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第1章
第30話:隠棲王族
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「克也様、この森の奥に正統な王が住んでいます」
いつも側にいて僕を守ってくれている白くて大きな犬のイワナガヒメがいう。
僕がお供だと信じられるように、もも太郎に合わせて犬になってくれていた。
その気になれば人の姿にもなれるというけど、このままが良いとお願いした。
「僕が元の世界に戻る時に、その王様が必要なの?」
「様付けしないでください、王の方が克也様よりも下です」
「王には様をつけると思っていた」
「それは、自分が王よりも下だと思っているからです。
克也様は王よりも上だから様はつけないでください」
「う~ん、何か言い難いんだけど、本当に様をつけちゃダメ?」
「ダメです、上下のけじめは大切です」
「絶対に言い間違うよ」
「では何も話さないでください、全部私が話します」
「それが良いよ、そうしてくれると言い間違わないよ」
「ではシュテファニーにも話しかけないでください。
ここに住む王や王子、王女の方がシュテファニーよりも格上です。
王に直答を許さないのに、シュテファニーに直答を許してはいけません」
「……女の子は大切にしてあげたいんだけれど……そうしないといけないの?
前に言っていた、唯一神を信じて僕を殺そうとしている話、本当なの?」
「本当でございます、神の力が欲しくて、克也様を殺すと誓いました」
「……そうか、そうなんだ……悪神に僕を殺すと約束したんだ……
分かったよ、イワナガヒメの言う通りにする。
王様だけでなく、シュテファニーとも話さないようにする。
その代わり優しくしてあげて、殺さないであげて、お願い」
「克也様がそこまで言われるなら、襲ってこない限りは殺さないようにします」
イワナガヒメが約束してくれたので、安心できた。
イワナガヒメは僕との約束は破らない、だからシュテファニーは殺されない。
僕を襲わない限り殺されない……襲われないようにしないと!
僕たちは古戦場から続く深い森に入った。
魔境と呼ばれるくらい魔力が濃くて、強い魔獣がたくさんいる森だ。
氏神様たちでも勝てない強い竜がいるというから、気をつけないと!
★★★★★★
「我らはこの国の神と王族に無理矢理召喚された勇者王一行である。
非道外道な王と王族を捕らえ、新たな国を興した。
だが、その国を、子々孫々治める気はない。
勇者王陛下は、憎い悪神を討たれたら元の世界に戻られる。
その時に民が困らないように、次の王を選んでから元の世界に戻られる。
悪しき神と悪しき王族に国を奪われた、善なる王の子孫よ。
新たな王に選ばれたければ名乗り出よ!」
お供の家臣たち、神使たちが魔境の村に向かって言う。
シュテファニーたち悪い王族に国を奪われた、正統な王族だそうだ。
僕には何が正統か分からないけれど、イワナガヒメが言うのなら正しい。
神使いたちは動物の姿をしている。
だけどそれでは人間が怖がるので、人に近い姿になる事がある。
ついさっき教えてもらったばかりだけど、その通りだった。
タコ、サメ、コイ、カニ、キツネ、サル、ウシ、シカ、ヘビ、リュウ、イヌ、ムカデ、カイコ、イノシシ、カラス、キジなどの神使たちが人になった。
ただ、顔もスタイルも元の動物に似ていて笑ってしまった。
笑っちゃいけないと思ったのだけど、ガマンできずに吹き出した。
それくらい、おもしろく元の動物に似ていた。
そんな神使人間の1人が、正統な王がいるという村に大声で話しかけている。
村が魔獣に襲われないように造った、木の城門に向かって話しかけている。
城門の上にいる人たちが不安そうにしている。
「怖がっているよね、僕たちそんなに怖いの?」
「克也様が怖いのではなく、自分たちを狙う悪神と悪い王族が怖いのです。
ここに逃げて来るまでに、多くの家族と家臣を殺されているのです。
ようやく逃げ切ったと思っていたのに、見つかったので怖がっているのです」
「そっとしておいてあげた方が良いのではないの?
怖がるなら、このままここで暮らす方が良いんじゃないの?」
「克也様が、シュテファニーたちのような悪い王族や貴族を皆殺しにされるのなら、ここは安全ですが、シュテファニーたちを皆殺しにするのは嫌なのですよね?」
「嫌だよ、絶対に嫌だよ」
「そうなると、以前も申し上げましたが、この国は王位を巡っての戦いになります。
この国の人たちだけでなく、周りの国の人たちも王位を巡って戦います。
そうなったら、ここに住む正統な王も王族も戦いに巻き込まれてしまいます。
私たちの提案を受けいれるか受け入れないかは別にして、今起こっている事を教えてやらないと、いきなり襲われて皆殺しにされる事もあるのです」
「そうなの、だったらしかたがないね」
「勇者王陛下の使者を名乗る方におたずねさせていただく。
偽王と王族を捕らえたと申されているが、処刑はされないのか?」
「勇者王陛下は仁徳の君であり、人を殺すのを嫌っておられる。
罪のない幼い王族には、王城内での自由を許されておられる。
罪の有る王と王族は、身分を奪って地下牢に捕らえている。
信じられないのなら、一族や家臣を派遣して確かめさせよ」
「今直ぐあいさつしろと命令されないのか?」
「勇者王陛下は好意で王位を譲る提案をされているだけだ。
受ける気のない者のために時間を取られる必要を、我ら家臣は認めていない。
貴君らがこのままここにいたいというのなら、他の者を選ぶだけだ」
いつも側にいて僕を守ってくれている白くて大きな犬のイワナガヒメがいう。
僕がお供だと信じられるように、もも太郎に合わせて犬になってくれていた。
その気になれば人の姿にもなれるというけど、このままが良いとお願いした。
「僕が元の世界に戻る時に、その王様が必要なの?」
「様付けしないでください、王の方が克也様よりも下です」
「王には様をつけると思っていた」
「それは、自分が王よりも下だと思っているからです。
克也様は王よりも上だから様はつけないでください」
「う~ん、何か言い難いんだけど、本当に様をつけちゃダメ?」
「ダメです、上下のけじめは大切です」
「絶対に言い間違うよ」
「では何も話さないでください、全部私が話します」
「それが良いよ、そうしてくれると言い間違わないよ」
「ではシュテファニーにも話しかけないでください。
ここに住む王や王子、王女の方がシュテファニーよりも格上です。
王に直答を許さないのに、シュテファニーに直答を許してはいけません」
「……女の子は大切にしてあげたいんだけれど……そうしないといけないの?
