スライム従魔司というスキルが神与されたので、王太女との婚約は破棄され、実家からは追放され、刺客を放たれた。

第３章

第47話：クラン設立

「ああ、そうなのだよ、新たにクランを設立しようと思っているのだよ」

　俺は単刀直入の目的を伝えた。

「リドワーン様が冒険者クランを設立されると言う事は、キングスライムを使って大魔境で狩りをされると言う事でしょうか」

「それもある、それもあるが、一番の目的は、今不遇な環境にいるスライム従魔士を救う事だ。
　彼らはとても苦しんでいると聞いているからね」

　俺の言葉にマスターが困った表情を浮かべている。
　彼はマスターに任命されるくらいだから、冒険者としてもそれなりの実績があり、王家か有力貴族の知己を得るだけの社交性もあるのだろう。

　貴族や士族の隠し子かもしれないし、一族の端に連なるものかもしれない。
　そんなマスターには、冒険者としても力不足で、職人や農民をするにも力不足なスライム従魔士の悲哀は分からないだろうな。

　まあ、俺にも想像するくらいしかできないのだが。
　その想像できるかどうかが、とても大きな違いだと俺は思う。

「一般的なスライム従魔士は１頭のスライムしか従魔にできないと聞いている。
　その１頭もレベル９までのスライムに限られていると聞いている。
　だが俺は数多くのスライムを従魔にできている。
　レベルもレベル９どころか、キングスライムすら従魔にできている。
　俺以外のスライム従魔士に、どれくらいに進化したスライムを何頭従魔にできるのかは分からないが、クランに入る者には俺の従魔を貸し与えて仕事ができるようにしてやりたいのだ。
　ビッグスライムを従魔にできるのなら、そこそこの魔獣までなら十分狩れる。
　スライムしか従魔にできなくても薬草採取ができる。
　手紙の代わりに伝言を届ける事もできるからな」

　俺はキングスライムの能力の一部をマスターに教えた。
　軍事機密になる部分もあるので、全部を話すわけにはいかないが、冒険者登録をしてクランリーダーになるのなら、最低限の情報開示は必要だ。

　そこまでしているのに、俺のクラン設立を認めないようなら、新たにスライム従魔士ギルドを設立するだけだ。

　冒険者ギルドのクランにするのは、スライム従魔士の情報を得たいのと、スライム従魔士に安心感を与えたいからだけだ。

「分かりました、早速手続きさせていただきます。
　邪魔をしたりしたら、スライム従魔士ギルドか従魔士ギルドを設立されて、冒険者ギルドが大打撃を受けてしまうのが簡単に予測できますからな」

　マスターは馬鹿ではない、いや、結構有能だな。
　これなら変な邪魔やサボタージュをする事はないだろう。

　俺を怒らすという事は、カチュア王太女殿下を怒らすのと同じだ。
　マスターも追放された大使や有力貴族の事は聞いているだろうからな。

「そうだね、冒険者ギルドが受け入れてくれないのなら、その心算だったよ。
　もし俺の願いを無碍にしていたら、王家直轄領では冒険者ギルドの存在を認めないようになったかもしれないね。
　従魔士の下に戦士や魔術士が置かれるようになった可能性もあるね」

「はっはっはっ、それでは大量の優秀な冒険者が他国に流出してしまいます。
　王家がそのような愚行を行われるとは思えませんが」

「私が近隣諸国に冒険者の受け入れを禁止して欲しいとお願いしたらどうだろうね。
　それを断れば、開戦の理由にできるじゃないかな」

　俺の脅しにマスターは顔を引きつらせて真っ青になっている。
　俺にそんな気持ちはないが、必要ならどんな非情な事も断行する覚悟はある。

　今までスライム従魔士が他の冒険者から受けてきた仕打ちを想えば、この程度の脅迫など軽いものだ。