奴隷魔法使い

克全

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王都編

琉球大公家・薩摩辺境伯家処分

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 『王都・空屋敷』

 琉球大公国(12万石)に対して侵攻準備が着々と進められていた。貴族家・士族家・卒族家の部屋住み子弟が、表向き唐津子爵家・飯豊男爵家の採用試験として大量に動員された。そして彼らには戦死も有り得る実戦試験と伝えられ、鎧兜を装備した上で王都の空屋敷に集められた。

 彼らが琉球大公国の領民に乱暴狼藉を働かないように、色町の女達も徴用された。彼女達も王都の空屋敷に集められていた。

 「私は唐津子爵である、今日は貴君らに実戦参加してもらうが、覚悟の無い者がいれば直ちに家に帰ってもらいたい。」

 「・・・・・」

 「皆覚悟があるのだな、ならばこれからの実戦指揮は侍大将の山本秀子に取ってもらう。」

 「私が今回の総大将を務める山本秀子だ、左右にいる者達が組頭として貴様らの直接上官になる者達だ、先ずは実戦の覚悟の出来ている者、弓の使える者は秋山信治について行け。」

 山本秀子の左右に控えていた男の1人が前に出た。

 「弓組頭の秋山信治だ、弓の使える者は俺の配下となる、ついてこい。」

 秋山信治は庭に出てどんどん先に行ってしまう、あっけに取られていた実戦試験希望者たちは、互いに顔を見合わせている。

 「弓での採用を望む者、急がんと参加すら出来んぞ!」

 山本秀子の怒声に、バラバラと秋山信治の後を追う者が出て来た。

 「槍の使える者は宮藤昭信について行け。」

  またも山本秀子の左右に控えていた男の1人が前に出た。

 「槍組頭の宮藤昭信だ、槍の使える者は俺の配下となる、ついてこい。」

  言うなり秋山信治も庭に出てどんどん先に行ってしまう、慌てて多くの実戦試験希望者たちが追いかける。

 「刀で戦う者は小野要蔵について行け。」

  今度も山本秀子の左右に控えていた男の1人が前に出た。

 「剣組頭の小野要蔵だ、剣の使える者は俺の配下となる、ついてこい。」

 残っていた者のほぼ全員が出ていったが、僅かに5人の者達がその場に残っていた。

 「貴様たちは何だ?」

 「私は軍師の竹中重義でございます。」
 「私は財務希望の木戸市蔵でございます。」
 「私も財務希望の山岡鉄三でございます。」
 「私も財務希望の森川百造でございます。」
 「私も財務希望の石田菊蔵でございます。」

 「そうか、竹中重義殿、今回は軍師の採用はない、財務で実戦試験は参加可能だが、不本意なら帰ってくれ。」

 「財務で実戦試験に参加させて頂きます。」

 「そうか、ならば北畠計盛について行け。」

 まだ山本秀子の左右には人が控えている、その内の1人が前に出た。

 「財務組頭の北畠計盛だ、ついて参れ。」

 「殿様、竹中重義と名乗った者ですが、あれで宜しかったですか?」

 尊に秀子が話しかけた

 「ああ、あれでいい、少しでも採用の可能性を上げようと努力しているのかもしれないし、どうしようもない愚か者かもしれない、実戦に叩き込まれれば性根が分かる。」

 「左様でございますね。」

 尊と彩はそれぞれ100m盥空船を使って、実戦試験希望者たちを琉球大公国まで緊急輸送した。それを百回以上繰り返し、兵員・兵糧・軍需物資を運び込んだ。


 『琉球大公国・首里城』

 首里城外に広大で強力な防御力を誇る野戦陣地が築かれている。初回の移動の後、尊が魔法を駆使して逸早く濠・城壁・長屋・館を建造したのだ。実戦試験希望者たちは全員そこに入って、首里城の接収に備えた。

 (土御門筆頭魔導師殿、琉球大公国に兵力展開が終わりました。)

 (御疲れ様です唐津次席大臣殿、では予定通り陛下から王都に駐留する、琉球大公家家老と薩摩辺境伯家家老に、琉球大公国の接収と領地替えを通告します。)

 (では終わったら念話願います。)

 (承った。)

 (尊どうなった?)

 (大丈夫だよ、土御門殿の話では順調に進んでいるよ。)

 (そうか、それなら安心だね。蝦夷地は私達が押さえてるし、琉球大公国も押さえることが出来たら、御金に糸目をつけずに和人奴隷達を買い戻せるね。)

 (そうだね、1日でも早く皆を助け出してあげたいね。)

 (うん!)