前に言っていた、唯一神を信じて僕を殺そうとしている話、本当なの?」
「本当でございます、神の力が欲しくて、克也様を殺すと誓いました」
「……そうか、そうなんだ……悪神に僕を殺すと約束したんだ……
分かったよ、イワナガヒメの言う通りにする。
王様だけでなく、シュテファニーとも話さないようにする。
その代わり優しくしてあげて、殺さないであげて、お願い」
「克也様がそこまで言われるなら、襲ってこない限りは殺さないようにします」
イワナガヒメが約束してくれたので、安心できた。
イワナガヒメは僕との約束は破らない、だからシュテファニーは殺されない。
僕を襲わない限り殺されない……襲われないようにしないと!
僕たちは古戦場から続く深い森に入った。
魔境と呼ばれるくらい魔力が濃くて、強い魔獣がたくさんいる森だ。
氏神様たちでも勝てない強い竜がいるというから、気をつけないと!
★★★★★★
「我らはこの国の神と王族に無理矢理召喚された勇者王一行である。
非道外道な王と王族を捕らえ、新たな国を興した。
だが、その国を、子々孫々治める気はない。
勇者王陛下は、憎い悪神を討たれたら元の世界に戻られる。
その時に民が困らないように、次の王を選んでから元の世界に戻られる。
悪しき神と悪しき王族に国を奪われた、善なる王の子孫よ。
新たな王に選ばれたければ名乗り出よ!」
お供の家臣たち、神使たちが魔境の村に向かって言う。
シュテファニーたち悪い王族に国を奪われた、正統な王族だそうだ。
僕には何が正統か分からないけれど、イワナガヒメが言うのなら正しい。
神使いたちは動物の姿をしている。
だけどそれでは人間が怖がるので、人に近い姿になる事がある。
ついさっき教えてもらったばかりだけど、その通りだった。
タコ、サメ、コイ、カニ、キツネ、サル、ウシ、シカ、ヘビ、リュウ、イヌ、ムカデ、カイコ、イノシシ、カラス、キジなどの神使たちが人になった。
ただ、顔もスタイルも元の動物に似ていて笑ってしまった。
笑っちゃいけないと思ったのだけど、ガマンできずに吹き出した。
それくらい、おもしろく元の動物に似ていた。
そんな神使人間の1人が、正統な王がいるという村に大声で話しかけている。
村が魔獣に襲われないように造った、木の城門に向かって話しかけている。
城門の上にいる人たちが不安そうにしている。
「怖がっているよね、僕たちそんなに怖いの?」
「克也様が怖いのではなく、自分たちを狙う悪神と悪い王族が怖いのです。
ここに逃げて来るまでに、多くの家族と家臣を殺されているのです。
ようやく逃げ切ったと思っていたのに、見つかったので怖がっているのです」
「そっとしておいてあげた方が良いのではないの?
怖がるなら、このままここで暮らす方が良いんじゃないの?」
「克也様が、シュテファニーたちのような悪い王族や貴族を皆殺しにされるのなら、ここは安全ですが、シュテファニーたちを皆殺しにするのは嫌なのですよね?」
「嫌だよ、絶対に嫌だよ」
「そうなると、以前も申し上げましたが、この国は王位を巡っての戦いになります。
この国の人たちだけでなく、周りの国の人たちも王位を巡って戦います。
そうなったら、ここに住む正統な王も王族も戦いに巻き込まれてしまいます。
私たちの提案を受けいれるか受け入れないかは別にして、今起こっている事を教えてやらないと、いきなり襲われて皆殺しにされる事もあるのです」
「そうなの、だったらしかたがないね」
「勇者王陛下の使者を名乗る方におたずねさせていただく。
偽王と王族を捕らえたと申されているが、処刑はされないのか?」
「勇者王陛下は仁徳の君であり、人を殺すのを嫌っておられる。
罪のない幼い王族には、王城内での自由を許されておられる。
罪の有る王と王族は、身分を奪って地下牢に捕らえている。
信じられないのなら、一族や家臣を派遣して確かめさせよ」
「今直ぐあいさつしろと命令されないのか?」
「勇者王陛下は好意で王位を譲る提案をされているだけだ。
受ける気のない者のために時間を取られる必要を、我ら家臣は認めていない。
貴君らがこのままここにいたいというのなら、他の者を選ぶだけだ」
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