カフェ料理で野獣国王を魅了してしまいました。

克全

文字の大きさ
5 / 6

4話

しおりを挟む
 決意を邪魔されたようで、巨体男は少しだけ苛立った。
 だがその苛立ちは、最初の頃とは比べものにならないくらい小さかった。
 娘の絶品料理を食べた事で、娘を一人前の料理人と認める気持ちになっていた。
 その巨体男の眼に、自分用の鯉を料理しながら、次の注文にこたえる娘の調理姿が映っていたのだが、なんと娘は下町の食堂料理に魔法を使っていたのだ。
 
 クリーンは食材を清潔にする魔法だ。
 アンチドーテは食材の毒を消す魔法だ。
 だがステリリゼイションという魔法が分からない。
 巨体男が初めて聞く魔法だった。

「おい、娘。
 そのステリリゼイションという魔法はなんだ?
 初めて聞くぞ!」

「ああ、これですか。
 これは神様から賜った、私個人のギフトなんですよ。
 料理を作るときに、生で食べても病気にならないようにするギフトなんです」

「なんだと?!
 そんなギフトがあるなんて聞いたことないぞ。
 いつだ? 
 いつからそのようなギフトが使えるようになった?!」

「それは死にかけてからです。
 高熱に冒され死にかけたことがあるんですよ。
 その時から使えるようになったんです。
 人間一度死にかけたら、怖いモノなんてなくなります。
 誰の目も気にせず、幼い頃からの夢、カフェを開く気になったんです」

「看板に書いてあった謎の言葉だな。
 なんだそのカフェと言うのは?
 料理屋や食堂とは違うのか?
 生の食べ物を食べさせるところ言いう意味か?」

「そうですね、珈琲を飲ませるお洒落な店という意味ですかね。
 カウンター席とテーブル席にテラス席があって、地元の常連さんと店員が気安くおしゃべり出来て、バーや居酒屋と違って朝からでも来たくなる店ですかね」

「なんだ、その珈琲と言うのは?
 そんなに大切なモノがあるのなら、最初に出せ。
 試しに飲んでやる」

「それが、残念なんですが、この国にはないんですよ。
 たぶん別の大陸にしかないんだと思うんです」

「おかしなことを言う。
 その言い方だと、お前は別の大陸から渡って来た人間でもなさそうだ。
 そんなお前が、別の大陸にある珈琲というものをなぜ知っている?
 話の辻褄があわないではないか!
 正直に話さんとタダではおかんぞ!」

「別におかしな話ではないんですよ。
 高熱に冒されて死にかけた時に、神様からギフトと知識を頂いたんですよ。
 そうでなければ、このような料理が作れるわけないじゃないですか。
 川魚を生で美味しく食べられるようにするんですよ。
 特別でなくては無理ですよ」

 娘は嘘をついていた。
 神様からギフトを頂いたのかどうか、娘自身にも分からない事だった。
 だが別の世界から転生したというよりは、面倒が少ないと考えて、この世界で信じてもらえそうな嘘を創ったのだ。
 そしてその嘘を巨体男は信じてしまった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結】

星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。 だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。 しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。 王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。 そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。 地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。 ⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。

無能な悪役令嬢は静かに暮らしたいだけなのに、超有能な側近たちの勘違いで救国の聖女になってしまいました

黒崎隼人
ファンタジー
乙女ゲームの悪役令嬢イザベラに転生した私の夢は、破滅フラグを回避して「悠々自適なニート生活」を送ること!そのために王太子との婚約を破棄しようとしただけなのに…「疲れたわ」と呟けば政敵が消え、「甘いものが食べたい」と言えば新商品が国を潤し、「虫が嫌」と漏らせば魔物の巣が消滅!? 私は何もしていないのに、超有能な側近たちの暴走(という名の忠誠心)が止まらない!やめて!私は聖女でも策略家でもない、ただの無能な怠け者なのよ!本人の意思とは裏腹に、勘違いで国を救ってしまう悪役令嬢の、全力で何もしない救国ファンタジー、ここに開幕!

