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第5話幽閉2日目1
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「大変でございます!
一大事でございます!」
「何事だ、騒がしい!
ここは陛下の御座所だぞ!
少々の事で騒ぎ立てるなど、気品がなさすぎるぞ!」
「少々の事ではございません!
作物が、全ての作物が枯れ果ててしまいました!
今年の収穫は全くありません。
麦一粒も収穫できません!」
御座所は凍り付いた。
ジョージ国王はもちろん、同席していた全重臣が動けないでいた。
動けないどころか、ひと言も口を利けない状態だった。
だが女性の方が度胸があるのか、他国との婚約話でたまたまアリス王女がいた。
彼女が一番早く原因究明と対策が必要だと思いついた。
「どういうことなの?
何か原因はあるの?
対策はないの?!」
立て続けに質問されて、報告に来た農政官は答えに窮した。
彼も農地を直接預かる代官から報告を受けただけで、現場を見たわけではない。
迂闊に答えて責任を押し付けられてはたまらないと感じ、重大な報告とそれに伴う面倒ごとは、代官に押し付けることにした。
「申し訳ありません、アリス第一王女殿下。
私も現場の代官からの報告を、お伝えさせていただいているだけです。
確かな答えは代官からお聞きください」
アリス王女は農政官の姑息は考えを直ぐに見抜いた。
怒りを感じて叱責しようとしたが、直ぐに思いとどまった。
その程度の事で怒っていては、この国では生きてはいけない。
建国から百年を少し越えたこの国は、もう滅びの兆候を見せている。
だからこそ、少しでも早く他国に嫁ぎたいと、婚約交渉に自ら加わっていたのだ。
「分かりました、直ぐにその代官を呼んできなさい。
その代官を呼んできたら、直ぐに退室して他の代官も集めて、彼らに直轄地の報告をさせなさい。
貴族士族にも使者を送り、農地の状況を報告させなさい」
「御意」
農政官は逃げるように出て行った。
腐りきった官僚組織の中で生きてきた彼には、テキパキと的確な指示を出すアリス王女は怖い存在だった。
いや、それでも、この農政官は官僚組織の中ではマシな存在だった。
他の多くの官僚は、不都合な事実を隠蔽したり、できるだけ報告を遅らせたりする、腐りきった者達ばかりだった。
「父王陛下、この後の事は私に任せていただけませか?
ここで打つ手を間違えると、この国は滅んでしまいます」
聞かれた国王は返事に窮した。
アリス王女と農政官の会話の間に、凍り付いていた身体と心は元に戻っていた。
戻ってはいたが、なにをすればいいのかは、全く思いついていなかった。
多くの事を家臣任せにしていたジョージ国王には、判断力はなかった。
だがそんなジョージ国王に、アリス王女の射るような視線が向けられた。
一大事でございます!」
「何事だ、騒がしい!
ここは陛下の御座所だぞ!
少々の事で騒ぎ立てるなど、気品がなさすぎるぞ!」
「少々の事ではございません!
作物が、全ての作物が枯れ果ててしまいました!
今年の収穫は全くありません。
麦一粒も収穫できません!」
御座所は凍り付いた。
ジョージ国王はもちろん、同席していた全重臣が動けないでいた。
動けないどころか、ひと言も口を利けない状態だった。
だが女性の方が度胸があるのか、他国との婚約話でたまたまアリス王女がいた。
彼女が一番早く原因究明と対策が必要だと思いついた。
「どういうことなの?
何か原因はあるの?
対策はないの?!」
立て続けに質問されて、報告に来た農政官は答えに窮した。
彼も農地を直接預かる代官から報告を受けただけで、現場を見たわけではない。
迂闊に答えて責任を押し付けられてはたまらないと感じ、重大な報告とそれに伴う面倒ごとは、代官に押し付けることにした。
「申し訳ありません、アリス第一王女殿下。
私も現場の代官からの報告を、お伝えさせていただいているだけです。
確かな答えは代官からお聞きください」
アリス王女は農政官の姑息は考えを直ぐに見抜いた。
怒りを感じて叱責しようとしたが、直ぐに思いとどまった。
その程度の事で怒っていては、この国では生きてはいけない。
建国から百年を少し越えたこの国は、もう滅びの兆候を見せている。
だからこそ、少しでも早く他国に嫁ぎたいと、婚約交渉に自ら加わっていたのだ。
「分かりました、直ぐにその代官を呼んできなさい。
その代官を呼んできたら、直ぐに退室して他の代官も集めて、彼らに直轄地の報告をさせなさい。
貴族士族にも使者を送り、農地の状況を報告させなさい」
「御意」
農政官は逃げるように出て行った。
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「父王陛下、この後の事は私に任せていただけませか?
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戻ってはいたが、なにをすればいいのかは、全く思いついていなかった。
多くの事を家臣任せにしていたジョージ国王には、判断力はなかった。
だがそんなジョージ国王に、アリス王女の射るような視線が向けられた。
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