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1話

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 神様は罰のつもりだったのかもしれません。
 仕事も辞め、実家に戻って引きこもり、時間も忘れて乙女ゲームにのめり込んでいた私に、悔い改めるように伝えたかったのかもしれません。

 ですが、私のとってはご褒美以外の何物でもありません。
 あれだけ夢中になった乙女ゲームの世界に入れたのですから。
 毎日毎日倒れるように寝落ちするまでのめり込んだ乙女ゲームです。
 心筋梗塞であろう、激烈な心臓の痛みと共に意識を失い、気がついたら若く美しい令嬢に生まれ変われたのです。
 これほどの幸せはありません!

「ソフィア、早くいかないと授業に遅れるわよ」

「あ、待って、ララァ。
 そんなに急いだら転んでしまうわよ」

「何言っているの。
 私はそんなドジじゃないわよ」

 駄目です、ソフィア。
 これは不幸ヒロインであるソフィアを転落させるイベントなのです。
 ここで躓くわけにはいかないのです。
 私の『推しメン』であるソフィアを不幸にはさせません。
 何十何百時間をかけて、ソフィアを幸せにするシナリオを探し続けた私です。
 
(睡魔)

「おっと、大丈夫ですか?」

「無礼者!
 殿下の前をさえぎるとは何事か!」

 皇太子殿下の護衛が激高しています。
 基本学生しか入れない大陸連合魔法学院ですが、皇族と王族だけは別です。
 側仕えと護衛の二人だけは学院内に入れることができます。
 まあ、側仕えとはいっても、お世話もできる護衛です。
 各国の最強に近い戦士や魔法使いが選ばれています。

「ありがとうございます、クリスティアン皇太子殿下。
 護衛の方々にも迷惑とお世話をおかけしてしまいました。
 ソフィアは身体は弱いモノで、直ぐ倒れてしまうのです」

 私は慌てて近寄ります。
 あのまま走ってクリスティアン皇太子殿下にぶつかっていたら、護衛に斬り殺されてしまうところでした。
 なんとも無茶なシナリオですが「ヒロイン殺し」とまで言われたゲームです。
 時代背景も世界情勢も、ご都合主義で無茶苦茶の乙女ゲームです。

 人気があったのは絵柄の美しさとアイドル声優を総動員したからです。
 それとダブルヒロイン制を採用して、一人のヒロインは簡単に幸せにできるのに対して、もう一人のヒロインはどれだけやりこんでもなかなか幸せにできません。
 幸せにするシナリオなど最初から用意されていないと、ネットで叩かれるほど難しいのです。

 かく言う私も、寝食を忘れてのめり込み、ようやく幸せにするルートを見つけた時に、あまりの喜びに心筋梗塞を起こしてしまったほどです。
 まずはクリスティアン皇太子殿下から攻略しましょう。
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