奴隷魔法使い

克全

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王都編

八面六臂

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 『朝鮮・草梁倭館』

 「芳洲、相変わらずの惨い有様だな。」

 「この国の身分制度ですから、我らにはどうしようもありません。」

 「ですが芳洲、我々なら何とかできるのではありませんか。」

 「戦争を起こしてこの国を併合するのでしょうか?」

 「そのような事を申しているのではありません、金銭でもっと奴隷を買い集めるのです。」

 「駄目だよ彩、以前も言っただろ奴隷相場が上がって、琉球大公国と蝦夷地から奴隷が売られてしまうよ。」

 「でも尊、蝦夷地は私達の領地になったわ、後は琉球大公国を併合してしまえばいいわ。」

 彩は朝鮮国で和人奴隷の惨状を見て以来人が変わった、俺の呼び名も旦那様から尊と対等になっている。これは独自で男爵位を得た事もあるだろうが、自分が和人奴隷を助け出すんだと言う決意したのが大きいのだと思う。

 「もう少しだけ待とう、琉球大公家との交渉を終えたら、新規の狩り収入を全て投入してでも和人奴隷を買い戻してもいいから。」

 「わかったわ。」

 近くで静かに話を聞いていた、芳洲をはじめとする対馬伯爵家の家臣達が驚愕している。まあ当然だろう、彼らは草梁倭館で競売されている俺と彩の狩り収入を知っている。それこそ朝鮮王家の全財産より多いだろう。

 俺と彩は時間の許す限り朝鮮国内を巡って和人奴隷を捜し回り、ダミーの朝鮮人奴隷121人と和人奴隷17人を購入して草梁倭館に戻った。


 『蝦夷地・渡島半島・松前半島・福山』

 俺と彩は100m盥空船を使って蝦夷地に渡った。

 松前家和人給地では、漁民からの現物税の徴収権があり地方知行とほぼ同様な形態であったが、和人地の大半は松前藩の蔵入地だったため、家臣の大半の給地は蝦夷地にあった。また、その給地内においても採金、鷹待、鮭鱒漁、伐木等の権利は全て藩主に属した。家臣の知行主に認められていたのは、年1回自腹で船を仕立てて交易することのみであった。

 蝦夷地でのアイヌとの交易は上手くやれば莫大な利益を手に出来る、だが一方下手をすれば利益どころか大きな損失を出してしまう。転封された松前士族家の家臣達は、決まった扶持が支給されることになって喜んでいた。

 「彩、魔力の半分を使って松前館を城にする。俺はまず総囲いや中濠・内濠を創り出す。」

 「分かったわ尊、私は長屋兼用の城壁や隅櫓を創り出すわ。」

 俺は元からある街に影響が出ないように配慮して基礎を築いた。元からの松前館の敷地を最大限に利用して、内濠と西洋式の巨大な内城を築いた。

 城壁の材質は圧縮強化岩壁で、外側は空気穴兼用の鉄砲狭間・弓狭間が無数に空いている。城壁内側は広い武者走り(室内の廊下)で、迎撃の兵と通行の兵が同時に利用できるほどの広さだった。

 武者走りの内側が家臣達が利用する部屋になっていて、最内は太陽光と空気を採り入れる為の中庭になっている。

 中濠は町屋や武家屋敷のあった場所を全て包み込むように堀り、総囲いの外濠は海と連結させ、艦艇を駐留させる湊を内包する防波堤と総囲いの城壁が兼用となっていた。

 「後は任せたぞ。」

 「はい、御任せ下さい。」

 (尊、大丈夫かな?)

 (土御門家の紹介状もあるから大丈夫だと思うよ。)

 俺と彩は魔力の半分を費やして松前城の基礎を完成させ、後の城下の政治経済は新規に召し抱えた家臣団100人に一任することにした。

 採用したのは王国の経済と統治を担って来た士族家・卒族家の2男以降の部屋住みだ。彼らは養子縁組が纏まらない限りは、家の厄介者として1部屋と食事を与えられて、妻を迎える事も子を設ける事も出来ずに朽ち果てて行くだけの存在だった。

 中には平民となって冒険者・商人として身を立てる者もいるが、殆どの者は生まれ持っての身分を捨てる決断が出来ず、士族・陪臣士族・卒族・陪臣卒族への養子縁組を願って精進していた。特にコンピューターなど無い時代世界だ、算盤が出来て経理が出来る者は新規採用される可能性すらあった。

 衣食住保証で日給50銅貨・衣装は大和家のお仕着せを支給・食事は賄で一汁三菜を3食・住居は三間長屋で四畳半の畳間と一畳半の土間と言う待遇に希望者が殺到した。


 『飯豊魔境・朝日魔境』

  「勘解由小路殿、左旋回が遅い!」

  「は!」

  「幸徳井殿、まだ後ろの警戒が甘い!」

  「は!」

  「倉橋殿、そのように反応が遅いなら早期発見に務める!」

  「は!」

 (彩、少しはマシになってる?)

 (はい、大量に仕官してきた冒険者魔法使いの指導がよかったようです。)

 (そうか、ならここは彼らに任せて次に行こう。)

 (はい!)


 『太平魔境』

 「シズナ、よくなったがもっと早く!」

 「はい!」

 「スミエ、周囲の注意と狩りを両立を目指す!」

 「はい!」

 「タエ! 気を緩めない! 死ぬよ!」

 「はい!」

 「チナ、降下の時は地面との距離に注意! 追い込まれると死ぬよ!」

 「はい!」

 (尊、この子達の方が坊ちゃん達より覚えが早くない?)

 (そうだね、この子達ならそろそろ単独で狩りが出来るだろうね。)

 (やっぱり世間の荒波に鍛えられてる分根性があるのかな?)

 (そうかもしれないね、まあ後は冒険者魔法使い達に任せて次に行こう。)

 (はい。)


 『白神魔境』

 「東儀殿、風魔法に集中して速さを確保する、死ぬぞ!」

 「はい!」

 「大黒殿、魔道具に集中する!」

 「はい!」

 「引田殿、防御魔法陣はもっと早く張る、その為にはボスの気配に注意する!」

 「はい!」

 「布勢殿、その調子だ。」

 「はい、ありがとうございます。」

 (尊、やはり坊ちゃん達は甘いね。)

 (囮や非常時の防御は、しばらくは冒険者魔法使い頼みだな。)

 (この子達じゃ、自分達だけでなく狩り方まで巻き添えにしかねないね。)

 (まあ冒険者魔法使いが沢山仕官してくれたんだ、任せるところは任そう。)

 (そうね! 和人奴隷の方に集中したいものね。)

 (ああ、次に行こう。)

 『早池峰魔境』

 ここでも赤星家・玖珂家・小笠原家・嵯峨家・八幡流・日直家・鬼貫家・引佐名倉家・高橋家・中尾家・安曇家の魔法使い達が実戦訓練に勤しんでいた。

 (ここもまだまだだね。)

 (はい、でもこれだけの魔法使いが指揮下に入ってくれたら、私達が囮や狩りをする必要がないですね。)

 (ああ、明日は次の段階に進もう。)

 (はい!)
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