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2話

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 いえ、やっぱりやめです!
 せっかく『推しメン』のララァと親友になれたのです!
 大陸連合魔法学院の寮でも同室で、一緒のベットで寝たり、一緒にお風呂に入って洗いっこできる親友になれたのです。
 男になど邪魔されてはたまりません。

 ゲームの流れでは、クリスティアン皇太子の護衛に斬り殺されずに済んだ場合は、皇太子の立場に苦悩するクリスティアンの悩みを聞き、心の闇に付け込もうとしていた悪役令嬢の正体を暴いて仲良くなるという、とても難しいシナリオです。
 単に悪役令嬢というだけではなく、悪役令嬢の心には魔族が宿っており、その魔族を斃さないといけないのです。

 斃すための下準備がまた大変で、学院内に隠された武器や防具を探し出し、聖なる魔法が使えるようになるために、学院内の教会に通って信心度と魅力度に戦闘力や魔力まで上げなければいけません。
 幾十もの隠しシナリオを達成しなければいけないのです。
 そんな時間を使う気にはなりません。
 そんな時間があるのなら、ララァとキャッキャウフウフの日々を送ります。

「ララァ殿。
 皇太子殿下がお呼びだ。
 来てもらおう」

 こんなシナリオは知らない。
 命と引き換えにしてまでやり込んだゲームです。
 私の知らない隠しシナリオなどないはずです。
 転生したことで新たに生まれたのでしょう。
 もしかしたら神様の罰かもしれません。
 ですが神様の思い通りにはさせません!

「待っていただきましょう!
 ララァの私もウンルオッホ皇国の家臣ではありません。
 クリスティアン皇太子殿下に命令される理由などありません。
 まして令嬢一人を部屋に呼びつけるなど、非常識もはなはだしいです!
 それでよく皇太子などと偉そうに言えますね?
 それとも貴男が皇太子の歓心を得ようと独断でやっているのですか?
 ならばそれは皇太子の名声を汚す不忠以外の何物でもありませんよ!」

「おのれ、おのれ、おのれ!
 皇太子殿下に対し奉り、敬称もつけぬとは、無礼千万!
 皇太子殿下に成り代わり成敗してくれる!」

「図星だったようですね!
 皇太子に令嬢を斡旋して歓心を得て、権力を手に入れようと考えたのですね!
 何と醜く汚らわしい!
 これがウンルオッホ皇国の常識であり忠誠ですか?」

「おのれ、おのれ、おのれ!
 もう絶対に許さん!
 死ね!」

 クリスティアン皇太子の護衛が、剣を抜き討って斬り殺そうとしました。
 居合と呼ばれる技でしょう。
 凄い腕前です。
 眼にも止まらぬ早業です。
 ですが場所が悪かったですね。

 最初から抜き討ちしてくると分かっていたのです。
 伊達に死ぬほどゲームしていたわけではありません。
 どの位置に立てば、剣の威力を減らせるかも、剣をかわせるかも、私のは分かっているのです!
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