 「秀子、後は任せるが、兵達が領民に乱暴狼藉をさせないようにしてくれ。」

 「は! 承りました。」

 王国には8万騎と評された士族卒族の兵団が存在した。王国創世期には全家士族家卒族家が戦闘に秀でたものだったが、今では時代に合せて当主や嫡男は文官化してしまい、戦闘に不向きな家も多い。しかしながら、部屋住みの子弟は違う、何かに秀でていなければ厄介者として生きて行くしかないのだ。

 戦死の恐れのある実戦試験と言われていたが、その分採用人数も今までより多く1000人規模と公表されていた為、5000人もの希望者が殺到していた。


 『王都・王城・間部筆頭大臣・薩摩辺境伯家王都家老・琉球大公家王都家老』

 「金城連、加治木元吉、面を上げよ。」

 「「は!」」

 「これより王国の決定を伝える。」

 「「は!」」

 「琉球大公家は、領民を奴隷として異国に売り払った罪で、子爵家5万石に減封転封を命ずる。」

 「え?!」

 「薩摩辺境伯家は、領民を奴隷として異国に売り払いに加担した罪により、日向国諸県郡・大隅国・奄美群島を減封し31万石の辺境伯家とする。」

 「え!?」

 「「御待ち下さい!」」

 上意下達(じょういかたつ)だけをして部屋から出ようとした間部筆頭大臣に、2人の王都家老は必至に取りすがった。いや薩摩辺境伯家の王都家老・加治木元吉は、表向きは取りすがったような姿を見せているが、本心は開戦も辞さない覚悟で挑んでいた。

 「待つのはよいが、王家・王国の決定は覆らんぞ。」

 「しかしながら間部筆頭大臣閣下、無実の家を処分するなど間違った御政道でございます。」

 「加治木! 貴様が多摩奴隷冒険者千人頭の黒磯に、肝属用人を使って奴隷を売買させていたのは調べがついておる。」

 「濡れ衣でございます! そのような覚えは御座いません。」

 「無駄じゃ、唐津子爵の眼を誤魔化す事など出来ん。捕縛された者達の自白も取れているし、南蛮・南方・清国・朝鮮に売られていた奴隷達も、唐津子爵と飯豊男爵が買い戻している、その元奴隷達からの証言も取れているのだ。」

 「「まさか!」」

 「これ以上の抵抗は減封や転封では済まなくなるぞ!」

 「いえ、産まれ卑しき者達の証言と、我ら陪臣とは言え士族誓言誓紙のどちらを信じられるのですか!」

 「止めておけ! それ以上言うと唐津子爵と飯豊男爵の逆鱗に触れるぞ、既に両家は兵を琉球大公国内に運び終え、何時でも琉球大公家・薩摩辺境伯家を攻め滅ぼせる体制を整えておる。」

 「「な!」」

 「1000兵採用の実戦試験が行われたのは知っているだろう、あれは今回の討伐を前提にしておる、昨日までで5000を超える者達が参加しておる、琉球大公家と薩摩辺境伯家の処分が公表されれば、2万や3万の希望者が集まるのは必定じゃ。」

 「それはどういう意味でございますか?」

 琉球大公家・王都家老・金城連は意味が分からず問い返した。

 「唐津子爵は今回の犯罪摘発と、その後の領地受け渡しに多大な功績がある。しかも異国との交易には彼らの狩った魔獣魔竜が必要不可欠だ。今後の密貿易取り締まりも含め、琉球領は唐津子爵が封じられる。」

 「そんな! 琉球は我らウチナンチュウーのものです!」

 「もはや遅い、王家が間引きを防ぐ為に設けた救済奴隷以外に、如何なる者も奴隷を持つことは禁止されている、まして人身売買などもってのほかだ!」

 「間部筆頭大臣閣下、薩摩辺境伯家が冤罪には貴族家の誇りに掛けて戦をすると申したら、いったいどうなされるのですか?」

 「唐津子爵と飯豊男爵が根切りにすると言っていた、己の魔力と狩り貯めた魔獣魔竜の魔晶石を全て使い切っても、琉球大公家と薩摩辺境伯家を滅ぼすと宣言しておる。」

 「領地の辺境伯と連絡させて頂いてよいでしょうか?」

 「急げよ、唐津子爵と飯豊男爵はこの日を一日千秋の想いで待ち続けていたのだ、お前達を殺す事を毎日毎夜願い続けていたのだ、合戦が始まれば一切の容赦はないぞ!」

 「御免!」

 「私も!」

 加治木元吉と金城連は急いで王城を下がり、自分達の屋敷から領国に連絡を取ろうと出て行った。
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