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第一章
2話
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アベルはいつも傷だらけだった。
愚かな王太子は、公爵家の嫡男であるアベルにまで手をあげた。
普通なら絶対にありえない事だ。
公爵家の公子を傷つけたら、王太子であろうと処罰される。
だが王太子には悪知恵だけはあった。
権力欲の強いアントリム公爵が、娘と婚約が成立した自分を処罰しないと言う事を、十分理解していた。
だから逆らえないアベルに暴力を振るった。
学園から帰る兄が、毎日新しい傷を受けているのを見たマリアは、ロアンの事を嫌悪を越えて憎悪した。
そして神や精霊に兄の無事とケガの治癒を祈った。
いつしかその祈りが通じ、マリアが祈るとアベルの傷が癒えるようになった。
それを知ったアベルは、マリアに治癒の奇跡を使わないように言い聞かせた。
マリアが治癒の奇跡が使えることを、父のアントリム公爵が知れば、マリアを政治の道具として使う事が分かっていたからだ。
アベルは、これ以上マリアが父に利用されるのを防ぎたかったのだ。
そしてアベルも神や精霊に祈っていた。
父の子供でもないマリアが、父に利用され不幸になるのを見過ごせなかったのだ。
アベルは祈るだけではなく、自分でも努力していた。
公爵家の後継者として帝王学を学ぶだけでなく、実戦的な剣術や薬学まで学んだ。
マリアと前後して、アベルも奇跡の力を手に入れた。
他人を癒せるような、聖女や聖者の力ではなかったが、自分を癒せる聖なる力を手に入れ、聖騎士に認定された。
父のアントリム公爵は小躍りして喜んだ。
アベルが聖騎士に認定された事で、アントリム公爵家の名声は鰻登りだった。
王家の愚かな王太子に比べて、誰が指導者に相応しいか一目瞭然だった。
ここでアントリム公爵に迷いが出た。
このまま愚かな王太子を支援して娘を嫁がせ、外戚として権力を振るうか、アベルを担いで国王に就け、国父の地位を目指すか。
慎重なアントリム公爵は、できる限り両方の可能性を残す事にした。
息子のアベルには、聖騎士としての名声を高めさせることにして、王太子との関係も早く確定させようとした。
何故ならいくら愚かな王太子と言っても、アベルの名声が上がれば危機感を持つ可能性があるからだ。
王太子には最後まで、アントリム公爵家が宰相として実権を握り続けたいと思っていると、そう思わせたかったのだ。
その為には、王太子とマリアに既成事実を作らせたかった。
いつものように、王太子にマリアを傷者にさせようとしていた。
だがマリアは、どうしても王太子と契る気になれず、自分なりに身を守る策を取ったのだった。
愚かな王太子は、公爵家の嫡男であるアベルにまで手をあげた。
普通なら絶対にありえない事だ。
公爵家の公子を傷つけたら、王太子であろうと処罰される。
だが王太子には悪知恵だけはあった。
権力欲の強いアントリム公爵が、娘と婚約が成立した自分を処罰しないと言う事を、十分理解していた。
だから逆らえないアベルに暴力を振るった。
学園から帰る兄が、毎日新しい傷を受けているのを見たマリアは、ロアンの事を嫌悪を越えて憎悪した。
そして神や精霊に兄の無事とケガの治癒を祈った。
いつしかその祈りが通じ、マリアが祈るとアベルの傷が癒えるようになった。
それを知ったアベルは、マリアに治癒の奇跡を使わないように言い聞かせた。
マリアが治癒の奇跡が使えることを、父のアントリム公爵が知れば、マリアを政治の道具として使う事が分かっていたからだ。
アベルは、これ以上マリアが父に利用されるのを防ぎたかったのだ。
そしてアベルも神や精霊に祈っていた。
父の子供でもないマリアが、父に利用され不幸になるのを見過ごせなかったのだ。
アベルは祈るだけではなく、自分でも努力していた。
公爵家の後継者として帝王学を学ぶだけでなく、実戦的な剣術や薬学まで学んだ。
マリアと前後して、アベルも奇跡の力を手に入れた。
他人を癒せるような、聖女や聖者の力ではなかったが、自分を癒せる聖なる力を手に入れ、聖騎士に認定された。
父のアントリム公爵は小躍りして喜んだ。
アベルが聖騎士に認定された事で、アントリム公爵家の名声は鰻登りだった。
王家の愚かな王太子に比べて、誰が指導者に相応しいか一目瞭然だった。
ここでアントリム公爵に迷いが出た。
このまま愚かな王太子を支援して娘を嫁がせ、外戚として権力を振るうか、アベルを担いで国王に就け、国父の地位を目指すか。
慎重なアントリム公爵は、できる限り両方の可能性を残す事にした。
息子のアベルには、聖騎士としての名声を高めさせることにして、王太子との関係も早く確定させようとした。
何故ならいくら愚かな王太子と言っても、アベルの名声が上がれば危機感を持つ可能性があるからだ。
王太子には最後まで、アントリム公爵家が宰相として実権を握り続けたいと思っていると、そう思わせたかったのだ。
その為には、王太子とマリアに既成事実を作らせたかった。
いつものように、王太子にマリアを傷者にさせようとしていた。
だがマリアは、どうしても王太子と契る気になれず、自分なりに身を守る策を取ったのだった。
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