王国最強の天才魔導士は、追放された悪役令嬢の息子でした

由香
ファンタジー
追放された悪役令嬢が選んだのは復讐ではなく、母として息子を守ること。 無自覚天才に育った息子は、魔法を遊び感覚で扱い、王国を震撼させてしまう。 再び招かれたのは、かつて母を追放した国。 礼儀正しく圧倒する息子と、静かに完全勝利する母。 これは、親子が選ぶ“最も美しいざまぁ”。

余命僅かな大富豪を看取って、円満に未亡人になるはずでした

ぜんだ 夕里
恋愛
傾きかけた家を救うため、私が結んだのはあまりにも不謹慎な契約――余命いくばくもない大富豪の辺境伯様と結婚し、彼の最期を穏やかに看取ることで莫大な遺産を相続する、というものだった。 しかし、人の死を利用して富を得るなど不正義! そう考えた私が立てたのは、前代未聞の計画。 「そうだ、遺産が残らないくらい贅沢の限りを尽くしてもらえば、すべて丸く収まるじゃない!」

なりゆきで妻になった割に大事にされている……と思ったら溺愛されてた

たぬきち25番
恋愛
男爵家の三女イリスに転生した七海は、貴族の夜会で相手を見つけることができずに女官になった。 女官として認められ、夜会を仕切る部署に配属された。 そして今回、既婚者しか入れない夜会の責任者を任せられた。 夜会当日、伯爵家のリカルドがどうしても公爵に会う必要があるので夜会会場に入れてほしいと懇願された。 だが、会場に入るためには結婚をしている必要があり……? ※本当に申し訳ないです、感想の返信できないかもしれません…… ※他サイト様にも掲載始めました!

【完結】『推しの騎士団長様が婚約破棄されたそうなので、私が拾ってみた。』

ぽんぽこ@3/28新作発売!!
恋愛
【完結まで執筆済み】筋肉が語る男、冷徹と噂される騎士団長レオン・バルクハルト。 ――そんな彼が、ある日突然、婚約破棄されたという噂が城下に広まった。 「……えっ、それってめっちゃ美味しい展開じゃない!?」 破天荒で豪快な令嬢、ミレイア・グランシェリは思った。 重度の“筋肉フェチ”で料理上手、○○なのに自由すぎる彼女が取った行動は──まさかの自ら押しかけ!? 騎士団で巻き起こる爆笑と騒動、そして、不器用なふたりの距離は少しずつ近づいていく。 これは、筋肉を愛し、胃袋を掴み、心まで溶かす姉御ヒロインが、 推しの騎士団長を全力で幸せにするまでの、ときめきと笑いと“ざまぁ”の物語。

大根令嬢の雑学無双、王弟殿下を添えて。~ 前世を思い出したので、許婚をほったらかして人助けしまくります!!

古森真朝
恋愛
気弱な伯爵令嬢のカレンは、自分勝手な婚約者レナートに振り回されていた。耐え続けていたある日、舞踏会で何者かに突き飛ばされ、階段から落ちてしまう。 その傷が元で儚く……なるかと思いきや。衝撃で前世を思い出したカレンは一転、かの『ド根性大根』みたいな超・ポジティブ人間になっていた。 『モラハラ婚約者の思惑なんぞ知るか!! 今度こそ好きなことやって、目いっぱい幸せに長生きするんだから!!!』 昔ひたすら読書に耽って身に着けた『雑学』を武器に、うっかり採れ過ぎた作物や、開墾しようとすると不幸に見舞われる土地、不治の病にかかった王族、等々の問題をどんどん解決。 領地の内外で心強い友人が出来たり、いつの間にかものすごく有名になっていたり、何かと協力してくれる王弟ヴィクトルから好意を寄せられたり(注:気付いてない)する中、温かい家族と共に仕事に励んでいく。 一方、前世から因縁のある人々もまた、こちらに転生していて――

処理中です...