侯爵令嬢はデビュタントで婚約破棄され報復を決意する。

克全

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3章

53話

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「近衛兵!
 ヒルメス王子を逮捕拘束しなさい!」

「おのれ!
 この雌豚が!
 股を開かなければ国を護れない売女が!」

「な!
 なんという事を!」

 皆が凍り付いています
 副大使は思わず言葉をこぼしています。
 トマスは顔面蒼白です。
 ハンザも顔面蒼白ですが、仮面のような表情の中に、思案しているのが窺えます。

「不敬罪も追加です!
 厳重に拘束し、必要なら殺さない程度に手足を斬り飛ばしても構いません」

「な!
 おのれ!
 腐れ雌豚が!
 ウギャォ」

 我慢の限界に来ていたのでしょう。
 近衛騎士が手加減なしにヒルメス王子の顔面を殴りつけました。
 鍛え抜かれた大兵かと思っていましたが、見掛け倒しの張子の虎のようです。
 少なくとも我が国の一般的な近衛兵の足元にも及ばないですね。

「どうか、どうか、どうか御許しください。
 ヒルメス殿下には厳しく言い聞かせますので、何卒御寛恕願います」
 
 副大使が這いつくばるように謝っていますが、今回の件を見逃せば、我が国の威信は地に落ちるでしょう。

「分かりました。
 ドレイク王国は大切な同盟国です。
 よほどのことがない限り、特別な配慮をするのは当然ですね」

 副大使が安堵の表情を浮かべています。
 トマスは私の性格が分かっているのでしょう。真っ青です。
 ハンザも引き攣る顔を抑えきれていませんね。

「トマス!」

「はい!」

「今の件、過去の行状も含め、一言一句違える事無くオレイク王に伝えよ。
 誤魔化しや偽りは一切許しません。
 我が命に叛いた時は、近衛軍を率いてペラム伯爵家を攻め滅ぼし、領地は協力してくれた貴族に分け与えます。
 分かりましたね!」

「おおおおおお!」

 多くの貴族が期待の眼を向けています。
 ペラム伯爵家の地位と領地は垂涎の的でしょう。
 それに、オレイク王国との貿易を独占してきたペラム伯爵家の財産は莫大です。
 戦争になれば早い者勝ちで略奪が可能です。

「しかと、しかと承りました。
 一言一句違える事無く、正確に伝えて参ります。
 過去のヒルメス殿下の行状も、隠す事なく伝えて参ります」

 嘘偽りは無いようですね。
 それでも駄目押しはしておくべきでしょう。

「協力する気のある貴族は戦争の準備をしておいてください。
 ですが簡単に考えてもらっては困ります。
 ドレイク王国との全面戦争も覚悟しておいてください。
 ドレイク王国におもねる心算なら、参戦しなくて結構です」

「おおおおおお!」

「御任せ下さい!
 ドレイク王国の王子がホワイト王国の貴族士族の前で摂政殿下をここまで愚弄したのです!
 これは宣戦布告の何物でもありません。
 これで剣をとらなければ貴族士族の名誉は地に落ちます。
 そのような者はさっさと寝返るか隠居すればいいのです。
 ペラム伯爵家を攻め滅ぼした返す刀で討ち滅ぼしてやりましょうぞ!」

 トビアスが張り切っていますね。
 半ば演技なのでしょうが、助かります。
 後はハンザへの対応ですね。
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