ、私と尊が帰る時に一緒に連れて帰るわ。」

 「噂の盥空船でございますか?」

 「いえ新しい魔法陣を描いて簡易大型盥空船を創り出したの。」

 「飯豊男爵閣下、31人全員を1度に運ぶ事が出来るんですか? それは凄い事でございます!」

 雨森芳洲は心底驚いていた、今までは個人で飛行して来ていた、そうでないと朝鮮王国を刺激すると思っていたからだ、だが俺と彩の勇名は鳴り響いていた、盥空船の噂も既に伝わっていた、そうなると寧ろ示威として空船は見せた方がいいだろうと結論が出た。

 だが既存の盥空船は輸送力に限りがあった、そこで輸送人数・輸送量を重視し、居住性・防御力・攻撃力を減らした大型の盥空船を創作することにした。

 それが半径100m盥空船だ。
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