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5話
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男は娘の料理の虜になっていた。
もはや娘の料理なしには生きていけないとまで思っていた。
特に揚げ鯉の餡かけには最大の衝撃を受けた。
本来の男なら、娘の事情など考えずに、無理矢理攫って料理人にしただろうが、死にかけて夢をかなえる覚悟だと聞いて、必死で思いとどまっていた。
男はこの国の若き王だった。
だが、幼い頃から何度も毒殺されかけた巨体男には、娘の気持ちが分かった。
だから無理矢理攫うことができなくなってしまった。
毎日来る事はできないが、この店に来たら食べられるのだと、自分の欲望を抑えようとしたのだが、それを一変させる事を娘自身がやらかした。
「お客さん呪いと毒で身体が傷められていますね。
小金貨一枚は少々頂きすぎなので、サービスで治療させてもらいましょうか?」
「なんだと?!
俺はこれでも力を持っているんだぞ。
専属の医師も魔術師もいるんだ。
そんなことはありえん!」
「う~ん。
特殊な呪いと毒ですし、その医師と魔術師が、敵に懐柔されている可能性はありませんか?」
「……全くないとは言えん」
「どうされますか?
私はどちらでもいですよ」
「では、やってみてくれ」
「ステリリゼイション。
クリーン。
アンチドーテ。
パーフェクトヒール」
魔法を使い終わってみれば、あれほど醜かった巨体男が、信じられないほどの美丈夫に変身していた。
剛毛も痘痕も皮膚も三白眼の藪睨みも、全て呪いと毒の影響だった。
本来なら即死するようなモノを、巨体男の体力と回復力が、命に関係のないところに集めて、巨体男の命を護ったのだ。
「あら、あら、あら。
随分と男前だったんですね。
これほどのイケメンだと、若い女性にモテモテですよ。
はい、これを見てください」
娘は自分用の手鏡を巨体男、いや、美丈夫に渡して姿を確認させた。
男は大きく変わった自分の姿を見て固まっていた。
黙っていた男の眼から、ポロポロと涙がこぼれ落ちた。
男が生まれて初めて人前で流す涙だった。
男は衝動的に娘を抱き抱えて店を出た。
娘が大声で助けを呼ぼうと叩こうと関係なかった。
娘を手に入れる。
それ以外何も考えられなかった。
美丈夫は隠れて待っていた従者から馬の手綱を受け取ると、そのまま王城に行き、何があろうと娘が逃げられないようにした。
「頼みます。
この通りです。
なんでも言う事を聞きます。
望みは全て叶えます。
他の大陸にあるという珈琲を探し出します。
王城内にカフェを作って店を出してもらいます。
だから、どうか、どうか、どうか、私の正室になってください」
「私は平民の娘ですよ。
それでも正室にするというのですか?
私を護ってくれるというのですか?」
娘は嘘をついていた。
娘は平民などではなかった。
ずっと領地に引きこもっていたので王も会った事はなかったが、サヴィル公爵令嬢ソフィアだったのだ。
「護ります。
四六時中側にいます。
カフェの時間も側にいます。
だからお願いします。
側にいてください」
一国の国王が床に頭を擦り付けんばかりに請い願うのだ。
ソフィアも公爵令嬢だから、必ず政略結婚させられる。
いままでは病弱を理由に回避できていたが、もうそうはいかない。
そう考えれば、国王と結婚するのは悪くない。
完全に尻に敷ける状況で王妃になれるのなら最高だ。
「分かりました。
求婚をお受けさせていただきます」
もはや娘の料理なしには生きていけないとまで思っていた。
特に揚げ鯉の餡かけには最大の衝撃を受けた。
本来の男なら、娘の事情など考えずに、無理矢理攫って料理人にしただろうが、死にかけて夢をかなえる覚悟だと聞いて、必死で思いとどまっていた。
男はこの国の若き王だった。
だが、幼い頃から何度も毒殺されかけた巨体男には、娘の気持ちが分かった。
だから無理矢理攫うことができなくなってしまった。
毎日来る事はできないが、この店に来たら食べられるのだと、自分の欲望を抑えようとしたのだが、それを一変させる事を娘自身がやらかした。
「お客さん呪いと毒で身体が傷められていますね。
小金貨一枚は少々頂きすぎなので、サービスで治療させてもらいましょうか?」
「なんだと?!
俺はこれでも力を持っているんだぞ。
専属の医師も魔術師もいるんだ。
そんなことはありえん!」
「う~ん。
特殊な呪いと毒ですし、その医師と魔術師が、敵に懐柔されている可能性はありませんか?」
「……全くないとは言えん」
「どうされますか?
私はどちらでもいですよ」
「では、やってみてくれ」
「ステリリゼイション。
クリーン。
アンチドーテ。
パーフェクトヒール」
魔法を使い終わってみれば、あれほど醜かった巨体男が、信じられないほどの美丈夫に変身していた。
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本来なら即死するようなモノを、巨体男の体力と回復力が、命に関係のないところに集めて、巨体男の命を護ったのだ。
「あら、あら、あら。
随分と男前だったんですね。
これほどのイケメンだと、若い女性にモテモテですよ。
はい、これを見てください」
娘は自分用の手鏡を巨体男、いや、美丈夫に渡して姿を確認させた。
男は大きく変わった自分の姿を見て固まっていた。
黙っていた男の眼から、ポロポロと涙がこぼれ落ちた。
男が生まれて初めて人前で流す涙だった。
男は衝動的に娘を抱き抱えて店を出た。
娘が大声で助けを呼ぼうと叩こうと関係なかった。
娘を手に入れる。
それ以外何も考えられなかった。
美丈夫は隠れて待っていた従者から馬の手綱を受け取ると、そのまま王城に行き、何があろうと娘が逃げられないようにした。
「頼みます。
この通りです。
なんでも言う事を聞きます。
望みは全て叶えます。
他の大陸にあるという珈琲を探し出します。
王城内にカフェを作って店を出してもらいます。
だから、どうか、どうか、どうか、私の正室になってください」
「私は平民の娘ですよ。
それでも正室にするというのですか?
私を護ってくれるというのですか?」
娘は嘘をついていた。
娘は平民などではなかった。
ずっと領地に引きこもっていたので王も会った事はなかったが、サヴィル公爵令嬢ソフィアだったのだ。
「護ります。
四六時中側にいます。
カフェの時間も側にいます。
だからお願いします。
側にいてください」
一国の国王が床に頭を擦り付けんばかりに請い願うのだ。
ソフィアも公爵令嬢だから、必ず政略結婚させられる。
いままでは病弱を理由に回避できていたが、もうそうはいかない。
そう考えれば、国王と結婚するのは悪くない。
完全に尻に敷ける状況で王妃になれるのなら最高だ。
「分かりました。
求婚をお受けさせていただきます」
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