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1話

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「カミーユ、申し訳ないのだけれど、私が自由にできるお金を使わせてくれない?」

「アジュナのお金だから構わないが、この先大丈夫ですか?
 修道院に持っていけるお金は限られているのでしょ?
 今使い切ってしまったら修道院での生活に困るのではないですか?」

「そうね、向こうで生活するのなら必要になりますね。
 でもその心配は必要ないと思うのよ。
 カミーユは誰よりも分かっているわよね。
 ただ、それがカミーユの余得になる約束なら申し訳ないので聞いているの」

 気がついていたようだね。
 私がアジュナを暗殺する役目を与えられてることを。
 本当に反吐がでる役目だ!
 こんな汚い仕事は自由戦士の役目じゃない。
 本来なら自国の騎士や刺客にやらせるべき役目だ。
 だがそれをやらせられない裏があるのだろう。

 だったら、汚い事でも平気でやる傭兵や冒険者にやらせればいいのだ!
 それを誇り高い自由戦士にやらせようとする、クロフォード王国の連中の遣り口に反吐がでる。
 こんな汚れ仕事は、普通の自由戦士ならその場で断っている。
 百人いれば九十九人までことわっているだろう。

 まあ、その例外が私だ。
 自由戦士ギルドの理想とは違う、だけど自由戦士ギルドを維持するにはどうしても無視できない、王家や有力貴族からの依頼をこなす汚れ役。
 ギリギリ黒とは断言できないグレーな仕事をこなす汚れ役。
 事が露見した場合は、自由戦士ギルドの理念に違反した腐れ外道として、自由戦士ギルドの放った刺客に殺される役目。

 使い捨ての駒だ!
 不可触民出身の私が自由戦士ギルドに入れた代償。
 いや、汚れ役を引き受けると約束したからこそ、自由戦士ギルドに入れたのだ。
 世間では高潔な戦士だけが入れる噂される自由戦士ギルドといえど、裏に回れば絶対に公表できない汚いところがあるモノさ。
 だが、そんな私にだってちっぽけな誇りくらいはあるんだ!

「そんなお金は期待していませんよ。
 護衛役の礼金は以外は受け取りませんよ」

「ありがとう、カミーユ。
 貴女ならそう言ってくれると思っていたわ」

「おじさん、その串焼きを全部頂きたいの。
 おいくらになるかしら?」

「これはこれはありがとうございます。
 令嬢様の施しでございますか?」

「もう令嬢ではないのだけれど、見過ごしにはできないわ。
 一緒に配って欲しいのだけれど、手伝ってくださる?」

「喜んで手伝わせていただきますが、不可触民の子供も路地から覗いております。
 彼らはどうなされますか?」

「おじさんが嫌なら私が渡しますから、不可触民の分も焼いてくださる?
 ただ貴族ではなくなってしまったので、手持ちのお金が少ないの。
 全部でいくらくらいになるかしら?」

 糞ったれが!
 これを黙ってみてられるか!
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